北海道編(7):函館(04.9)

 本日は快晴。まずは青函連絡船記念館を見物。摩周丸を保存・展示してあります。そういえば、今年は洞爺丸が沈没してからちょうど五十年目にあたる年ですね。1954(昭和29年)9月26日22時43分、台風15号により湾内で沈没、死者・行方不明1200人弱という日本海難史上最悪の事故です。合掌。解説によると、他にも青函丸・北見丸・日高丸・十勝丸が沈みましたが、一隻だけ助かったのが大雪丸です。「南西の風のときは木古内に行け」という先代船長の言葉を信じ、冷静沈着な操船を行なったおかげとのこと。そして土方歳三最期の地碑へ。旧幕府軍と新政府軍の最後の戦いである箱館戦争(1868~69)に、土方率いる新撰組も合流し、ここ一本木の関門で銃弾にあたり倒れました。享年35歳。
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 そしてテクテクと歩いて駅前にもどり、朝市へ。見た瞬間に、こりゃ観光客向けのぼったくり市場で地元の人は来ない!と直感しました。立ち寄らずに二十間坂通りを港に向けて歩いていきましょう。
 土産屋がつまったはこだて明治館(旧函館郵便局)の前を通り、高田屋嘉兵衛資料館に到着。彼は、江戸後期の海運業者、蝦夷地(北海道)の物産を運ぶ北前船の船頭です。幕府がロシアの開国要求を拒否したことで、外交関係が険悪となり、ロシア船による襲撃事件が多発します。これに対して幕府はロシア軍人ゴロウニンを捕縛(彼はこの一連の事件に無関係)、その報復としてロシアは嘉兵衛を拉致します。彼は豪胆かつ沈着冷静な態度でロシア側の信頼をかちとり、交渉の仲介として尽力、自らの解放とゴロウニンの釈放送還に成功します。函館は、彼が支店を置き開発を進めた港、つまり函館という町の生みの親なんですね。ぐじゃぐじゃした見づらい展示でした。赤レンガ倉庫群(旧金森倉庫)の間を抜けて、函館北方歴史資料館へ。嘉兵衛の持ち船辰悦丸のTシャツを購入して、函館市文学館へ。啄木についての大変充実した展示がありました。それなのに来館者は私一人。見るに見かねたのか、学芸員の方が近づいて来ていろいろと解説をしてくれました。大逆事件の真相を世に伝えようと執筆した「A letter from prison」の現物を見ることができ、感激。なお啄木の妻、節子が通った質屋の建物が現存しているとのこと、さっそく教えてもらい、さらに近くに食事の美味しい店はないかとお訊ねしました。すると、作家の辻仁成がよくオムライスを食べにくるというラーメン屋があるとのこと。「来々軒」という店なのですが、行ってみたらあいにくのお休み。
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 このあたりの景観は素晴らしい。函館山の麓に並行して連なる何本もの坂道、振り返れば港と海、そして洒落た家並み。函館は津軽海峡から吹きつける強風のため、火災が多い街です。函館を愛した啄木が札幌へと移ったのは、1907(明治40)年の大火事で職場を失ったためですね。そのためか、防火を意識した銅板・石・煉瓦を使用した建物が多く、眼を楽しませてくれます。また日米和親条約(1854)でいち早く開港場となり、欧米の文化が流入したため、洋風を取り入れた建築も目に付きます。一階が和風、二階が下見板の洋風という家屋も多いですね。市立函館博物館郷土資料館(旧金森洋物店)、旧小林写真館、函館中華会館、啄木が勤めた弥生小学校(この学校の教師橘智惠子に彼は惚れたのですね。亀井勝一郎もここを卒業)をふらふらと見物。
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 そして「福々亭」で塩ラーメンを食べました。北方民族資料館で、アイヌやアリュート文化の懐の深さに唸り、基坂をのぼって函館市旧イギリス領事館へ。ペリーの銅像を見た後、坂のどんつきにある旧函館公会堂と旧北海道庁函館支庁舎を見物。旧公会堂はとにかく派手で、色は青と黄色、巨大なぺディメントが三つと徳俵に親指がかかっている悪趣味すれすれの建物。実は函館は在野の精神が横溢するところで、箱館戦争の時も新政府軍を嫌い、旧幕府軍を支援したそうです。1907年の上記の大火事の後、まず政府が支庁舎を再建しますが、相馬哲平をリーダーとする有力市民たちは寄付をもちより、支庁を見下ろす高い所にど派手で目立つ立派な公会堂を建設したのですね。その意気やよし。こんな愉快・痛快な景観はなかなかないですね。さぞや役人たちは、苦虫を噛み潰したような顔をしたでしょう。
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 本日の一枚は、赤レンガ倉庫群(旧金森倉庫)です。
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by sabasaba13 | 2005-02-23 05:59 | 北海道 | Comments(0)
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