言葉の花綵162

 銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。…上から順々に四二人死んでもらう。奥さんにも飲んでもらう。胎児性の生まれるように。そのあと順々に六九人、水俣病になってもらう。あと百人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか。(石牟礼道子 『苦海浄土』)

 占領当初の被追放者は、現在では完全に蘇生し、政界、財界、官界、あらゆるところで安楽に活動を続けている。「赤」の烙印を捺された労働者は「永久追放」であり、アメリカの占領政策として最初に追放の目標に選んだ「黒い」指導階級は、そんな烙印などとうの昔に消してしまって納まっているのである。(松本清張)

 苦慮、煩悶の揚句、私はついに、人道、博愛精神第一という結論を得た。そして私は、何も恐れることなく、職を賭して忠実にこれを実行し了えたと、今も確信している。(杉原千畝)

 アメリカ政府のある高官が、イラク戦争についてのラジオ番組に出演した際にこう語った。「大量破壊兵器を使用した歴史を持つ恐怖の独裁国家は、国際社会から排除しなければならない。あの強欲で無能な大統領を拘束することに成功した今、全世界はより安全で幸せになった」
 番組終了後、局にはこんな問合せが殺到したという。
 「いつブッシュが捕まったんだ?」 (早坂隆 『世界反米ジョーク集』)

 こころざしつつたふれし乙女よ
 新しき光の中におきて思わむ
 まをとめのただ素直にて行きしにを
 囚へられ獄に死にき五年がほどに
 高き世をただめざす少女等ここに見れば
 伊藤千代子がことぞかなしき (土屋文明 『六月風』)

 核兵器廃絶は良くて非現実的、最悪の場合は危険を伴う空想だと批判する人もいる。冷戦による「長い平和」は、核抑止が大戦争を回避してきた証拠だと言う。しかし私は核兵器の使用を任されていた者として、この意見には断固反対する。核抑止とは難しく、もろいものだ。(ミハイル・ゴルバチョフ)

 八月初三、先月来町会よりの命令なりとて家々各縁の下または庭上に穴を掘れり。空襲を受けたる時避難する為なりと云。…去年は家の中の押入にかくれよと言ひ今年は穴を掘れと言ひ。来年はどうするにや。一定の方針なきは笑ふべく憐れむべきなり。(永井荷風 『断腸亭日乗』)

 毎日、戦争のために何百万というお金を使いながら、どうして医療施設や、芸術家や、貧しい人のために使うお金が一文もないのでしょう? 世界には食物があまって、腐らしているところがあるというのに、どうして餓死しなければならない人がいるのでしょうか? (アンネ・フランク)
by sabasaba13 | 2017-06-22 06:29 | 言葉の花綵 | Comments(0)
<< 山城博治氏・井筒高雄氏講演会 鎌倉の紫陽花 >>