「世界を見る目が変わる50の事実」

 「世界を見る目が変わる50の事実」(ジェシカ・ウィリアムズ 草思社)読了。筆者はイギリスBBCのジャーナリストで、本書は今現在世界が抱える深刻な50の諸問題を紹介し、その原因や実情そして対策をコンパクトな形で解説したものです。項目の見出しを列挙するだけで、著者の視点が見えてきます。「世界にはいまも2700万人の奴隷がいる」「今日の米国に生まれる黒人新生児の三人に一人は刑務所に送られる」「世界で三人に一人は戦時下に暮らしている」 本書を貫くバック・ボーンは、富める先進国と貧しい途上国との間の醜い不平等が諸問題の根本的な原因だという考えです。同感。それを一項目につき6ページほどで概説する力量には脱帽します。さらに、より効果的に状況を印象付けるジャーナリスティックな手法もお見事。たとえば「タイガー・ウッズが帽子をかぶって得るスポンサー料は、一日当たり5万5000ドル。その帽子を作る工場労働者の年収38年分」という見出しなどそうですが、気が遠くなるような絶望的な格差ですね。棒切れで小さな玉を飛ばして穴に入れるのが上手いだけで、これだけの莫大な収入を得られるのが今の世界です。また「世界の死刑執行の81%はわずか三カ国に集中している。中国、イラン、米国である」「ブラジルには軍人よりも化粧品の訪問販売員のほうがたくさんいる」といったような、ちょっと考えさせられる未知の事実も多々紹介されています。さて何故でしょう。
 地球の破滅という最悪の事態へ至る最後の一線を踏み越えつつある(踏み越えた?)今、何よりも喫緊なことは世界の現実を知ることでしょう。問題解決のための模索も試行も努力も、すべてはそこからはじまります。そのための大いなる一助となってくれる好著、お勧めです。「はじめに」で著者が紹介している言葉には勇気づけられます。
 思いやりがあり、行動力のある人々は、たとえ少人数でも世界を変えられる―それを決して疑ってはなりません。実際、それだけがこれまで世界を変えてきたのですから。(マーガレット・ミード)

by sabasaba13 | 2007-07-23 06:02 | | Comments(0)
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