街並みは駅のすぐ近くなので、徒歩で散策を楽しめました。まずはS(醒井?)と期された野球帽をかぶった
飛び出し小僧がお出迎え。そして建物とあまりにも不釣り合いな巨大な唐破風の玄関が眼にとまりましたが、これは醒井尋常高等小学校の玄関を移築したものと解説板にありました。後方の建物は料理旅館「醒井楼」です。
四本の巨大な付け柱(ピラスター)が印象的な格調高い建物は、旧醒井
郵便局です。ヴォーリズ建築事務所設計で1915 (大正4)年に建てられ、当初は木造下見板張りの洋館風の建物でしたが、1934(昭和9)年に現在の姿に改修されました。木造2階建で、外壁はモルタルを厚く塗り石貼り風に見せています。現在は米原市醒井宿資料館として生まれ変わり、資料の展示や休憩室として再活用されています。
それにしても素晴らしい景観ですね。車道も歩道もないまっすぐな道に沿って落ち着いた雰囲気の和風民家が建ち並んでいます。道の片側には清冽な地蔵川が勢いよく流れ、そのせせらぎの音が耳をくすぐります。"
悪魔の機械"はほとんど通らず、あたりは静寂につつまれ、かすかに聞こえるのは水の音と鳥の声。日々心身に積もった塵が洗い流されていくようです。もうしばらく散策を楽しみましょう。
小川がT字になったところには、「十王」と刻まれた石灯篭がたっていました。解説板によると、平安中期の天台宗の高僧・浄蔵法師が諸国遍歴の途中、この水源を開き、仏縁を結ばれたと伝えられているそうです。近くに十王堂があったことからこう命名されました。
近くに「観光客様 無料駐車場 →」という看板がありましたが、"様"と言われると恐縮してしまいます。地元の方々の平穏な日常に侵入して、その暮らしを脅かしているのにね。「お金を使って地域経済を潤しているのだから当然」という気にはとてもなれません。『「おもてなし」という残酷社会』(榎本博明 平凡社新書)を読んではじめて知ったのですが、こうした対応を顧客満足(CS=Customer Satisfaction)と言うそうです。その結果、顧客が増長慢心して、荒ぶる神の如くふるまい、サービスを提供する側を過剰に追い込んでいる状況が気がかりです。
地蔵川のほとりに沿って家々が建ち並び、家に入るための小さな石橋が架けてあるのもいい風情です。川におりる石段がありましたが、かつては川で洗いものや洗濯をしていたのでしょうね。
その先にあったのが醒井問屋場(といやば)です。問屋場とは江戸時代、街道の宿駅で、宿場を通行する大名や役人に人足や馬の提供、荷物の積替えの引継ぎ事務を行なっていたところで、このように完全な形で残っているものは全国的にも珍しいとのこと。「本陣跡」という木柱の向こうには、木造三階建のお宅がありました。
本日の五枚です。