「禁煙ファシズムと戦う」(小谷野敦・斎藤貴男・栗原裕一郎 ベスト新書99)読了。私、大の愛煙家でして、時々気管支の弱い山ノ神からお叱りを受けながらも禁煙する気は毛頭ありません。しかし煙の嫌いな方への配慮を忘れてはいけないと思い、家の中では換気扇の直下で吸う、街中では人混みの中では勿論半径3m以内に人がいれば吸わない、歩きながら吸う時には常に胸の前に煙草をキープする、吸殻は携帯灰皿かポケットに入れるという原則を守るようにしています。しかあし、最近の執拗な禁煙の強制には辟易しています。周りに誰もいない状況の路上でさえ、喫煙を禁じる条例が平気で決定される昨今、何かおかしいと思うようになってきました。こうした状況に対する、きわめて痛烈な批判を試みたのが本書です。快哉! 以下、引用します。
猖獗をきわめる昨今の禁煙運動の根源にあるのは、特定の集団を差別したいという心理である。現在の先進社会では、性別、人権などによって人を差別することは、たてまえ上とはいえ、許されていない。そこで、他人に害を与えるという理由のもとに、喫煙者を「汚い」ものと認定し、差別しようとしているのである。これは、かつての肺結核患者やハンセン氏病患者が受けた差別と、ほぼ同質のものだ。やや感情的すぎる言い方があるものも、うなずける内容です。自動車や飲酒(つけくわえれば食品に含まれる添加物等)に対する扱いとの差は、あまりにも公正さを欠くと思いますね。さらに喫煙と病気との関連性も完全に解明されているとは言い難い状況のようです。本書の最後に引用されているエンストローム氏(カリフォルニア大学)の研究では、環境中たばこ煙とたばこ関連疾病死亡率との間の因果関係を証明しないという結論が出ています。 ほとんどの喫煙者の方は迷惑をかけていることを重々承知の上で、身をすくめるようにして煙草を吸っているのではないかな。あまりにも過酷で理不尽な禁煙を国や自治体に求める動きには、確かにファシズム(国家は国民の社会的・文化的生活のあらゆる側面を支配すべきという思想)の匂いを感じます。そういえば、ナチス・ドイツでも国民に健康を義務づけ、禁煙運動を起こしていました。 本日の一枚は、日本専売公社のポスターです。 追記。昨日、りだーどんさんにロゴ画像の正体を見破られてしまいました。原則として、ばれたら新しいものにさしかえるようにしております。今度は難しいぞおおおおおお。 追記その二。エンストローム論文には問題があるという、あいさんのコメントがありました。今「ウィキペディア」で確認した限りでは、この論文はたばこ会社の関連組織から研究資金をもらい、また統計上の瑕疵があるなど、学会では疑問視されているとのことです。ご指摘を感謝します。
by sabasaba13
| 2008-01-27 06:00
| 本
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Comments(8)
おはようございます。
禁煙の波はすごいですね。けれど、昨夏に行った競馬場は違いました。おじさんたちが当たり前のように喫煙!公共(?)の場であんなに堂々とすえるところがあるとは・・。このご時世、別世界に迷い込んだかのようで、感動すら覚えました。 「禁煙」がブームとなれば「禁煙」一直線となる国民性。もうすこし、喫煙者に対する風当たりが柔かくなるといいですね。 追記。ロゴ画像の正体には驚きました。次回作を楽しみにしております。
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りだーどん
at 2008-01-27 11:30
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やった~!
次も見破るど~!o(^^o
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sabasaba13 at 2008-01-27 18:51
さっとさん、こんばんは。温かいお言葉、袖が濡れてしまいそうです。他人には絶対に迷惑をかけていないと天地神明・八百万の神・山ノ神に誓える状況なのに、吸ったら罰金をとるというのは行き過ぎだと思います。もっと危険な排出物・物質が山のようにあるのに…
核(原子力)発電所に対する風当たりがもっと厳しくなるよう切望します。
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sabasaba13 at 2008-01-27 19:17
りだーどんさん、こんばんは。次回は、腕によりをかけて頭に鉢巻をしめて難しいものを用意しました。八ヶ月は見破られないと自負しております。挑戦をお待ちしています。
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あい
at 2008-06-15 17:27
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こんにちは。
初コメで申し訳ないですが、あなたはなにもわかってないようです。 エンストローム論文というものがどういうものか調べればどういったものかわかりますよ。 あと、ナチスがやっていたから禁煙運動はファシズムと?それだったら過去にナチスが行っていた政策をやると全てファシズムとみなされるのですね。
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sabasaba13 at 2008-06-16 19:36
こんばんは、あいさん。前者の件ですが、今「ウィキペディア」で確認した限りでは、この論文はたばこ会社の関連組織から研究資金をもらい、また統計上の瑕疵があるなど、学会では疑問視されているとのことでした。さっそく追記としてその旨を記しておきます。ご指摘を感謝します。
後者の件ですが、それは明らかな誤読です。禁煙運動自体ではなく、その行政主導による遂行の仕方がファシズム的だというのが私の主張です。ファシズムにはいろいろな側面があると思いますが、その一つが“国民の健康を国家が管理し、無用/有害な存在を選別し差別し、場合によっては廃棄する体制”であると私は考えます。現今の喫煙者への執拗な攻撃は、このファシズム的状況に半歩足を踏み入れたものだというのが私の主張です。
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ネル
at 2008-10-21 19:16
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2006年のたばこ会社による詐欺事件裁判の判決で、エンストローム論文がたばこ会社による科学操作の証拠の一つとされたということは完全に無視ですねw
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sabasaba13 at 2008-10-22 18:35
こんばんは、ネルさん。文意がよくつかめないのですが、その事実を小生が知っていたと断定した上で触れなかったことへの批判、と受け取りました。回答は「知らなかった」です。
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自己紹介
東京在住。旅行と本と音楽とテニスと古い学校と灯台と近代化遺産と棚田と鯖と猫と火の見櫓と巨木を愛す。俳号は邪想庵。
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