「あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書」

 「あなた自身の社会 スウェーデンの中学教科書」(新評論)はお勧めです。先日、皇太子誕生日の記者会見で、皇太子妃が下記のように述べました。

 つい最近、ある詩に出合いました。それは、ドロシー・ロー・ノルトというアメリカの家庭教育学者の作った「子ども」という詩で、スウェーデンの中学校の社会科の教科書に収録されております。

 「批判ばかりされた 子どもは 非難することを おぼえる 殴られて大きくなった 子どもは 力にたよることを おぼえる 笑いものにされた 子どもは ものを言わずにいることを おぼえる 皮肉にさらされた 子どもは 鈍い良心の もちぬしとなる しかし、激励をうけた 子どもは 自信をおぼえる 寛容にであった 子どもは 忍耐を おぼえる 賞賛をうけた 子どもは 評価することを おぼえる フェアプレーを経験した 子どもは 公正を おぼえる 友情を知る 子どもは 親切を おぼえる 安心を経験した 子どもは 信頼を おぼえる 可愛がられ 抱きしめられた 子どもは 世界中の愛情を 感じとることを おぼえる」

 これがきっかけで、この本の売れ行きが伸びているそうです。著名人が読んでいるからすぐ飛びつくという姿勢には疑問をもちますが、今回は例外。是非多くの人たちに飛びついて欲しい。以前この本を読んで感銘を受けて以来、周囲の人々に推薦しまくっております。もちろんこの詩も良いのですが、もっと素晴らしいのが、スウェーデンという国の教育に対する姿勢です。1994年のスェーデン文部省「学習指導要領の概要」には、学校の任務は「生徒に、将来を築くという困難な事業への楽観的な展望を与えること」とあるそうです。五臓六腑にしみわたる言葉ですね。だから教科書も、社会の仕組みの建前・きれいごとを受験用に羅列するようなものとは全く違います。社会の現状(犯罪、同性愛、麻薬…)を真っ向から取り上げ、子供たちが将来どうやってそれに立ち向かってゆけばいいのかを伝えようとしています。社会の一員として、社会を築き、担い、そしてより良く変えていく、そうした市民になってほしいという思いがビシビシ感じられます。ただ「国を愛せ、国を愛せ」とストーカーのようにつきまとうどこかの国々とは、志が違いますね。例えば…

 生徒たちはみじめな給食に真剣に立ち向かうことにしました。数回のクラス委員会での討議の後、生徒たちは三つの重要項目について(自治体に)要求を提出することにしました。①給食への予算配分を二倍にすること。②民主的な投票で決まったお好みの料理トップ20―私たちが食べたいのはこれだ。③使い捨て食器類の全廃。

課題
 生徒たちの給食改善のための行動について、あなたの意見はどうですか。それは緊急の問題ですか。生徒達は理性的に行動しましたか。あなたなら、何か他の方法を取ったのではないでしょうか。これに引き続いて何をしたらいいでしょうか。あなたには学校の予算編成に参加してこうしたいということがありますか。討論しましょう。

 というわけで、もしこの本がベスト・セラーになれば確実に日本も良い方に変わると思います。そういう意味で、もし私が有力な政治家・官僚・財界のメンバーだったら、この本を焚書リスト・有害図書リストの中の筆頭に加えますね。他の焚書リストとしては、「サイキス・タスク」(フレーザー 岩波文庫 絶版) 「億万長者はハリウッドを殺す」(広瀬隆 講談社 絶版) 「安保条約の成立」(豊下楢彦 岩波新書 品切れ) 「御前会議」(大江志乃夫 中公新書 絶版) 「無境界の人」(森巣博 集英社 品切れ) 「絶望の精神史」(金子光晴 講談社文芸文庫) 「河上肇評論集」(岩波文庫 絶版) 「日本/権力構造の謎」(ウォルフレン 早川書房) 「公私」(溝口雄三 三省堂)を入れるかな。おおっ、絶版/品切れ率は66%!
by sabasaba13 | 2005-03-05 16:06 | | Comments(0)
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