2011年 05月 28日 ( 1 )

熊野古道編(34):楠の久保旅籠跡(10.3)

 やがて苔におおわれ朽ち果てた石垣を目にするようになりますが、かつてこのあたりに人家や旅籠があったのでしょう。「南無阿弥陀仏」と刻まれた巨石もありました。解説板には「楠の久保旅籠跡」と記してあります。江戸時代には十数軒旅籠があり、たいへんにぎわっていたそうです。晴れていればここから昨日立ち寄った小雲取越の桜茶屋が見え、そこを指差し、あそこまで宿がないからここで泊まるようにと客引きをしたそうです。18世紀の参詣者の日記には、野菜を植えても猿や鹿に食べられてしまうので、干ワラビ以外には菜や大根の類はないと記されているとのこと。
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 のぼり坂はさらに続き、雨もやむ気配がありません。霧にかすむ水墨画のような景色の中を歩いていると、ときどき石仏に出会えます。ああ誰かが真摯な参詣者や私のような風来坊のために、何かを祈ってつくってくれたのだなと思うと、すこし灯が点ったように心が暖かくなります。濡れた石畳に慣れてきたのか、周囲を眺める余裕もでてきました。こうしてみると、雨の熊野古道もなかなかよいものですね。しっとりとした空気、雨に光る石畳、果てしなく続くかのような道、霧にかすむ杉木立、そして濃淡の墨絵の中でそこだけ彩色したかのような苔の緑。「引かれ者の小唄」と言われればそれまでですが、小雨が降ってくれてよかったと思います。自然は、晴れ・曇り・雨、春夏秋冬、時と天候によって千変万化の表情を見せてくれます。

 本日の五枚です。
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by sabasaba13 | 2011-05-28 07:25 | 近畿 | Comments(0)