カテゴリ:京都( 232 )

京都観桜編(5):天竜寺(15.3)

 車折神社駅から京福電車(嵐電)に乗って、終点の嵐山へ。天竜寺の桜はどんなもんでしょうか、ちょっと寄ってみましょう。塔頭の三秀院に「特別拝観 動乱の幕末 長州藩士の刀傷」という看板がありました。弾痕・刀傷マニアとしては立ち寄らないわけにはいきません。拝観料を払って中に入ると、ふたつの柱に刀傷がありました。禁門の変(蛤御門の変)の際に、天龍寺に陣を構えた長州藩士が血気にはやり試し切りしたものと伝えられるそうです。
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 そして天竜寺へ、言わずと知れた京都五山の第一。1339 (延元4・暦応2)年、足利尊氏・直義兄弟が夢窓疎石の勧めによって、後醍醐天皇の冥福を祈るために創建したお寺さんです。広大な曹源池と豪快な石組を愛でて、百花苑の方へいくと全体的に七分咲きでしたが、ところどころで綺麗に咲き誇っていました。他にもいろいろな花が咲いていたのですが、情けないことに名前がわかりません。こういう時に、花に詳しい山ノ神がいればなあ。
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 天竜寺の近くにある湯豆腐「嵯峨野」にもきれいな桜があるという情報を入手したので、さっそく行ってみました。おおっ素晴らしい。あまり観光客を見かけない落ち着いた雰囲気の路地に、数本の桜が咲き誇っていました。しつらえられた石庭ともよくマッチしています。ここは穴場ですね。なおこちらには人間魚雷回天10型の石碑があり、「呉市の博物館に寄贈」と記されていました。どういう由来があるのでしょう? ご教示を乞う。
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 それではJR嵯峨嵐山駅へと参りましょう。途中で、塀越しに見事な桜の大木があったので、正面にまわると天竜寺の塔頭・等観院というお寺さんでした。しかし残念なことに拝観はできません、惜しいなあ。
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 本日の四枚、上から天竜寺、湯豆腐「嵯峨野」(二枚)、等観院です。
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by sabasaba13 | 2018-02-08 06:35 | 京都 | Comments(0)

京都観桜編(4):車折神社(15.3)

 そして歩いて地下鉄東西線小野駅へ、さすがにお腹がへったのでこのあたりで昼食をとりましょう。ところが意外と駅周辺に飲食店がありません。手打ちそば「辻さん」は残念ながら定休日、致し方ない、本意ではないのですが利潤を中央資本に吸い上げられるチェーン店「なか卯」に入りましょう。とりたててコメントのしようがない牛丼をいただきながら、なんで「なか卯」という店名にしたのかな、と疑問に思いました。
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 善は急げ、今インターネットで「なか卯」のサイトを調べてみると、判明しました。転記します。
 なか卯は1969年6月、大阪府茨木市に手作りうどんの店を創業いたしました。社名の由来は創業者名の一字である「なか」と、「うどん屋」の「う」を同音の縁起文字「卯」に変え『なか卯』と定めました。「卯」の文字の縁起とは、この文字が観音様の厨子(両面扉)のような形をしていて、有難く、縁起が良いという点にあります。また、干支の「卯」のうさぎがピョンピョン飛び跳ねるように、会社が大きく跳躍して繁盛するよう願いも込められており、これが 『なか卯』という屋号の由来となっております。
 なるほど。それでは車折(くるまざき)神社へ向かいましょう。小野駅から地下鉄東西線に乗って太秦天神川へ、京福電車(嵐電)に乗り換えて車折神社駅に着きました。駅のすぐ前にある小さな神社が車折神社、少々変わったお名前ですがその由来を紹介しましょう。祭神は平安時代後期の儒学者・清原頼業(よりなり)で、後嵯峨天皇が嵐山の大堰川に遊幸した際に、この社前で牛車の轅(ながえ)が折れたので「車折大明神」の神号を授け「正一位」を贈ったことから「車折神社」と称することになったそうです。神社のサイトによると、学業成就・試験合格・商売繁昌・会社隆昌・金運向上・良縁成就・恋愛成就・厄除け・交通安全というご利益があるそうです。
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 ま、それはさておき、お目当てはパワー・スポットではなく、日本画家・冨田溪仙が奉納した「溪仙(けいせん)桜」です。参道をすこし歩くと、小振りですが満開の枝垂桜がありました。これが「溪仙桜」ですね。迂闊にもさきほどインターネットで調べてわかったのですが、ここ車折神社は富岡鉄斎が1888(明治21)年から1893(明治26)年まで宮司を務めていたのですね。そのためこちらには鉄斎の作品が約百余点伝わっているそうです。また、境内には鉄斎の筆による裏参道入口の社号標や本殿の扁額、表参道脇の車折神社碑があり、さらに鉄斎が生前に用いた筆を2000本以上納めた筆塚もあるとのことです。冨田溪仙は鉄斎に私淑していたので、この桜を奉納したのですね。鉄斎の揮毫を拝見するために、ぜひ再訪を期しましょう。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2018-02-07 06:38 | 京都 | Comments(0)

