駿河・遠江編(6):由比(07.11)

 本日も晴天、まずは由比へと向かいましょう。清水駅の二階からは、やや霞んではいるものの富士の全貌を眺めることができました。ここから由比駅まで約十分で到着です。東海道五十三次、品川から数えて十六番目の宿場町、旧東海道筋の雰囲気を堪能させてもらいましょう。まずは歌川広重の浮世絵「由比薩た嶺」でも描かれた、富士の眺望が素晴らしいという薩た峠に行ってみましょう。(「た」は土へんに垂という難字) 宿場町とは反対方向にあるので、タクシーで展望台まで行き、旧東海道をぶらぶら歩いて駅まで戻り、ここで自転車を借りて宿場町を見物するというプランにしました。歩くと一時間ほどかかるようですが、タクシーでは十分ほどで小さな駐車場のある展望所に到着。ほわああああ、絶景絶景。
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 タクシーの運転手は、気温がやや高く風がないので霞んでいるのが残念だねえとおっしゃってくれましたが、ここまで見えればよしとしましょう。急峻な崖ごしに見やる富嶽・箱根・伊豆半島、右手には太平洋の大海原、狭い平地部分を走る東海道本線・国道一号線・東名高速道路、たわわに実る蜜柑畑。いやはや眼福眼福。なおここには幸田文の文学碑がありました。「由比の家のある風景を見ると、その安らぎがあってほっとしたのだが、佇んで眺めていれば、ひとりでに家のうしろの傾斜面をみてしまう。草木のあるなんでもない山なのだ。だが、そこを見ていると、なにかは知らず、土よいつまでも平安であれ、と念じていた」 ん? よく見かける写真では、国道と高速道路がクロスしているのに、ここからはそう見えない。きょろきょろしていると、東海道自然歩道がこの先にあるようです。さっそく車の通れない細い遊歩道を歩いていくと、数分で小さな展望台に着きました。
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 なるほどここから撮影した写真だったのか。煙草をふかしながら、しばしこの見事な風景に見惚れてしまいました。詩人の金子光晴は「富士」という詩の中で「なんだ。糞面白くもない/あらひざらした浴衣のやうな/富士。」と言っておられましたが、まだその心境にはなれません。やはり美しい。氏のように、富士が象徴する日本という国家に、まだ私は完膚なきまでに痛めつけられていないということかもしれません。(これはご子息が徴兵された時の詩ですね) でも近々、この美しい山を見て私も「なんだ。糞面白くもない」と吐き出すような日が来そうな、戦慄をおびた予感にとらわれました。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2008-05-10 06:17 | 中部 | Comments(0)
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