少女像4

 そして意外と言及されていないのが、「少女像」とは、誰が何のために制作したのかということです。全体像を見たことがない人もいるのでは。幸い、「神奈川新聞」(2015.1.28)にそれに関する記事が掲載されましたので、転記します。
 いすに腰掛けた等身大の少女像は静かに前を見据える。穏やかな表情は見る者を鋭く射すくめるようにも映る。2011年、韓国・ソウルの日本大使館前に建てられた「平和の碑(少女像)」。旧日本軍の従軍慰安婦を模したもので、日本では「反日の象徴」と反発する向きもある。「悲劇が再び起きないよう平和を願って作った」。韓国人彫刻家、キム・ウンソンさん(50)、キム・ソギョンさん(49)夫妻は込めた思いをやはり静かに語った。間近で見ると、はだしの少女はかかとをわずかに浮かせていることに気付く。膝の上の両の拳はぎゅっと握られ、左肩には黄色い小鳥が乗る。(中略) 一見しただけでは分からないが、かかとはすり切れているのだという。「大変だった人生を象徴している。遠くに連れて行かれ、故国に戻ってきても居場所がない人もいたから」 ソギョンさんが説明を始めた。
 切りそろえられていない髪の毛も、家族や故郷とのつながりを断ち切られてしまったことを表している。肩の小鳥は平和と自由の象徴。「平和を守る守護神として作った像なのだから」
 そしてソギョンさんが繰り返し口にするのが「共感」の2文字。像の隣に置かれたいすも作品の一部になっていて、「隣に座って慰安婦の心を想像してほしい」。少女と目線の高さを合わせ、動かぬ像のぬくもりを感じ、その時、心はどう動くのか。「元慰安婦は抱えた心の痛みを払拭できない人がたくさんいる。自分が慰安婦だったら、どう思い、何を感じるか。少女の気持ちになって考えるきっかけにしてほしい」
 日本大使館前の像は元慰安婦のハルモニ(おばあさん)を支援する韓国の市民団体が寄付金を集め、設置を企画した。毎週水曜日に大使館前で行っていたデモ活動の千回目を記念するものだった。市民団体は社会問題をテーマに彫刻作品を手掛けてきた夫妻に制作を依頼した。当初は字が刻まれた石碑を建てる計画だったが、夫妻は「元慰安婦を癒す彫刻を作りたい」と少女像を提案した。周囲の受け止めは思わぬものだった。「除幕式当日、日本のメディアの記者が大勢集まり、私たちの一挙手一投足にフラッシュがたかれた。日本政府は「外交公館の尊厳を損なう」として韓国政府に像設置を認めないよう要求。日本の一部保守系メディアでは像を「反日の象徴」とみなす論調が続く。
 学生時代から2人は韓国の民主化闘争に加わってきた。朝鮮半島の統一を願う作品や米軍の装甲車にひかれて亡くなった中学生を追悼する作品を手掛けてきた。「なぜ芸術に政治を持ち込むのか」という批判が寄せられたことがある。ソギョンさんの夫で共作者のウンソンさんは語気を強める。「政治や社会を抜きに、芸術家はどんな活動ができるだろうか」 作品の政治性は日本でも問題になったことがある。2012年8月、東京都美術館で開かれた国際交流展に少女像の縮小模型を出展した。だが、政治的表現物を規制する同館の「運営綱領に抵触する」として会場から撤去された。
 像に込めたメッセージは日本にだけ向けられているわけではない。それは、かかとを上げているもう一つの理由からもうかがえる。地面を踏みしめられずにいるのは、慰安婦として体験しなければならなかった苦難と、韓国社会の偏見や政府の無責任さの結果、罪人であるかのように生きなければならなかったことを表している。ウンソンさんが自身の幼いころを振り返る。「元慰安婦の人たちのことを話すとき、大人たちは声をひそめて話していた。その様子が、ずっと心に引っかかっていた」 やはり共感とは程遠い、さげすみの視線。その後、多くの元慰安婦の当事者たちが声を上げ、問題は広く知られるようになった。日本大使館前に置かれた少女像宛てに手紙が届き、雨の日には少女像に傘を差す人がいる。寒い日には首にマフラーが巻かれる。夫妻は韓国の人たちが少女像に抱く感情を想像する。「それは反日ではなく、共感だ」
 ウンソンさんは、日本で憲法9条を変えようとする動きや米国に置かれた少女像を撤去しようとする動きがあることも知っている。去年、韓国・巨済市に設置された少女像は、いすから立ち上がったものにした。「これ以上、座っているわけにはいかないという意味を込めた」 それでも、少女像が日本で反日の象徴とされていることをどう思うか問われれば、ウンソンさんは努めて穏やかにこう答える。「少女像は歴史を記録し、人々の気持ちを癒すためにある」
 なぜ日本の政治家諸氏が、「少女像」に対して過剰な感情的反応を起こすのか、この話を聞いて、この像を謙虚に見つめているとわかるような気がします。言葉にできないような下劣な犯罪的行為をこの静謐な少女像に糾弾されているようで、心底から怯えているのでしょう。だから、10億円払うからはやく撤去しろと主張しているのではないでしょうか。

 この後ろめたさから逃れるために、この犯罪的行為をなかったことにするため、慰安婦問題に関して攻撃的に振る舞う方々がいるのだと考えます。ブレヒトの『第三帝国の恐怖と貧困』に出演した、東京演劇アンサンブルの俳優・洪美玉氏が、劇のパンフレットに「危機感」という一文を書かれています。一部ですが引用します。
 2012年、中国に残された朝鮮人『従軍慰安婦』の写真展が、ニコンから突然、中止の通告を受けた。写真家の安世鴻(アン・セホン)さんは異議申し立てをして、東京地裁は会場を使わせることをニコン側に命令した。あまり広くないニコンサロンに警備員が三人、入り口には金属探知機ゲートが設置され物々しい雰囲気だった。私は、在特会と呼ばれる人たちと至近距離で出会った。彼(女)らは何時間かおきに会場に乗り込んできて、ハルモニの背景に写っている小さなテレビを指さして「金持ってるんじゃねぇか」とか、写真の中の彼女たちをおとしめることをまくしたてていく。受付だった私は我慢できず「後ろのお客様もいますので、先に進んで下さい」と声を荒げた。すると「お前もどうせ在日だろう」「じゃあ、どうせ色んな男に股開いてんだろう」 怒りで体が震えた。「全部録音していますから」というスタッフの言葉がなかったら、殴りかかっていたかも知れない。その経験はショックであり、恐怖だった。(p.34~5)


 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-03-04 06:31 | 鶏肋 | Comments(0)
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