近江編(14):近江八幡(15.3)

 その近くに「近江商人とは」という解説板がありましたが、なかなか興味深く示唆に富む内容ですので、その一部を紹介します。
近江商人語録

商人の本務
 商人に必要なのは才覚と算用と言われます。しかし、近江商人は巧妙な計算や企てを良しとせず、世の中の過不足を補い、需要と供給を調整することを本務としています。

三方よし
 「売り手よし、買い手よし、世間よし」を表します。売り手と買い手の双方だけの合意ではなく、社会的に正当な商いや行商先での経済的貢献を求めています。古くから、企業の社会的責任を果たしてきた近江商人を象徴する言葉です。

武士は敬して遠ざけよ
 地域経済を左右するほどの実力者となると、大名との付き合いも多くなります。しかし、近江商人は権力に依存して利益を得ることを良しとはしませんでした。

お助け普請
 近江商人は地場産業の育成や地域の活性化があってこそ商いが行えました。よて、お互い様という観念や地域への貢献を疎かにすることはありませんでした。凶作や不況がある時には、進んで自宅や神社仏閣への改築等の造作と行っていました。今で言う公共事業的なものを率先して実施しています。

薄利多売
 一度で大きな利益を得るような商いは良しとせず、長期的な商いを行うことを求めています。そのため、日々の努力と始末が欠かせませんでした。
 うーむ、こうしてみると、私たちの考える「経済」と、近江商人の考える「商い」ってまったくの別物であるように思えてきました。近江商人が考える「商い」とは、需要と供給を調整すること、社会的責任を果たすこと、権力に頼らずに行なうこと、地場産業を育成すること、地域を活性化して貢献すること、そして利益が薄くとも息の長い商売をすることのようです。
 いまの「経済」とは、この真逆を考えるとその輪郭が見えてきます。需要をむりやりつくりだし、社会的責任など糞くらえ、権力を買収して頤使し、地場産業を潰し、地域を犠牲にし、ひたすら眼前の利益だけを追い求める。最近読んだ『たとえ世界が終わっても』(集英社新書0870)の中で、橋本治氏がこう述べられていました。
 「繁栄するかどうか」だけを考えていると、「繁栄か、破綻か」の二択になるけど、「繁栄」じゃなくなっても、経済は存在するの。だから、経済はその「必要とされている」範囲で回っときゃいいんだけど、そこで「欲望」を野放しにしてしまうから、みんな「利幅が薄いと嫌だ」と言い出すんですね。
 それで、世界経済を「儲かるもの」にしようと、どんどん大きくしていって、ついには実体経済が飽和しかけると、「実体経済と離して、金融中心で経済をもっとデカくすれば、まだまだ投資する先はある」って言って、余分な金をあちこちにつぎ込んでいる。あちこちに金をつぎ込んだやつが儲けられるように設定することを、グローバリズムっていうの。
 でも、そんなことやったって、実際はもう飽和状態なんだから、それに対して実体経済は応えられない。だから、どんどんと綻びが出始めて、そのしわ寄せが、実体経済で生きている弱い立場の人間に向かうの。それが失業率の増加や、非正規雇用の増加ですよね。
 だったら損得考えないで、「世界経済は回せていける範囲のぎりぎりで回ってりゃいい」っていうようなことを、金融をやってる人がホントは考えりゃいいのよ。…彼らにとって、それを考えるっていうことは、実は大損することなわけです。でも、「自分たちが大損すれば、世界経済は救えるかもしれない」ぐらいの考え方しないと、もうだめなんですよね。正義というものは、いつも自己犠牲を要求するものなんだよ。(p.221~2)
 そうですよね。弱者を犠牲にして大儲けしようとするのが「経済」であり、それがテロリズム、地域紛争、難民を生み出しているのだと思います。これまた最近読んだ『経済的徴兵制』(布施祐仁 集英社新書0811)で知ったのですが、その張本人であるアメリカの陸軍作戦教範がそれを認めているのですね。引用します。
 グローバル化は、今後も世界的な繁栄をもたらし続けるが、同時に世界中にテロ広げるだろう。相互依存経済は巨大な富の獲得を可能にした。失敗のリスクが大多数の者に持たされている間に、この富の恩恵が少数の者の手に集約され続ける。この富の不平等な配分は、「持つ者」と「持たざる者」の関係を生み出し、しばしば紛争の種となる。(中略) 専門家は、2015年までに最大で28億人が(その大多数は発展途上国の「持たざる」地域の人々だろう)貧困レベル以下の生活となっていると予測している。これらの人々は、過激派グループの勧誘に弱い。(中略) グローバル化はすでにいくつかの国を置き去りにしており、これからさらに多くの国が加速するテンポについてこれなくなるだろう。その結果、これらの国の住民は苦しみ、そのフラストレーションから急進的なイデオロギーを受け入れやすくなる。(米陸軍省「FM3-0 Operations」 2008年2月) (p.218~20)
 今こそ近江商人の「商い」に学ぶときだと思います。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-07-25 06:21 | 近畿 | Comments(0)
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