「ヒトラー 最後の12日間」
 映画「ヒトラー 最後の12日間」を見てきました。見応えのあるたいへん面白い映画でした。第三帝国崩壊の日々を、ヒトラー周辺と、ベルリンにおけるソ連軍との市街戦、この二つの動きを軸に見事に描ききっています。原作は、歴史家ヨアヒム・フェストの「ダウンフォール:ヒトラーの地下要塞における第三帝国最後の日々」と、トラウドゥル・ユンゲの「最後の時間まで:ヒトラー最後の秘書」です。具体的な事実については前者を、ヒトラーやその周囲の人物の言動については後者を、それぞれ参考にしているようです。リアリティは感じますね、少なくとも絵空事に思えるシーンはありません。二時間強、手に汗を握り何度も息を呑みながら、見てしまいました。ナチスによる犯罪についてふれていない、ヒトラーを人間的に扱いすぎている、等々といった批判はあるようですが、少なくともどこかの国の何とかという映画のように、ヒトラーとナチスを免罪・弁護しようとするものではありません。彼らを支持したことによって、ドイツの人々がどういう結果を甘受しなければならなかったのかを直視しようとする意志を感じます。ベルリン市民の犠牲を少なくすべきという部下の意見に対して、ヒトラーはこう言います。「戦時には市民などいない。」 絶対に忘れてはならない言葉ですね、これは。
 それにしてもヒトラーを演じたブルーノ・ガンツという俳優は迫真の演技でした、脱帽。ゲッベルスを演じた役者にいたってはもう生き写し。そしてシュペーアという軍需大臣が、ナチスにおけるキー・パーソンの一人だということをはじめて知りました。ヒトラーが信頼した芸術家・建築家にして、軍需生産を向上させた有能なテクノクラートなのですね。彼は敗戦後、戦犯としてニュルンベルグ裁判で禁固二十年の刑を宣告され、1966年に、刑期満了で出所します。比較したいのは、有能な官僚として戦争経済を構築した商工大臣岸信介です。強制連行も彼の立案ですね。彼は敗戦後、A級戦犯とされますが、1948年に不起訴釈放され、平和条約発効後公職追放が解除され、1953年の総選挙で自由党から衆議院議員に当選し、政界復帰を果たし、そしてご存知のように1957年に内閣総理大臣となります。シュペーアが出所する9年前ですね。言うべき言葉もなく、沈黙してしまいます。しっかりとこの歴史的事実を受け止めましょう。

 さて、となるとぜひつくってほしい映画が、そう、「大日本帝国 最後の12日間」です。天皇制の存続のみを条件に軍部を切り捨ててポツダム宣言を受諾しようとする昭和天皇とその側近、そうはさせじと本土決戦をちらつかせながら免責を条件に入れようとする軍部、原爆投下により屈服させ戦後日本を勢力範囲に入れようとあせるトルーマン、そうはさせじと中立条約をやぶり満州侵攻を図るスターリン… 手に汗握るドラマチックな映画になると思います。昭和天皇、鈴木貫太郎、平沼騏一郎、米内光政、阿南惟幾、東郷茂徳、豊田副武、梅津美治郎、そして木戸幸一を誰が演じるか考えるだけでも、ワクワクします。個人的なイメージでは、昭和天皇の役は佐野史郎にやってもらいたいのですが、いかが。そんな映画をつくれるような成熟した国に、みんなの力で早くしていきましょう。21世紀中には無理かな。
by sabasaba13 | 2005-09-01 06:06 | 映画 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 映画と出会う・世界が変わる at 2005-11-17 00:31
タイトル : 映画「ヒトラー 最期の12日間」■現代日本に通じるもの
昨日の日記では映画「ヒトラー 最期の12日間」に対して否定的な意見を述べた。KUMA0504さんのコメントにあるように私の意見は、この映画に対しては「ないものねだり」かも知れない。ヒトラーとその政権が人々にどのように浸透して、支持を得ていったのかについ......more
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