別所温泉・稲荷山・姨捨編(9):前山寺(07.7)

 さて、ここから数分歩くと、窪島氏がつくったもう一つの美術館、村山槐多、関根正二、松本竣介といった夭逝した画家たちのデッサンを集めた信濃デッサン館があります。塩田平を一望できる隣接の喫茶店で珈琲をいただき、さっそく鑑賞しました。デッサンというのは画家の個性がもろにでるものですねえ。剛毅な線、洒脱な線、繊細な線、線の競演でした。眼福、眼福。前回見ることができなかった村山槐多の『尿する裸僧』や、新しく加えられたエゴン・シーレやウィリアム・ブレイクの作品も堪能。
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 至福のひと時を過ごし、すぐ隣にある前山寺を拝観しましょう。こちらには室町時代に制作された三重塔がありますが、二・三層に窓・扉・廻縁がなく、未完の塔と言われているそうです。そんなことは気にならぬ均整のとれたお姿でした。茅葺の本堂も風格あるもので、破風のところに「水」とあるのは火災除けでしょう。寺紋は桔梗、本堂の前には小雨を浴びて色鮮やかな桔梗が数輪植えられていました。
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 なおこちらで見つけた標語を二つ紹介します。「かけた情は水に流せ 受けた恩は石に刻め」「よごすまい明日もここにはみんなくる」
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 そして二つの美術館の真ん中にある槐多庵へ。こちらでは、主に現代美術の作品を展示してあります。その前には、可憐な八重の山百合が咲き誇っていました。
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 さてそろそろ宿へと向かいましょう。バスの本数が少ないので、デッサン館でハイヤーを頼もうとすると、何たる僥倖、客待ちをしているタクシーが一台ありました。さっそく乗り込んで、塩田町駅へ。運転手さんに紅葉の盛りはいつかとお尋ねすると、十月末とのことです。「その頃は松茸も美味しいよ」 このあたりは松茸の名産地だったのですね。するとまどろんでいた山ノ神はがばと身を起こし「秋に来るぞよ」とのご託宣。私も紅葉が見たいので同意。大同団結、目的は違いますが、秋に再訪することに話がまとまりました。十分ほどで駅に到着、幸い連絡も良く数分後に到着する上田行きの列車に乗れそうです。こちらは無人駅ですが、貸し自転車が五台あり、上田駅で申し込めば借りられるようです。「ホームでのスケートボード等、他のお客様に迷惑になる行為は禁止されています」というポスターには唖然、そこまでするか。数年前に線路に石を置くなという子供向けポスターを見かけましたが、さすがに悪餓鬼の国、信州です。もう一枚は駅に置いてある傘が「別所線電車利用促進期成同盟会」より寄贈されたというもの。仰々しい名称ですが、何となく労働運動や小作争議の伝統を感じます。
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 そうこうしているうちに列車が到着。ローカル線の長閑な雰囲気を楽しみながら、上田へと向かいます。
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 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2007-10-29 06:10 | 中部 | Comments(0)
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