関東大震災と虐殺 41

 そして敗戦後から現在に至るまで、朝鮮人への差別意識は大きな変化がないようです。『在日外国人 第三版 -法の壁、心の溝』(田中宏 岩波新書1429)から引用します。
 まずは1949年8月末から9月初旬に書かれたと推定される、吉田茂首相によるマッカーサー宛ての手紙です。
 朝鮮人居住者の問題に関しては、早急に解決をはからなければなりません。彼らは、総数100万人に近く、その約半数は不法入国であります。私としては、これらすべての朝鮮人がその母国たる半島に帰還するよう期待するものであります。その理由は、次の通りであります。
 (1)現在および将来の日本の食糧事情からみて、余分な人口の維持は不可能であります。米国の好意により、日本は大量の食糧を輸入しており、その一部を在日朝鮮人を養うために使用しております。このような輸入は、将来の世代に負担を課すことになります。朝鮮人のために負っている対米負債のこの部分を、将来の世代に負わせることは不公平であると思われます。
 (2)大多数の朝鮮人は、日本経済の復興にまったく貢献しておりません。
 (3)さらに悪いことには、朝鮮人の中で犯罪分子が大きな割合を占めております。彼らは、日本の経済法令の常習的違反者であります。彼らの多くは共産主義者並びにそのシンパで、最も悪辣な種類の政治犯罪を犯す傾向が強く、常時七〇〇〇名以上が獄中にいるという状態であります。
 戦後の朝鮮人による起訴犯罪事件数は次の通りです〔詳細省略。1948年5月末までで、91,235名の朝鮮人が犯罪に関与したという数字をあげている〕
 さて、朝鮮人の本国送還に関する私の見解は次の通りであります。
 (1)原則として、すべての朝鮮人を日本政府の費用で本国に送還すべきである。
 (2)日本への残留を希望する朝鮮人は、日本政府の許可を受けなければならない。許可は、日本の経済復興に貢献する能力を有すると思われる朝鮮人に与えられる。
 上述のような見解を、原則的に閣下が御承認くださるならば、私は、朝鮮人の本国帰還に関する予算並びに他の具体的措置を提出するものであります。
敬具
吉田茂
連合国最高司令官
 ダグラス・マッカーサー元帥
 (原文は英文で、アメリカのマッカーサー文書館蔵…)
 1960年10月、日本に国民年金制度が実施された時、在日韓国人の金鉉鈞(キムヒョンジョ)さんは、荒川区役所の国民年金勧奨員から加入を勧められました。「韓国人だから」と断ったのですが、説得されて加入しました。支給される歳となった1976年に、妻の李奉花(イボンファ)さんが請求手続きをとろうとすると、「韓国籍だから資格なし」と断られてしまいます。そして今まで納めた保険料を返されておしまいです。李奉花さんが抗議すると、年金課係長は「他人の国に来ていて、ゴチャゴチャ言わないほうがよい」、「なぜ戦争が終わったとき、すぐ韓国へ帰らなかったのか」と言い放ったそうです。(p.163)

 そして朝鮮高校には、授業料無償化を実施しないと日本政府は決定しました。金明俊(キムミョンジュン)監督は、2011年6月、東京での朝鮮学校支援市民集会に、韓国からかけつけ、挨拶をされましたが、その一節です。
 朝鮮高校無償化を実施しない理由が、朝鮮半島で起きた天安号沈没事件や延坪島砲撃などの政治的事件だとすれば、率直にいってあきれて笑うしかありません。また、地震〔東日本大震災〕の前後に、東京、大阪、千葉、宮城などの自治体が朝鮮学校への教育補助金を凍結した問題に至っては、なぜ、こんなに卑怯になれるのだろうか、と絶望感さえ感じました。そんな失笑と絶望を感じる理由は、これらすべてがほかでもない『子どもたち』を相手におこなわれているからです。(p.214)
 著者の田中宏氏はある日、「子どもの人権を守ろう…日朝首脳会議で、拉致事件問題が伝えられたことなどを契機として、朝鮮学校や在日朝鮮人などに対するいやがらせ、脅迫、暴行などの事案の発生が報じられていますが、これは人権擁護上見過せない行為です」という、法務省人権擁護局の下部機関、東京法務局などが作成したチラシを見かけました。氏は、東京法務局を訪れ、高校無償化除外や補助金カットは、「人権擁護上見過せない行為」では、と問うてみると、差別を受けた当事者ではないとして、人権侵害事件としての申し立てはできないとされました。(p.215~6)
 結局、安倍晋三内閣の誕生によって、2013年2月、朝鮮高校は最終的に高校無償化から除外されて現在に及んでいます。(p.263~4)
by sabasaba13 | 2017-11-28 06:29 | 関東大震災と虐殺 | Comments(0)
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