焼津編(9):焼津(17.3)

 こちらでは、故久保山愛吉氏の家族への手紙、当時の写真や行政文書、新聞記事、実際に使用されたガイガーカウンターなどが展示されていました。目にとまったのが、マグロの売れ行き不振に悩んだ関係者が配布したビラです。後学のために転記します。
あなたにも放射能がある!!

 驚いてはいけません。あなたの身体にも帽子にも靴にも毎日食べているお米にも野菜にも豚肉にも二〇数/分(カウント・パー・ミニュツ)から一〇〇数/分の放射能があります。魚にだけ放射能があるのではありません。温泉も放射能があるから喜ばれているのです。こんな簡単なことを知らないで日本中がお魚におびえています。有害な放射能は一〇、〇〇〇数/分以上の時だけです。一番怖いのは―放射能よりも無智ではないでしょうか。さあ今日からは安心して毎日マグロで、魚で大いに栄養をとつて下さい。
 やれやれ、怖いのは"無智"よりも"嘘"だと思いますけれどね。もっと怖いのは、現在でも、福島原発事故による放射能の影響を過小評価しようとする専門家がおられることです。『DAYS JAPAN』(17.4)に、「専門家」の発言が収録されていたのでいくつか紹介します。(p.38~41)
山下俊一氏 (長崎県立医科大学副学長・福島県放射線健康リスク管理アドバザー)
「放射線の影響は、実はニコニコ笑ってる人には来ません。クヨクヨしている人に来ます」
「福島における健康の影響はない。放射線や放射能を恐れて恐怖症で心配しているということは、復興の大きな妨げになります」

高村昇氏 (長崎大学原爆後障害医療研究所教授・福島県放射線健康リスク管理アドバザー)
「放射能は塵のようなものであり、取り除ける。基準値はあるが洗えばOK」
「(これまでも)この先も、この原子力発電所の事故による健康リスクというのは全く考えられない」

神谷研二氏 (広島大学副学長・福島県放射線健康リスク管理アドバザー)
「人間は、生まれながらにして身体に入った余計なものを外に出そうとする力があるので、身体に入った放射性物質がそのまま身体にとどまることはない」

丹羽太貫氏 (放影研理事長・京都大学名誉教授)
「このレベル(の放射性物質の濃度)で、福島県の人を『被曝者』というとおかしくなる。それをいうなら『日本国民が被曝者』『世界中が被曝者』といわなければならない」

鈴木元氏 (国際医療福祉大学クリニック院長)
「年間5ミリシーベルトの危険を恐れて、子どもたちが外で運動しない、家の中に閉じこもる、野菜も食べないというふうにしていくと、肥満によるリスクが上がってくるわけです」
 うーむ、どう見ても、原子力マフィアの責任を隠蔽し、その権益を守るためには、市民の健康や生命などどうでもいいという姿勢ですね。『DAYS JAPAN』が"専門家"に鍵括弧をつけた理由に得心します。専門家というよりは、ステークホルダーです。専門家あるいは科学者はどうあるべきか、故高木仁三郎氏の言に耳を傾けましょう。『高木仁三郎セレクション』(佐高信・中里英章編 岩波現代文庫)からの引用です。
 しかし、科学者が科学者たりうるのは、本来社会がその時代時代で科学という営みに託した期待に応えようとする努力によってであろう。高度に制度化された研究システムの下ではみえにくくなっているが、社会と科学者の間には本来このような暗黙の契約関係が成り立っているとみるべきだ。としたら、科学者たちは、まず、市民の不安を共有するところから始めるべきだ。(p.261)
 権益のために市民の不安をもみ消そうとする専門家・科学者の方々に、よく噛みしめていただきたい言葉です。

 なお第五福竜丸は1967年に廃船処分となって東京の夢の島に捨てられていたが、粘り強い運動の結果、76年6月同地に都立の第五福竜丸展示館が完成、保存されています。この事件に衝撃を受けたベン・シャーンが描いた連作「ラッキードラゴン・シリーズ」にアーサー・ビナード氏が詩をつけた『ここが家だ』も好著です。この事件をモチーフの一つとした岡本太郎の壁画『明日の神話』も一見の価値あり。また第五福竜丸乗組員の大石又七氏の講演会を聞きに行ったことがあります。よろしければご一読を。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-04-15 06:29 | 中部 | Comments(0)
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