本日も晴天です。えちぜん鉄道に乗って、かつて北前船で栄えた港町、三国に行きましょう。三国駅で自転車を借り、地図をもらって出発です。まずは港ぞいの道をしばらく快走して三国突堤に向かいました。九頭竜川の土砂により河口が塞がれ船の出入りが困難になり苦慮した地元民の要望にこたえて、明治政府がオランダ人技師のエッセルとデ・レイケを派遣して1880(明治13)年に完成させた突堤です。細長い象の鼻のような形状をしており、海水の流れを変えて土砂を深いところへ流すように工夫されています。自然素材の粗朶を使っているため、多くの魚類が生息するようになるなど良好な生態系をも生みだした優れた公共土木事業です。業者と官僚の利権を優先させるのではなく、こうした公共土木事業の伝統を大事にしてほしいですね。利権を視野に入れず、地元民の利益を優先してしかも自然や景観と調和した物件を見るのが、近代化遺産探索の醍醐味です。自転車を下りててくてく突堤を歩いていくと、右には東尋坊タワー、左には時々漁船が行き交う九頭竜川河口が見やれます。釣り糸をたれる太公望も数人、しばし長閑な時間を楽しめました。
再び自転車に乗り、えちぜん鉄道の街中を散策しましょう。寂れたとはいえ、かつての殷賑を想起させてくれる重厚な建物群が、気持ちよい雰囲気を醸し出しています。出桁造りと切妻屋根を組み合わせた、この地方独特の意匠で「カグラ建て」というそうです。高見順の生家や、煉瓦造りの旧森田銀行本店も見もの。
「風除室 三協サッシ」「いとや提灯せいぞう元」「手すきこんぶ」「結納用品」といった、この地の暮らしぶりを感じさせる看板を見ているだけでも飽きません。
家々の格子窓に、中秋の名月をかたどった色紙、すすき、俳句が飾ってあるのも風情をそそられます。「くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏」 ところどころに「報恩講」の貼紙があるのも、越前一向一揆の歴史を感じます。いじめをなくす運動ポスターに「いじめない いじめられない 子になろう」とあったのには驚き。他力本願信仰とは相容れないものですね、「自己責任=自力本願」の動きが浄土真宗を信じる地にも浸透してきたのでしょうか。
本日の四枚です。