「あいうえおちゃん」

 「あいうえおちゃん」(森絵都・文 荒井良二・絵 理論社)読了。なにやら山ノ神がクスクスと忍び笑いをしていたので、そっと背後から近づくとこの本を読んでいたところでした。
あきすに
あったら
あきらめな
 クスッ これはおもろいなあ。5・7という永遠のリズムの陰に隠れていますが、4・4・5というリズムもけっこうわれわれの身体になじんでいるものです。「驚き桃の木山椒の木、ブリキに狸に蓄音機」とかね。最初の文字を同じものにするという制約をあえて課したうえで、このリズムに乗って縦横無尽に言葉遊びをするのが本書です。世相に対する風刺(「そうりも/そろそろ/そだいごみ」「みんなを/みちびく/みのもんた」「りょうしん/りょうほう/りすとらちゅう」)、当たり前だけどそこはかとない可笑しさ(「りこんの/りゆうは/りこんれき」「なんでも/なげやり/なまけもの」)、意表をつく人物の意表をつく行動(「てくてく/であるく/てろりすと」「まほうの/まこちゃん/まわしげり」)、そしてナンセンス(「ひょうたん/ひとすじ/ひゃくねんめ」「ろじょうで/ろうばと/ろかびりー」)。「福田総理の政治生命もそろそろ終焉に近づきつつある」と言うよりも、シンプルな言葉とリズムで「総理もそろそろ粗大ゴミ」と言ったほうが臓腑を抉るような痛烈な一撃に思えますね。しかも緩頬するような笑いもこみあげてきます。
 この国のいかがわしくえげつない政治をやめさせるには、「もう真っ平御免だ」というわれわれの意思表示が絶対に必要です。それを合法的かつ明白な形で示すものは投票行動でありデモ・集会・パレードだと思いますが、後者の復建と再生が喫緊の課題ではないでしょうか。(私の持論ですが、学校において「効果的なデモの仕方」とか「人目を引くプラカードの書き方」という授業があってしかるべきです) その起爆剤として、この4・4・5のリズムによるスローガンはけっこう有効ではないかな。1958(昭和33)年、岸信介内閣が提出した警察官職務執行法改正案をつぶした国民運動に火をつけたスローガンは「デートもできない警職法」、ねっ、これも4・4・5でした。

 言葉のもつ不思議で魅惑的な力に、あらためて気づかせてくれた本です。一読の価値あり。さっそく私もつくってみました。
じゃぱんを
じごくへ
じみんとう

このくに
こわすの
こうめいとう

みんなで
みはろう
みんしゅとう

by sabasaba13 | 2008-05-21 06:06 | | Comments(0)
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