2017年 10月 31日 ( 1 )

近江編(44):水口(15.3)

 なお少し離れたところにある大池寺には、小堀遠州作と伝えられる蓬莱庭園があるそうですが、泣いて馬謖を斬る、時間の関係で省略しました。列車が来るまで少々時間があったので、水口石橋駅近くの「ポエム」で珈琲をいただいて一休み。そして駅に行きホームで待っていると…
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 何と白黒で塗られたパトカー仕様が入線してきました。これは魂消た日和下駄。こういうどうでもいいことを調べる時には、ほんとうにインターネットは便利です。今、調べてみると、滋賀県警が春の全国交通安全運動の一環で近江鉄道に依頼して走らせている「パトカー電車」だそうです。車内の天井には婦人警官の写真がべたべた貼ってありましたが、これは近江八幡市出身で、滋賀県交通安全ふるさと大使になっているAKB48のメンバー田名部生来氏だそうです。この手の金太郎飴的素人娘集団にはまったく食指が動かないので、どうでもいいことですが。
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 この電車には悪意はないと思いますが、最近、警察の影が日常生活に静かに忍び込んでいるようで不気味さを感じています。先日、大きなスポーツバッグを背負って自転車に乗っていただけで警官に職務質問をされたこともありました。杞憂だと…いや、違いますね。『共謀罪の何が問題か』(岩波ブックレット966)の中で、髙山佳奈子氏がこう書いておられました。
 このように、テロを中心とする危険な事態には、国際条約や決議、またそれらに対応する国内立法や独自の国内法によって、すでに対応可能な体制が整っています。そして、法案の内容自体に、テロ対策が規定されていません。
 こんな奇怪な法案を、なぜ、与党は、虚偽の看板を掲げて国民をだましてまで強行しようとするのでしょうか。…ここでは、「犯罪が減って仕事のなくなった警察が権限を保持するため」という理由を書いておきましょう。(p.40~1)

 軽微な道路交通法違反の摘発が「ねずみ捕り」と批判的に呼ばれることがありますが、それに似た状況が、より重い処分を伴って、いろいろなところで起こっています。共謀罪規定を導入すれば、警察の取締権限の範囲は大幅に拡大します。本来必要のない処罰規定をわざわざ作ることにより、犯罪でなかったものを犯罪と呼び、警察の実績を上げる効果がもたらされるのです。(p.43)
 髙山氏によると、現在、犯罪の認知件数は毎年大幅に減少し、戦後最低記録を更新中です。例えば、2002年における刑法犯の認知件数は約285万件、2015年のそれは約110万件。その一方で、同じ期間に警察職員の数は約2万人増加しているそうです(p.41)。警察組織の利権を守るためには、仕事を増やす必要があります。そのために、今まで摘発の対象になっていなかった行為を摘発する。「共謀罪」法案はそのための布石でしょう。もう一つは、"テロの脅威"など人びとの不安を煽り、それを燃料として警察組織の必要性と拡充を正当化する。旅先の辺鄙(失礼)な地で、「テロに注意」というポスターをよく見かけるようになりました。甲府駅前のバス停紀州鉄道西御坊駅静岡県立美術館のバス停筑後吉井駅別所線上田駅真岡鐡道車内山陰本線宍道駅などなど、写真を見ていただければわかるように「こんなところで殺傷行為をおこなうテロリストがいるわけないだろ」と半畳を入れたくなるような場所にすらです。もし仮にテロの危険が高まったとすれば、髙山氏が言うように、それは安保法制が強行されたことにより、日本が「アメリカと一緒に武力を行使する国」と見られて、イスラム過激派から敵視されるようになったからでしょう(p.31)。あるいはもっと高所より見れば、『世界正義論』(筑摩選書)の中で井上達夫氏が述べられている分析も参考になります。
 節度ある階層社会における宗教的差別や市民的政治的人権侵害にリベラルな先進社会が目をつぶる代わりに、後者の世界分配正義侵犯に対する追及を棚上げするという取引は、階層制社会にとっても、リベラルな社会にとっても、「おいしい取引」であろう。しかし、このような二つの不正黙認を交換する政治的妥協は、仮に、国際政治秩序の安定性を実現しえたとしても、それは不正の構造化による安定であり、正義の名を冠することは許されない。節度ある階層社会の柔和な外観をもった差別や政治的抑圧に晒される人々や、豊かな先進諸国の冷酷な無視により、基本的必要充足を阻まれたまま放置される人々など、この政治的取引によって黙殺され不可視化される人々が、忍従を拒否し、怒りをテロその他の形で暴力的に爆発させる可能性は常に伏在しており、かかる「倫理的時限爆弾」を抱えた政治的妥協は、長期的視点から見れば、安定性を達成することもできないだろう。(p.192)
 私なりに言い換えれば、いわゆる先進国が、後進的な専制国家から富を搾取する見返りに、当該国内における差別や抑圧を黙認すれば、被害者たる民衆がその怒りを暴力的に爆発させる可能性があるということでしょう。日本がそうした行為に加担しているのであれば、テロの攻撃対象となる可能性も強くなります。

 なお同書は、"世界正義"について考究した重厚な一冊で、一読、たいへん勉強になりました。例えば、下記の一文など、安倍上等兵に、熨斗をつけて額縁に入れてクール超速宅急便でお送りしたいものです。
 表現の自由・集会結社の自由・参政権などのいわゆる「市民的政治的人権」は、政府が国民の「公共のもの(res publica)」たる国家を私物化せず、国家の主権をその存在理由国民の人権保障のために行使しているか否かを国民がチェックするための人権であるがゆえに、最低限にして最優先の正統性承認条件をなす。これらは他の人権と並列される人権の一部というより、人権保障を確保するための人権であり、政府が人権保障の責務と権能を国民によって受託されていると言えるための、そしてそれゆえにこそ政府が国際特権を享受する資格があると言えるための前提条件である。(p.158)
 なるほど、安倍でんでん内閣が、特定秘密法案や共謀罪法案を成立させたのは、国家を私物化していることを国民にチェックさせないための措置なのですね。よくわかります。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2017-10-31 06:24 | 近畿 | Comments(0)