最終日です。まずはタクシーをつかまえて、郊外にある笹流ダムへ直行。運転手さんに「お客さん、観光客じゃないよね」と言われました。1923(大正12年)につくられた上水用のダムです。節約のためにコンクリートの柱・梁を櫓のように組んだバットレス式というタイプです。修復されて往時の面影が消えたのが残念。そして車で大森浜へ。ここは啄木お気に入りの場所で、「砂山の砂に腹這い 初恋のいたみを遠くおもひ出づる日」をつくったところ彼の銅像がたてられています。そばにある「哀愁テーマパーク土方・啄木浪漫館」という愚劣なミュージアム(貧相な展示+新撰組人気による客引き)を見物して、徒歩で五稜郭へ。
五稜郭タワーにのぼって全体像を確認して、城内を散策。設計者である武田斐三郎の顕彰碑がありますが、彼の顔のレリーフに触ると頭が良くなるという言い伝えがあるそうです。なるほどテカテカに光っていました。
そしてここから市電で一気に市内中心部へ移動しました。函館市電はいいですねえ、古い車体、木張りの床のニスの匂い、チンチンというベルの音。世界三大市電にノミネートしましょう。(
リスボン・サンフランシスコ) 特に青柳町あたりから函館山を背景に、坂道をウンショウンショと上って来るキュートな姿は抱きしめたくなる! (良い子のみなさんはマネしないでね、轢かれるから) 十字街付近の分岐、レトロな建物、キノコのような操車塔と市電も絵になります。
さてさて小腹がへってきました。昼食は前述の「来々軒」。大きめザク切の玉葱に、けちらず卵上にぶちまけたケチャップ、私好みのオムライスでした。この店は内装がすごい。創建当時のままなのでしょうが、「大正浪漫で客を引こう」なぞという小賢しい色気は全くなし。「めんどくせえからこのままでいいや」という投げやりなオーラがただよっていました。入口にあった「ルービ☆ロポッサ」と描いてある鏡が欲しかった!
日本最古のコンクリート製電柱(防火のため)を見た後、遊覧船フリークの小生としてははずせない、函館港内40分クルーズを堪能。高田屋嘉兵衛屋敷跡をゲットし、まだ時間の余裕があるので後ろ髪を引かれながら十字街付近をウロウロしていたら、面白い街並みを発見。
廃墟寸前のホテルや、キッチュなデザインの商業ビル・雑居ビルが建ち並ぶ末広町です。最後まで楽しませてくれるやないか、函館。一君の気持がよくわかります。
というわけで、今回も落ち着きなく動き回った旅でした。雄渾な大自然もけっこうですが、私は人間の営みや、自然と人間の関わりにこだわります。なおモエレ沼公園が来年完成しそうなので、山ノ神に供奉しながら再訪するつもりです。また「イサム・ノグチ展」開催も近々予定されており、
牟礼の庭園美術館から「エナジー・ヴォイド」がやってくるそうです。楽しみです。
No profit grows where is no pleasure taken
「楽しくなければ、何事も身につきません」 W. Shakespeare
本日の一枚は、青柳町をウンショウンショと上って来る市電です。