そして巨木探訪です。まずはすぐ近くにある豊牧のカスミ桜。やや小高い小さな丘におられ、下界を睥睨する王者の風格です。そして豊牧のクリ。こちらは溜池の湖畔に佇んでおられます。それほどの高さはないのですが、蔓がからみついた太い幹は圧倒的な迫力。
周りの環境や生き物を支えそして支えられ、何かを与えそして与えられ、数百年も屹立してきた姿には言葉もありません。それに言葉を与えるのが優れた詩人なのでしょうね、私の好きな「きみと話がしたいのだ」という
田村隆一の詩の一節を紹介します。
不定型の野原がひろがっていて
たった一本だけ大きな木が立っている
そんな木のことをきみと話したい
孤立してはいるが孤独ではない木
ぼくらの目には見えない深いところに
生の源泉があって
根は無数にわかれ原色にきらめく暗黒の世界から
乳白色の地下水をたえまなく吸いあげ
その大きな手で透明な樹液を養い
空と地を二等分に分割し
太陽と星と鳥と風を支配する大きな木
その木のことで
ぼくはきみと話がしたいのだ
さて新庄方面に戻りましょう。しばらく行ったところに岩神大権現の杉とクロベという巨木があるということなので、ここにも寄りました。広大な水田を見晴らせる山の端に、まるで長年連れ添った老夫婦のように仲睦まじくならんでおられます。垂直に真っ直ぐに天を衝く杉と、根本から何本もの幹に別れ枝を四方に広げるクロベ、好対照です。私はクロベの姿に憧れますね。
そしてふたたび最上川を渡ると本合海のあたりに「芭蕉乗船の地」の碑がありました。1689(元禄2)年、芭蕉と曽良は新庄の清流亭に二泊した後、ここから舟上の人となり、最上川を下っていったとのことです。新庄を通り抜けて北上、いよいよ金山(かねやま)に向かいます。
本日の三枚。上から豊牧のカスミ桜、豊牧のクリ、岩神大権現の杉とクロベです。