案内所で教えてもらった
山下りんの生家あたりを彷徨し、日本三大稲荷の一つ笠間稲荷に向かいました。小生、信心は全くありませんので、参拝もせず附近を散策。境内に点在する狐の表情ウオッチングも楽しいものです。「さざれ石」もありましたが、これは胡散臭いですね。
そして近くの日動美術館へ。日動画廊社長長谷川仁・林子夫妻により創設された美術館です。たまたま
熊谷守一展が開かれており、渡りに船、堪能いたしました。残念なことに山下りんの絵は他の展覧会に出品中とのことで見られませんでしたが、印象派やアメリカの現代美術などを中心とした平常展示もなかなか充実しております。中でも画家のパレットをコレクションした一室は圧巻。あまりの数の多さに正直見飽きましたが、よくぞ集めたものです。また本館とフランス館・アメリカ館の間にある竹林も立派なものでした。
さて腹ヘリコプター、洋食屋「SUN」で水準以上の極上メンチカツを食し、芸術の森公園の中にある茨城県陶芸美術館へと行ってみましょう。
特別展として「古久谷浪漫 華麗なる吉田屋展」が開催されていました。ん、吉田屋? 思い出した! 数年前に金沢に行った時に、黄色を基調としたカラフルな色彩と大胆にデフォルメされた万年青の意匠に惹かれて、九谷焼の珈琲カップを購入しました。たしか値札に「吉田屋」と書かれており、何なのだろうと訝しく思ったことがあります。その疑問を怠惰にもずっとそのままにしてしまったのですが、それを解明するチャンス。さっそく入場しました。以下、美術館のHPから解説を抜粋します。「大胆な図柄と華麗な色使いが特徴の“古九谷”は17世紀中頃から制作が始まり、多くの謎を残してわずか数十年で途絶えました。それから約百数十年後の1824年(文政7)、72歳にして私財を投じ、この古九谷再興に浪漫を馳せた男がいました。大聖寺城下(現在の石川県加賀市)の豪商、四代豊田伝右衛門です。屋号を吉田屋と号したことから、この再興九谷焼は吉田屋と呼ばれています。」 なるへそ、疑問が氷解しました。あのカップは吉田屋の模造だったのですね。それにしても、大胆かつ華麗な意匠と色彩の饗宴には言葉を失います。これが裕福な町人向けの器というのですから、江戸期の豪商の審美眼の確かさとそれに応えようとした職人の技量と意地、そしてそれをプロデュースした吉田屋の手腕には恐れ入ります。生産者と消費者が協力して、新しい美をつくりだそうというこうした試みを現代でも再現できればいいのですが。こういう伝統だったら、いくらでも尊重するのに。
平常展示も素晴らしいものです。日本各地の焼物の特徴を、実物の優品とともに解説するコーナーは大変わかりやすくていいですね。下館出身の板谷波山、笠間を拠点とした松井康成(こうせい)の逸品を展示するコーナーにも目を釘付けにされてしまいました。
本日の一枚は、日動美術館の竹林です。