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砂けぶり 一 夜になつた―。 また 蝋燭と流言の夜だ。 まつくらな町を 金棒ひいて 夜警に出るとしよう かはゆい子どもが― 大道で ぴちやぴちやしばいて居た。 あの音―。 不逞帰順民の死骸の―。 おん身らは 誰をころしたと思ふ。 陛下のみ名において―。 おそろしい呪文だ。 陛下万歳 ばあんざあい 砂けぶり 二 焼け原に 芽を出した ごふつくばりの力芝め だが きさまが憎めない たつた 一かたまりの 青々した草だもの 両国の上で、水の色を見よう。 せめてものやすらひに―。 身にしむ水の色だ。 死骸よ。この間、浮き出さずに居れ 水死の女の印象 黒くちゞかんだ藤の葉 よごれ朽つて静かな髪の毛 ―あゝ そこにも こゝにも 横浜からあるいて来ました。 疲れきつたからだです―。 そんなに おどろかさないでください。 朝鮮人になつちまひたい気がします 深川だ。 あゝ まつさをな空だ―。 野菜でも作らう。 この青天井のするどさ。 夜になつた―。 また 蝋燭と流言の夜だ。 まつくらな町で金棒ひいて 夜警に出掛けようか 井戸のなかへ 毒を入れてまはると言ふ人々―。 われわれを叱つて下さる 神々のつかはしめだらう かはゆい子どもが― 大道で しばつて居たつけ―。 あの音―。 帰順民のむくろの―。 命をもつて目賭した 一瞬の芸術 苦痛に陶酔した 涅槃の大恐怖 おん身らは誰をころしたと思ふ。 かの尊い御名において―。 おそろしい呪文だ。 万歳 ばんざあい 我らの死は、 涅槃を無視する―。 擾乱の歓喜と 飽満する痛苦と
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