「普通の国になりましょう」

 「普通の国になりましょう」(C・ダグラス・ラミス 大月書店)読了。井上ひさし氏の座右の銘「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに」を実感させてくれる素晴らしい本にまたまた出合えました。著者は沖縄を拠点に執筆・講演活動など"平和を紡ぐ旅"を行われている方で、「世界がもし100人の村だったら」の著者の一人でもあります。小学校高学年以上を対象にした平明な文章で、戦争をしない/軍隊を持たない国=普通の国であるべきだし、そうしないと人類の生存は危ういと力強く明快に主張されています。例えば…
 現実主義者になろうと思えば、まず現実を見なければなりません。戦争と平和に関してもっとも重要な現実は歴史の記録です。つまり、いままで、軍事力をもっていた国は、戦争をうまく避けられたのでしょうか。…それぞれの国が、人類史上最大の軍事力をそなえた20世紀は、人類史上最大の戦死者を生み出してきました。そして軍事力の大きな国だからといって、戦争の被害が少なかったわけではありません。日本の場合、もっとも軍事力の強かった時代と、もっとも戦死者が多かった時代は、同じです。

 これが現実です。

 軍事力をもっている政府は、それを使いたくなってしまうことが多い。
 憲法第九条の改正/改悪、集団自衛権の容認、さらには核武装さえお気軽・お手軽に語られる"空気"が日本社会を囲繞している今だからこそ、著者のように普通の言葉で現実を語ることが必要だと思います。たとえば最強の軍事国家アメリカが、今、世界で何をしているのか、そして日本はそれにこれからどう関わっていこうとしているのか。今、ひそかに(おおっぴらに?)進められている日米軍事再編についても、こうした普通の言葉で議論すべきでしょう。
 ただし本書には日本の現状に対する鋭い批判と皮肉も含まれています。戦争はいやだけど、軍事力によって守られていないと不安だ。そこでアメリカ軍にいてもらえば安心だし、日本人は戦争に行かないですむ。そして日本の平和的な雰囲気をこわさないように、米軍基地を多くの国民から遠いところ(たとえば沖縄)においてもらう。基地をなくすための反対運動は起こさないが、時々軽い批判を言って自分は平和主義者だという気持ちをもつ。そして、その矛盾を「しかたがない」という無力感で覆い隠す。
 人前でいえない本心を白日のもとにさらされたようです。そうですよね、これが現実である以上、お世辞にも平和を希求する国家とは言えません。それではこうした状況が続くとどうなるのか。
 ひとつは、他国の軍隊に長いあいだ頼ると、そのうち日本と関係のない戦争に巻き込まれるだろうということ。
もうひとつは、「平和な日本」を国際社会に宣伝しようとしても、信じる人はあまりいないだろうということ。
そして、いくら上手にやっても、偽善は人間の精神衛生上、あまりよくないということです。
 戦争ができる特殊な国になった場合、徴兵されるであろう子供たちにぜひ読んでほしい本です。そして未来の担い手である子供たちを読者として意識し、社会や世界について考えてみようとやさしく呼びかけるこうした本が、もっとたくさんたくさん書かれることを切に希望します。
by sabasaba13 | 2007-12-26 06:12 | | Comments(0)
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