「迷宮都市ヴェネツィアを歩く」

 「迷宮都市ヴェネツィアを歩く」(陣内秀信 角川ONEテーマ21)読了。念願のヴェネツィア旅行に行く前に、すこし勉強しておこうと何冊かの本を手にしました。偏見・食わず嫌いと言われても返す言葉はないのですが、塩野七生氏の著書には触手が伸びません。何故なのでしょうね。そうした中で、もっとも参考になったのが本書です。著者は建築史を専攻している研究者で、特に地中海の都市が専門です。そうした知識を駆使しながら、長期間ヴェネツィアに居住していた経験をもとに、今そこにあるヴェネツィアの魅力を生き生きと教えてくれる好著です。氏の言です。
 …生活の舞台としての変化に富んだ都市空間の中を、より多彩で、意味のありそうなルートを選びながら、なめるようにウォッチングしてめぐる。都市を読むコツをも、そのつど説明しながら。
 「これを写真に撮ればヴェネツィアに来たことを証明できる」という凡百のガイド・ブックとは志が違います。名所・旧跡も手際よくおさえながら、ヴェネツィアの歴史や市民の息遣いを伝える物件・逸品・光景を多々紹介してくれています。聖母マリアの小祠、住居の一階を公道として利用するトンネルのようなソットポルテゴ、素敵な中庭、ビザンティン皇帝のレリーフ、古いけれど今も機能している商店街、そして絵になる(ピクチャレスク)たたずまい。実際に行ってみて本当に参考になりました。中でも、歩くことによってはじめてわかる光/影、開かれた空間/閉じた空間が織りなす心地よい刺激という視点は、新鮮でした。機能と合理性と経済性のみを追求する現代の都市を再生し、人間らしく変えていくための手がかりがここにあるような気がします。美味しいジェラートの店をいくつか紹介してくれるのも嬉しいかぎりです。
 難点を一つだけあげれば、地図がみづらいこと。でもこれは仕方ないでしょう。文字通り迷路・迷宮のようなヴェネツィアの散策ルートを新書サイズでわかりやすく表現することは不可能に近いと思います。地図を手書きにし人間味を加えることによって、その欠点をカバーしようとしているのかな。
 なめるようにして見て歩く、これはヴェネツィアに限らず、どこの街を訪問する時でも肝に銘じたいことです。神は細部に宿り給う… 今度の休みには、わが住む街をなめるようにウォッチングしてめぐってみようかな。
by sabasaba13 | 2007-06-14 18:52 | | Comments(0)
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