近江編(2):大津(15.3)

 朝六時に目覚めてすぐに洗顔、インスタントコーヒーを飲んですぐにホテルを出発です。まずは浜大津駅から京阪石山坂本線に乗って皇子山駅へと向かいます。大津には、滋賀県立近代美術館、フェノロサの墓がある法明院、膳所には義仲と芭蕉の墓がある義仲寺がありますが、時間があったら最終日に寄ることにしましょう。
 大津の中心街を歩いていると、洒落た意匠の窓がある和洋折衷の建築に遭遇。看板によると、この道が旧東海道なのですね。今、撮った写真をチェックしていると、その看板に「呉服の雁金屋」と記されていました。尾形光琳の実家と関係…ないですよね。小さな三角破風とメダリオン、その下の小ぶりなベランダ、スパニッシュ瓦、アンシンメトリーな庇など、見どころの多い愛らしい石田歯科医院や、その隣にある様々な意匠の格子が組み合わされ、二階軒下の肘木がリズミカルに並ぶ瀟洒な町屋も健在でした。旧友に出会ったような懐かしさを憶えます。近江が美味しい「かど萬」も元気に営業されているようです。
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 その前にある「旧大津公会堂」は、1934(昭和9)年、大津商工会議所と大津市立図書館とを併設した「大津公会堂」として建設されたもの。スクラッチタイルが印象的な、風格のある物件です。現在では、四つのレストランが入った交流・商業施設として再利用されています。以前に、ここにある近江牛のグリル&バー「モダンミール」で食事をしたことがありますが、常軌を逸した量のガーリック・ライスは忘れられません。

 そして浜大津駅に到着、構内に自衛隊幹部候補生募集のポスターが貼ってありましたが、そのキャッチ・コピーが「未来を導く、指揮官になる」というもの。アメリカ合州国御用達暴力装置の指揮で、未来が導かれたらたまりませんね。一刻も早く国営国際救助隊「雷鳥」として再出発してほしいものです。
 でも戦争法案が可決されて、使いっ走りとしてアメリカの国益のための戦争に加担することが可能となり、自衛隊に死傷者が出る可能性が大きくなった今、応募する人はいるのかしらん。と思ったら、『経済的徴兵制』(布施祐仁 集英社新書0811)を読んで、たいへんな事態が進行していることがよくわかりました。愚かだけれども支持率には敏感な安倍上等兵を筆頭とする自民党諸氏が、強制的な兵役制度を導入する可能性は低い。そうではなく、グローバルに拡がる経済格差の余波を受けた貧しい若者たちを自衛隊に志願させる「志願制」、すなわち「経済的徴兵制」が水面下で進行しているのですね。さまざまな優遇措置をとりそろえ、進学・就職できない若者を自衛隊に「志願」させるという手法です。引用します。
 国立大学の学費は、1970(昭和45)年には年額1万2000円だった。それが今では学費の安い文科系学部でも50万円を超えている。もちろん物価も上がっているが、「消費者物価指数(総合)」では、2013(平成25)年を100としたら、1970年は32.6である。物価が約三倍になっているのに対して、国立大学の学費は約45倍に跳ね上がっている。
 ここまで学費が高騰した原因は、歴代の自民党政権が、「大学教育を受けることで学生個人も利益を得るのだから、その分は個人負担すべき」という「受益者負担」の方針をとってきたからだ。その結果、日本のGDPに占める高等教育予算の比率は0.6%と、OECD(経済協力開発機構)参加国の中で最低レベルとなってしまった。一方、家計の中で教育費が占める割合は30.5%と、OECD参加国中四番目に高くなっている。
 このように、歴代自民党政権の新自由主義的な政策によって憲法や教育基本法の定める「教育の機会均等」は骨抜きにされ、大学に進学することは学生にとっての「リスク」になってしまった。(p.32~3)

 政府の政策により大学進学の選択肢を奪われた若者を、経済的な利点を餌にして軍隊に誘導する-まさに「経済的徴兵制」である。(p.34)
 そして自衛隊による軍事行動の目的は、アメリカの国益のためだけではありません。軍事力を背景に多国籍企業が自由に経済活動を行える世界秩序を守ろうという点では、日米の利害は一致しているのですね。引用します。
 海外での「国益擁護」のために自衛隊をもっと活用すべきだという声は、経済界からも上がっている。
 日本経済団体連合会(日本経団連)は2007年、今後10年のヴィジョン「希望の国、日本」を発表した。
 その中で、「国際テロなど新たな脅威に対して国際社会が団結して取り組む必要が高まっている。国民の安心・安全を確保するために必要な安全保障政策を再定義し、その展開を図っていくことが求められている」として、憲法9条2項を改正して「国益の確保や国際平和の安定のために集団的自衛権を行使できることを明らかにする」ことを求めた。
 経済同友会も2013(平成25)年4月、「『実行可能』な安全保障の再構築」と題する提言を発表した。
 提言では、「戦後60年余を経て、日本は各国との相互依存関係を世界中に拡大し、その人材や資本、資産、権益もあらゆる地域に広がっている。いわば、日本の国益は、日本固有の領土・領海と国民の安全のみではなく、地域、世界の安定と分かちがたく結びついているのであり、この流れはグローバル化の中で、一層進展していくことだろう」と指摘。
 「日本経済の基盤として安全保障を考える企業経営者の立場」から、「ライフラインとしてのシーレーンの安全確保」や「海外における自国民保護体制の強化」「集団的自衛権行使に関わる解釈の変更」などを求めている。
 今回の安保法制の真の目的もここにある。安倍政権は国会審議で「国民の命と平和な暮らしを守り抜くための法案」と繰り返し、あたかも国民一人ひとりの命と暮らしを守るための立法であるかのように説明したが、彼らが自衛隊の海外任務の拡大でねらっているのは、軍事力を後ろ盾とした「国益」の擁護と追求であり、グローバル市場で日本の企業が自由に活動できる環境を守ろうとしているのである。(p.215~6)
 「自衛隊が私たちの命と暮らしを守る」という甘言にいとも簡単に騙される国民。政治家・官僚・財界のみなさんにとってこんなに扱いやすい国民はいないでしょう。「未来を導く、指揮官になる」の「未来」とは、私たちを犠牲にして大企業が肥え太る「未来」なのにね。

 本日の四枚です。
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by sabasaba13 | 2017-07-09 07:39 | 近畿 | Comments(0)
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