東北夏祭り編(16):五所川原立佞武多(06.8)

 今晩見物する立佞武多(たちねぶた)の有料観覧席は押さえられませんでしたので、駅前の臨時観光案内所で地図をいただき、見物場所の穴場と美味しい寿司屋を教えていただきました。しかしどの寿司屋も満員御礼、やっと清寿司という店を見つけて(高いけれど)美味しい寿司にありつけました。大鰐温泉に泊まっていると言ったら、ご主人曰く「だめだよ、五所川原で金を落とさなきゃ」。町をぶらぶら歩いていると、祭りが近いという心地よい興奮に身も心も躍ってきます。青森とは違い、ねぶたを商業主義に利用してやろうという雰囲気は感じませんでした。ショー・ウィンドウにあった、太ったマネキン(珍品!)も心なしか上気しているようです。さて教えてもらった増田病院の前に行くと幸い空いており、道路に面した歩道の端に陣取ることができました。少し向こうの曲がり角を曲がって立佞武多が姿を現すはずです。そこにある家が二階建てなので、これはもしや「夜の町にガオー」という光景が見られるのではないか、期待しましょう。
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 さて立佞武多とはいかようなものか。ここ五所川原では明治から大正の頃に、高さ約12間(約21メートル)の巨大な人形ねぶたが運行されていたようですが、電線の普及により小型化されてしまいました。しかし1996年(スワローズがブルーウェイブを日本シリーズで撃破した翌年)、一枚の写真をもとに有志が復元し「立佞武多」と命名したとのことです。高さ約22メートル、幅6メートル、重さ約17トンにも及ぶ巨大人形ねぶたが三台、夜の町にガオーじゃなくて、夜の町を練り歩くわけです。さあ運行開始。前半は小型の人形ねぶたが中心で、最後に立佞武多の登場です。読みどおり、曲がり角の向こうで、家々の上にその上半身を現しました。もうこれだけでアドレナリンがふつふつと分泌してきます。そして角を曲がってその偉容を見せた時には、もう興奮は最高潮。何の留保もつけずに、こ、れ、は、す、ご、い、と魅せられてしまいました。7階建のビルに相当する巨大な、しかも闇の中に明るく浮かびあがる巨大人形が、ムーン・ウォークの如くずずずずずずずずと静かに動いてくるわけです。これは一見の価値あり。青森とは違い、企業の影は見せません。(「ホルモンや YOKO」というディスプレイが一つあっただけ) そして町の方々が主体的に参加しているように見受けられました。観客からしばしば「○○せんせえ!」とか「△△ちゃん!」という呼び声が飛び交います。囃子についてはマイクとスピーカーを使用していましたがテンポが速くリズミカルで、気持ちを高揚させるものでした。掛け声は「やってまれ、やってまれ」。観客の眼前で鉦を打ち鳴らしたり、「まわってくれ」と声がかかるとその場で小型ねぶたをぐるんぐるん廻してくれたりするなど、「みんなで騒げばやなことは逃げてくさ」という風流(ふりゅう)の伝統を受け継いでいるような気がします。賛否はあるでしょうが、高知のよさこいのように、同じユニフォームに身を固めて創作ダンスを踊るというパフォーマンスもありました。自分たちの祭りだという意識をしっかりともっているのでしょう。いやあ、ええもん見せてもろた。
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 というわけで聞き流してください、五所川原立佞武多の鑑賞ポイントです。
1.有料観覧席はお薦めできません。巨大なねぶたなのでどこからでも見えるし、席が道路から離れているので、熱気あふれる臨場感を楽しめません。
2.「夜の町にガオー」が見られる増田病院前の歩道に陣取るのがお薦め。
3.ねぶたの進行方向と、駅に向かう道がだぶっているので、終了間際は新生大橋のあたりが大混雑します。列車の発車時刻には要注意。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2006-09-13 06:14 | 東北 | Comments(2)
Commented by yukie at 2006-10-16 11:15 x
トラックバックありがとうございました。
とても素敵な写真。現場の様子がわかる筆力にも感動しました。
これからもよろしくおねがいいいたします。
Commented by sabasaba13 at 2006-10-16 21:09
 こんばんは。過分なお言葉、恐縮です。五所川原立佞武多にはほんとうに感銘を受けました。青森ねぶたは企業に乗っ取られた感がありますが、こちらは地元の人々の熱い思いが伝わってきました。一見の価値はあります。
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