2017年 11月 14日 ( 1 )

関東大震災と虐殺 35

 9月11日、火曜日。大江志乃夫氏によると前日の9月10日までに関東戒厳司令官の指揮下に入り戒厳服務についた軍隊は、歩兵57大隊、騎兵22中隊、砲兵34中隊、工兵47中隊、鉄道14中隊、電信13中隊など兵員約5万人に達していました。この大兵力が、恣意的な無制限の人権抑圧権限を与えられ、「広ク兵力ヲ分散配置シテ、昼夜連続劇務ニ従事シ」、権限行使に関する判断が血気の初級士官や下士官に委ねられたのですから、至る処での朝鮮人の大量虐殺をはじめ、中国人、社会主義者の虐殺事件をひき起こしたことは、必然であったと、氏は指摘されています。やはりこうした事件が発生した要因は、戒厳宣告それ自体のなかに準備されていたのですね。(②p.137~8)

 そしてこの9月11日、臨時震災救護事務局警備部司法委員会は、朝鮮人を虐殺した自警団の処理方針を次のように定めました。
一、今回ノ変災ニ際シ行ワレタル傷害事件ハ司法上之ヲ放任スルヲ許サズ、之ヲ糾弾スルノ必要ナルハ閣議ニ於テ決定セル処ナリ然レドモ情状酌量スベキ点少カラザルヲ以テ騒擾ニ加ワリタル全員ヲ検挙スルコトナク検挙ノ範囲ヲ顕著ナルモノノミニ限定スルコト
二、警察権ニ犯行ノ実アルモノノ検挙ハ厳正ナルベキコト
三、検挙ノ時機ニ就テハ慎重ニ定ムルヲ要シ現今ハ人心安定セザルヲ以テ直ニ着手スルコトナク唯証拠ノ保全ニ力メ検挙ノ開始ニ就テハ検事ハ司法省ノ指揮ヲ待チ行ウコト
四、検挙ノ時機ハ各地方ノ情況ニヨリ異ナルベキモ東京及横浜ヲ除キ其他ノ地方ハ同時一斉ニ始ルコト
五、検挙ニ対スル準備トシテ警察力ノ恢復ノ為警察ニ保護中ノ鮮人ヲ其他ニ取纏メ保護スル方法ヲ取ルコト
六、鮮人等ノ不逞行為ニ就テモ厳正ナル捜査検察ヲ行ウコト (『東京震災録』)
 官憲が朝鮮人暴動の誤認情報を流したのですから、自警団全員を検挙すれば、彼らから強い反発が起こることは必定です。そこで「顕著な者」のみを検挙することにしたのである。しかし警察に収容されている朝鮮人を虐殺するために、警察署や警察官を襲撃した者は厳しく処罰するということです。朝鮮人殺害は大目に見るが、警察への反抗は許さないという姿勢ですね。また、検挙の時期は、司法省の指揮を待て、あるいは一斉に始めろ、ということはそれまでに証拠を湮滅しておけ、あるいは口裏を合わせておけ、ということでしょうか。さらに朝鮮人の「不逞行為」についても厳正に捜査しろということは、官憲の責任を免れるために、朝鮮人による暴動や放火が事実であってほしいという願望ですね。
 この方針のもと、9月中旬ごろより自警団の検挙が始まりました。
by sabasaba13 | 2017-11-14 06:31 | 関東大震災と虐殺 | Comments(0)