近江編(26):桂離宮(15.3)

 そして池の向こうに、船着場のある茶室・笑意軒が見えました。近づいて中をのぞくと、扁額の下に円形の下地窓が左右に六個並べた独特の意匠です。夜、この六つの丸窓から室内の光が漏れる光景は、幻想的でしょうね。中の間には大きな窓が設けられ、その向こうには水田がひろがっているそうです。手前に池、奥に田んぼ、涼風が吹き抜けるため、夏の茶室となっています。窓の下の腰壁もまた斬新な意匠、中央部分をひらべったい平行四辺形に区切って金箔を張り、左右の細長い直角三角形のスペースには市松文様の天鵞絨(ビロード)を張ってあります。
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 襖の引手は船の櫂の形、杉戸の引手は矢羽根の形、細部も侮れません。
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 笑意軒の前にある敷石は、さまざまな形や色の石がちりばめられ、歩くのがもったいないくらいです。ここが「草の延段」ですね。船着にあった小さな灯篭は竿や中台がなく、太陽・月・星を表す丸・三日月・四角の穴が穿たれた愛らしいもので、「三光灯篭」と言うそうです。
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 そして新御殿・中書院・古書院を左に眺めながら歩いていくと、古書院の広縁から突き出た月見台がありました。池に面した六畳大、竹簀子張りのスペースで、観月のための施設です。
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 そして最後の茶室・月波楼へ。池に面しており月見を楽しんだ茶室で、襖には紅葉の粋な小紋がちりばめられています。ここは秋の茶室ですね。古書院の月見台が主に月の出の観賞を目的としているのに対し、月波楼は小高い盛土の上に建っているので池の面を広く見下ろすことができ、池水に映る月の影を賞したようです。襖の引手は機の杼(ハタのヒ)でしたが、どういう由来があるのでしょうか。ご教示を乞う。月波楼の前に据えてある手水鉢は、水穴を鎌の刃に、右手の出張った部分を柄に見立てて 「鎌型手水鉢」と呼ばれています。秋の刈入れを象徴させたのですね。そういえば、冬の茶室・松琴亭の外腰掛には、収穫を意味する二重升の手水鉢ありましたっけ。なんと芸が細かいことよ。
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 そして古書院の玄関口である「御輿寄(おこしよせ)」へ。ここには杉苔で覆われた壺庭があり、切石をきっちりと組み合わせた延段、「真の延段」があります。石段の上には、六人分の沓の幅があることから「六つの沓脱」と称される、御影石製の沓脱石があります。また、自然石と切石を混ぜた飛び石が自由奔放に打たれており、石の饗宴とも賞すべき素晴らしい空間となっています。
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 中門の内と外にも、素敵な石が打たれていました。中門をくぐって振り返ると、ここもいい風情です。切妻造茅葺のしぶい門、右手には黒文字垣、そして洒落た敷石、一幅の絵のような光景でした。なお黒文字はクスノキ科の落葉低木で、その枝は高級妻楊枝の材料です。

 本日の七枚です。
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by sabasaba13 | 2017-08-23 07:38 | 近畿 | Comments(0)
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