また石段を少しのぼって左に曲がると本堂、その脇を抜けると登山参拝受付所が見えてきます。「これより奥は、修験道の行場のため険しく危険な場所があります。必ず登山届をして登り、下山時には必ず下山届をして下さい」という表示を見て、身が引き締まる思いでした。ここでさらに登山参拝志納金200円を納めると、輪袈裟を貸してくれます。いよいよ聖なる結界に入るのだと自戒。(煙草も吸えそうにないな…) 登山届に名前・住所・電話番号を書いていると、「少し読みづらいのできちんと書き直してください」と消しゴムで消されてしまいました。ますます緊張が高まります。ある方が杖を貸してくれというと、係りの方の「かえって邪魔です、五体をすべて使って登ってください」という返答。お土産を物色していると、さっき出発した男性が青息吐息で戻ってきて下山届に記入しながら「俺には…無理だ」と呟いておられます。外には「過去、三徳山では、登山道において入山者が死傷するという滑落事故が発生しており、また、入山者が登山中に意識消失になり救助されるという事案も発生しています」という倉吉警察署のポスター。もう不安と緊張感は最高潮。弱音をかましてよかですか? 実は「やめたら」という天使の小さな囁きも聞こえました。しかあし、「がんばれベアーズ」でウォルター・マッソーが言っていた名台詞「あきらめるな、あきらめると癖になる」という言葉を胸に、とにかく登りましょう。
急な山道ですが登れないことはありません。何とかなりそうだなと安堵し、十一面観音堂に到着。役行者像を撮影し、水分を補給し、さて…………………… どっちにいけばいいんだ! 道が見当たらない。よおく見ると木の根が動脈のように浮き出ている急峻な崖の上方に、人影があります。ここを登るのか… 後はもう必死。石や木の根に足をかろうじてひっかけ、木の枝や岩をつかみながら何とか登りきりました。ここは「かづら坂」という難所だそうです。この後もこうした難所の連続。ある方の「なぜ金払ってこんな目に…」というぼやきが印象的でした。
鎖にしがみついて巨大な岩を登る「くさり坂」をクリアすると、清水寺のような姿形をした文殊堂に到着。違うのは手すりがないということ。腰が引けましたが、倉吉市内と連山を一望できる絶景ポイントでした。
本日の二枚は、「かづら坂」を前に(もちろん私も含めて)立ちすくむ人々と、文殊堂からの眺望です。