2017年 10月 20日 ( 1 )

近江編(41):水口(15.3)

 それでは旧水口図書館に向かいましょう。途中に、「名物かんぴょう」というポスターがありました。歌川広重の「東海道五十三次」に描かれてから、全国的に有名になったそうです。
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 踏切を渡って地図を頼りに歩いていくと、まるで貴族の別荘のように瀟洒な洋館がありました。解説板を転記します。
 この建物は昭和3年(1928)水口町出身の実業家井上好三郎氏の寄付により、水口町立水口図書館として建てられたもので、設計は滋賀県ゆかりのヴォーリズ建築事務所である。
 南東側を正面としその右隅に玄関を、右側側面に通用口を設け、一階は小学生用閲覧室と書庫、二階は成人用閲覧室兼会議室に利用された。構造は主要な躯体を鉄筋コンクリートで構成し、壁は煉瓦積みという手法をとっている。玄関の両脇にはトスカナ式の円柱を配し、その上には壁を半円アーチ状にくぼめて書物と燭台、オリーブなどのレリーフを施し図書館らしさを表現する。
 窓は縦型長方形で両開きガラス窓を配置している。また玄関上方の二階窓には小振りのバルコニーを設けアクセントとする。特に塔屋の上に置かれたランタンは、この建物のイメージに大きく寄与している。全体に装飾は抑えられているが上記のようなアクセントや太めの軒蛇腹が立面を引き締めており、戦前最盛期のヴォーリズらしさにあふれた珠玉の作品と高く評価される。
 宿場町の古い町並みに面して突如現れたモダンな建物は、当時の人々をあっと言わせ、知の館としてまたランドマークとして多くの人々に親しまれ、昭和45年の図書館移転後も教科書っ選定のための施設として利用された。
 その後老朽化が進む一方で、近代化遺産に対する市民の関心も高まり、平成13年には国の登録有形文化財となり、平成15年にはランタンの復原や構造補強など保存整備工事が行われ、ふたたび活用の道が開かれた。
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 "知の館"か…素敵な表現ですね。地元の方々の、この図書館に対する思い入れの深さを感じます。思えば、私も少年時代には図書館にたいへんお世話になりました。時は1970年代、携帯電話もスマートフォンもコンビニエンスストアもインターネットもテレビゲームもカラオケもディズニーランドもない時代でした。もちろんたいしたお金も持っておらず、あるのは時間だけ。内気な少年をなんの留保もなく受け入れてくれたのが区立図書館でした。人気のない書庫の片隅にある小さな窓から中学校のプールで泳ぐ女子生徒を覗…もといっ、座り込んで恐竜図鑑や「ドリトル先生」シリーズや「ゆかいなホーマーくん」など手当たり次第に本を読み耽った至福のひと時。もし私に知的好奇心らしきものがあるとすれば、それは間違いなく図書館によって育まれたものです。あらためて感謝の意を込めて、「ありがとうございました」と言いたいと思います。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-10-20 06:28 | 近畿 | Comments(0)