別所温泉・稲荷山・姨捨編(10):上山田温泉「豊年虫」(07.7)

 上田駅に到着し、公衆電話で宿に送迎をお願いし、しなの電鉄に乗り換えて戸倉駅で下車。送迎の乗用車に乗り込んで千曲川を渡り上山田温泉に直行です。宿で花火大会の開始時間を確認し、旅装をとき、しばらく町を散策することにしましょう。町全体はお祭りムードでうきたっています。電信柱に布団などのクッションがまきつけてあるのは、よほど乱暴な神輿なのでしょうか。おっ、神馬もやってきました。
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 さて、私としては温泉街の徘徊と射的屋の捜索、そして千曲川のほとり散策を考えていたのですが、山ノ神が見つめているのは宿でもらった団扇。この団扇をもってミニ・ギャラリーを見にいくとあんずジュースがもらえる宿が三つあります。一つはわれらが止まる上山田ホテルで、すでにジュースをゲット。彼女はもう二本が惜しくなったようで、「行くぞよ」とぽつり。あああああああああ、せっかくなのに時間がもったいない、ジュースなんていくらでも買ってあげるから街歩きをしようよお、と思っても口には出せず供奉することにしました、やれやれ。そして向かったのが笹屋ホテル。
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 どうせしょぼいギャラリーだろうなとたかをくくっていると、係の方が「フランク・ロイド・ライトの弟子で唯一の日本人…」と話し始めました。         えっ          俺の目を見ろ何にも言うな、「遠藤新!」と思わず叫んでしまいました。彼の説明によると、このホテルの別館『豊年虫』は、遠藤新が1932(昭和7)年に設計したもので、踏み込み、前室、座敷、広縁と展開する奥行きの深さを持つ日本建築の伝統にホテルの手法を取り込み、近代観光旅館建築のモデルにもなった貴重な建物だそうです。よく旅館の和室で見かける、窓に面している所だけ板の床で椅子とテーブルが置かれている設計は彼の考案なのですね。なお『豊年虫』とは、当地の呼び名でかげろうのこと、多く発生する年は実り豊かであると伝えられることから命名されたとのこと。何という僥倖、そしてありがとう山ノ神、あなたを信じてついてきてよかった。
 さっそく係の方が内部を説明しながら案内してくれました。残念ながら満室なので部屋の内部は見られませんでしたが、遠藤新の見事なデザイン感覚を満喫することができました。歩行と視覚に変化をつけるための段差、白木を組み合わせた茶室のような廊下屋根の化粧板、坪庭へと視線を誘導する仕掛け、イサム・ノグチのようなモダンな意匠の照明、円形の入口など意表をつく曲線の多用などなど。
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 文人も多く利用したようで、展示室ではわが敬愛する石川淳の署名や、西城八十の「ひとを切るのが侍ならば 恋のみれんがなぜきれぬ」という洒落た色紙を見ることができました。うーん、満足。係の方に丁重にお礼を言って、宿へ戻りましょう。
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2007-11-03 08:13 | 中部 | Comments(0)
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