東京錦秋編(6):小石川植物園(05.12)

 さらに歩いて、徳永直のプロレタリア小説「太陽のない街」の舞台となった共同印刷の前を通り、漱石が下宿していた新福寺を右に折れると、小石川植物園に到着です。
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 1684年(貞享元)に江戸幕府が設けた薬草園が嚆矢で、東京大学の創設(1877)とともにその附属となり、理学部の管理するところとなって今日に至っています。青木昆陽の甘藷栽培や享保の改革時の養生所設置でも有名ですね。京都でも思い知りましたが、植物園というのはもみじ狩の穴場です。何といっても人が少ない、そして様々な植物の紅葉が見られ、植物名やその特徴も学ぶことができます。もみじの並木や、落葉が敷き詰められた桜の園も結構なのですが、一番気に入ったのが正門から入って左奥にある雑木林。舗装された道がなく、色づいた様々な木々の間を自由気儘にそぞろ歩きすることができます。落ち葉を踏む音だけが聴こえる静寂さと、夕陽が地面に描き出す木々の影や紅葉の輝きを堪能できました。まるで小菅刑務所のような斬新なフォルムをした本館の由緒も気になるところ。池越しに見る旧東京医学校本館もいいですね。中国風・和風のテイストを細部に漂わせる洋館です。園内には旧養生所の井戸や、甘藷試作の記念碑もあります。ニュートンの生家から接ぎ木されたというリンゴの木、メンデルが実験に使ったものを分株したブドウの木もあります。
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 実は植物園と帝国主義は深い関係にあります。イギリスのキュー植物園が典型例なのですが、宗主国が必要とする作物等を植民地で栽培するための研究を行うのが近代の植物園です。小石川植物園がどれくらい植民地政策に関与していたのか寡聞にして知りませんが、気になります。ま、それはさておきここは一推しの場所です。ここから千石界隈に向かい、千石本町商店街を抜けて地下鉄千石駅に到着。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2006-02-27 06:08 | 東京 | Comments(0)
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