北海道編(5):小樽(04.9)

 レトロなビルの中にある喫茶店で、先程博物館で購入した小樽案内書を読み作戦をねりました。銭湯めぐりと啄木物件訪問に決定。トレーシー・ハイドと手を組んで歩きたいような手宮線廃線跡の遊歩道を抜けて、かつて小林多喜二が勤めていたビルを利用した「1・2・3ホテル」を見て、小樽運河へ。山ノ神から「しょぼいわよおおお。日本三大がっかりよおおお」とさんざん聞かされたので、全く期待していなかったのですが、結構いいじゃないですか。規模は大きくないですが、水面にその姿を映す赤煉瓦倉庫の佇まいは素敵でした。なお「日本三大○○一覧」という楽しいサイトを発見したので紹介しましょう。それによると、日本三大がっかり名所は「札幌時計台」「高知はりまや橋」、同率三位が「名古屋テレビ塔・京都タワー・那覇守礼門」でした。異議あり! 「はりまや橋・倉敷・仙台青葉城」でしょう。
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 北一ガラスと寿司屋と土産屋と観光客が蠢く堺町通りを早足で歩き抜け、小樽新聞社跡とオタルナイ運上屋跡を拝見して銭湯密集地帯の南小樽へ。
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 このあたりの街並みは気に入りました。古い建物をきちんと大事に使いこなしているという雰囲気があります。そして何と歩いて数分の距離に銭湯が三軒もありましたね。小町湯、鹿乃湯、潮ノ湯。中でも鹿乃湯は逸品。半円アーチとペディメント(三角破風)と縦長の窓を組み合わせたファサードのデザインは銭湯とは思えませぬ。日本三大銭湯にノミネートしましょう。[筆者注:門司の梅の湯東京の子宝湯]小町湯にある煉瓦造りの煙突も捨てがたいけど。少し離れたところにインターナショナル様式の旧山田湯もありました。
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 さて歩き疲れて一休みしたいなと思ったら、「はち」という喫茶店がありました。渡りに船、さっそく入って珈琲を所望。真空管アンプと銘器フォステクスFE-103を組み込んだ手製スピーカーが、バッハのパルティータを奏でています。うーん、マンダム。てびねりのカップ類もしぶいし、いいお店です。気合を入れなおし、小雨が降り出す中、港を見下ろせる水天宮へ。「悲しきは小樽の町よ 歌うことなき人々の声の荒さよ」という啄木の歌碑があります。彼は、騒然とした商業都市・小樽が気に入らなかったようですね。
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 聖公会という教会の前を通り、職人坂を通り過ぎ、旧山田湯・だるま湯をカメラにおさめ、啄木の下宿跡へ(現在は食堂「た志満」)。そして彼が勤めた小樽日報社跡を拝見。結局彼は二ヶ月ほどで小樽を去り、釧路に向います。
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 そして駅から船見坂をのぼり、あの男が住んでいた高級住宅街の富岡へ。この坂からの眺めは観光ポスターの写真に良く使われるそうで、なるほど、坂道、街並み、港、船、海が一望できる絶好のビューポイント。ハリー・ライムじゃないけれど、あの家々を二、三十軒つぶしても屁とも思わない心情は、この眺めによって育まれたのかもしれない。
 札幌への帰路は、海が眺められるバスを選択。車中で、明日の計画を考えました。函館への移動日ですが、夕張に行くか、札幌市内を見るか、室蘭によるか、迷いましたね。後ろの席で地元のおばさんが「明日は晴れそうだね」と話しているのを聞き、午前中に札幌市内、そして室蘭のチキウ岬灯台によってから函館に行くという強行軍を決意。そして夕食は楽しみにしていた秋刀魚の刺身です。地元発行のグルメ・ガイドで当たりをつけた「さっぽろっこ」という店に行こうと、すすきのの横断歩道を渡ろうとしたら、安岡力也を天日干しして油を抜いたような客引きが寄ってきて「ソープ行かない?」と誘ってきました。いや秋刀魚を食いにいくと断固として拒絶すると、彼曰く「その店はチェーン店だ、やめとけ。俺が旨い店を紹介してやる」 ぼったくり、暴力、バールのようなもの、身元不明の水死体という言葉が頭の中をグルングルンと回りましたね。しかし♪俺の眼を見ろ、何にも言うな♪というメロディが脳内で鳴り響き、一瞬にして理解しました。嗚呼、青魚が好きな人の眼だ。「同志よ」と頷きあって頬擦りし(嘘)、その店に連れていってもらいました。ご丁寧に「この人に、秋刀魚の刺身と炭火焼、鮭の白子の天ぷらねっ」と注文までしてくれて… 「小鉢」という店ですが、絶品でした。言葉では表現できない旨さですね、秋刀魚の刺身は。ふうっ。帰りにまた彼に出会ったので、親指をグッと突き出すと、彼もニッと微笑をかえしてくれました。そして私は、脇目もふらず、一目散に、まっすぐに、寄り道もせず、ホテルへと向ったのです。ほんとだよ。
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 本日の二枚は、小樽運河と船見坂です。
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by sabasaba13 | 2005-02-21 06:29 | 北海道 | Comments(2)
Commented by さっと at 2007-03-24 00:06 x
こんばんは。私も、少し前にふらりと小樽へ行ってきました。

オタルナイ運上屋跡は、わりと賑やかな通りにあるのに、振り返る観光客はいませんでした。あれだけ、保存活動にうるさい小樽市が、運上屋を復元していないとは・・。それも、少し残念でした。

それから、水天宮からの眺めがいまいちで、ガッカリでした。除雪されていない雪道をかきわけて辿りついたのに・・。
Commented by sabasaba13 at 2007-03-24 17:22
 こんばんは。運上屋を復元してもらえたら嬉しいですね、観光の目玉にはなりそうもありませんが。私が行った時も、水天宮のあたりは木々がおいしげって眺望をさえぎり、残念であったことを記憶しています。
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