2017年 08月 28日 ( 1 )

パリ・マグナム写真展

c0051620_6242651.jpg 先日、山ノ神と京都文化博物館で「パリ・マグナム写真展」を見てきました。「なぜ京都で?」と思われる方のために、話せば長いことながら説明いたします。先日、はじめて祇園祭を見てきたのですが、その際に参考としたのが『祇園祭の愉しみ』(芳賀直子 PHP)です。その中で紹介されていたのが大極殿本舗六角店の甘味処「栖園」の提供する美味しそうなスイーツ「琥珀流し」。宵山の日に寄ったところ、やはり長蛇の列でした。しかし名簿に名前を書いておけば順番が過ぎても優先して案内されるというでした。さあどこで時間をつぶすか、その時にすぐ近くに京都文化博物館があり「パリ・マグナム写真展」が開催されていました。しかし船岡温泉でひとっ風呂浴びて彫り物とマジョリカ・タイルを拝見することに決していたので、こちらはカット。そして銭湯で汗を流して「栖園」へ戻ると、長い行列にも拘らずすぐ席に通されて「琥珀流し」を楽しめた次第です。上質の寒天ゼリーにペパーミントのシロップ、舌をくすぐる官能的な触感と爽やかな香り、これは病みつきになりそう。なおこのシロップは月替り、八月には生姜味の冷やし飴。実は、五山送り火にも行く予定でしたので、ぜひ再訪しようと二人で誓い合いました。
 そして五山送り火の当日、午後四時半ごろに「栖園」に行くとやはり長蛇の列、しかも午後五時まで入店ということでした。うーむ、三十分か… とりあえず名簿に名前を書いて、「パリ・マグナム写真展」を鑑賞、三十分弱で鑑賞が終われば「栖園」へ、展覧会が面白ければキャンセルしてそのまま鑑賞を続行、という結論に達しました。結局、写真にひきこまれて「琥珀流し」はキャンセル、再訪を期すことになったわけです。
 長口舌で申し訳ない、何が言いたいかというと、この展覧会がおもしろかったということと、「琥珀流し」は美味しいということです。

 まずは「マグナム」について、博物館HPに掲載されていたサマリーを転記します。
 1947年、ロバート・キャパ、アンリ・カルティエ=ブレッソン、ジョージ・ロジャー、デビッド・シーモアによって「写真家自身によってその権利と自由を守り、主張すること」を目的として写真家集団・マグナムは結成されました。以後、マグナムは20世紀写真史に大きな足跡を残す多くの写真家を輩出し、世界最高の写真家集団として今も常に地球規模で新しい写真表現を発信し続けています。
 本展は、2014年12月から翌年4月までパリ市庁舎で開催され、大きな反響を呼んだ展覧会の海外巡回展として企画。マグナム・フォト設立70周年にあたり、60万点に及ぶ所属写真家の作品の中から、パリをテーマにした作品131点を選び展観するものです。
 芸術の都・パリは多くの歴史的事件の舞台でもあり、かつ、写真術発明以来、常に「写真の首都」でもありました。20世紀の激動を最前線で見つめ続け、現代においても現在進行形の歴史をとらえ続けるマグナムの写真家たちが提示する豊穣なイメージは、都市とそこに生きる人々の歴史にとどまらず、写真表現の豊かさをも我々に提示してくれると同時に、世界を発見する驚きに満ちた写真家たちの視線を追体験させてくれます。
 第一部は「マグナム・ビフォア・マグナム 1932-1944」。マグナム設立以前に撮影されたロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソンの写真が中心です。水たまりを跳び越す男とその影、ブレッソンの有名な作品「サン・ラザール駅」(1932)を見ることができました。そしてナチス・ドイツによるパリ占領と傀儡政権の樹立、それに対するレジスタンスとパリ解放を記録した数々の写真も印象的でした。
 第二部は「復興の時代 1945-1959」。戦争は終結しましたが、荒廃したパリで、明るくたくましく、あるいは苦難に打ちひしがれて生きる人びとの姿がカメラにとらえられています。ポスターに採用された写真は、ロバート・キャパの「凱旋門」(1952)です。
 第三部は「スウィンギング・シックスティーズ 1960-1969」。社会に対する若者たちの怒りが爆発した「五月革命」をとらえた写真が心に残りました。投石やバリケードのためにはがされた歩道の敷石、壁をうめつくす政治的主張をこめたポスターやビラ、そして若者たちの怒りと不安に満ちた、しかし真摯な表情。この出来事を歴史にとどめようとするマグナムの写真家たちの気持ちあが、ビシビシと伝わってきます。
 第四部は「多様化の時代へ 1970-1989」。社会秩序の回復を求める声が高まる一方、慣習からの脱却を求める動きも活性化します。常識や慣習を疑い、人間についての考究を続けた思想家たち、ジャン・ポール・サルトル、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、ミシェル・フーコーたちのポートレートが印象的でした。
 第五部は「解体の時代 1990-2014」。マグナムの写真家たちは、現在のフランスが抱える諸問題を四角いフレームに切り取り記録として残すことを継続します。移民・難民問題、あいつぐテロリズム、そして極右勢力の台頭とマクロン候補の勝利。とくに目を引き付けられたのが、パリ郊外の集合住宅に押し込められた移民たちの様子や暮らしを撮った写真です。絶望、諦め、怒り、不安、微かな希望、その表情やしぐさからさまざまな感情が伝わってきますが、テロリズムが蔓延する理由の一端を雄弁に物語っているように思えました。

 というわけで、たいへん充実した、心に残る写真展でした。写真家たちが切り取った現実の一部を、それにきちんと向き合い力を尽くして読み解くのが私たちの仕事なのだと思います。そして、過去に世界で何が起こって、現在の世界で何が起きているのか、人間がどういう状況に置かれているのかに思いを馳せる。そうすれば「DAYS JAPAN」の表紙に掲げられた言葉のように、「1枚の写真が国家を動かすこともある」かもしれません。あらためてフォト・ジャーナリズムに期待します。
 また錚々たる手練れのさまざまな写真を見て、構図の重要性をあらためて痛感しました。ちょっとした工夫で、安定感・緊迫感・スピード感などを表現できるのですね。アマチュア・カメラマンのはしくれとして、たいへん参考になりました。お土産のポストカードとして、ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」、チェ・ゲバラ、チャールズ・ミンガス、マイルス・デイヴィスのポートレートを購入。

 マグナムの詳細な歴史と現状、所属した写真家のプロフィールと作品などについて知りたい方は、マグナム・フォト東京のサイトがたいへん参考になります。

 追記。以前に拙ブログで紹介したジョセフ・クーデルカの写真もありました。彼もマグナムの一員だったのですね。
by sabasaba13 | 2017-08-28 06:25 | 美術 | Comments(0)