京都観桜編(3):大石神社・勧修寺(15.3)

 途中に「ぼく、京都のおまわりさんになるねん」という、京都府警察官募集のポスターがありました。いやあ雅ですねえ、肉汁にあふれた大阪府警官募集ポスター「草食系より大阪府警。」とはえらい違いです。おっいつも何となく気になる「京都警察犬学校」の看板も健在でした。
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 あちらこちらで咲き誇る桜を愛でながらのんびりと歩き、随心院に着きました。
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 このあたりは小野の里といい、小野小町に関する由緒を売り物にしているお寺さんですね。もしや桜の穴場かなとほのかに期待したのですが、あまりありません。梅は満開でしたが。グラデーションに富んだ見事な大杉苔のある池泉庭園を、心静かに拝見。
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 そして流しのタクシーをつかまえて大石神社に向かいました。なお後日わかったのですが、醍醐寺とバス路線で結ばれているので、バスで行くこともできます。十分ほどで到着、タクシーには待っていてもらいましょう。こちらは大石内蔵助の隠棲地に1935年に建てられた新しい神社です。以前に訪れたことがあるのですが、「大石桜」と名付けられた枝垂桜の大木があります。参道のソメイヨシノ並木は、まだ五分咲きでした。咲き揃ったらさぞや見事でしょう。そしてお目当ての「大石桜」は、並べてかけられた提灯の列を抱きかかえるように咲き誇っていました。観光客の姿もほとんどなく、落ち着いて桜を愛でることができます。ここは穴場、お薦めです。
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 待機していただいたタクシーに乗り込み、勧修寺に行っていただきました。真言宗山階派の大本山で、皇室との関係も深い門跡寺院です。桜の数は40本ほどでそれほど多くはありませんが、観音堂をとりまくように咲く桜が氷室の池にきれいに映って風情がありました。水戸光圀より寄進されたと伝わる「勧修寺型灯篭」や、亀甲垣、さざれ石に臥竜の老梅など、ちょっとした見どころも満載です。
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 またそこいらじゅうにある能書きや御託も、けっこう楽しめます。"「サクラ千本・ウメ1リン」と申します。サクラの花は沢山咲いているのが美しい ウメの花は寒風の中でたった1リン咲いて居るのが美しい (=茶道の心得)"、"ウルシです さわってはいけません"、"このシバフにてご休息下さい この先出口に至ります"、"希望に起き 愉快に働き 感謝に眠る"などなど。
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 極めつけは、氷室の池をめぐる小道の入り口に掲げられた"この先行かれるのはご自由ですが大いに危険"という札。なんだなんだ、蝮が出るのか、スズメバチの巣があるのか、落とし穴が掘られているのか、自民党京都支部があるのか…実は以前に探訪して確認済み、何も危険はありません。でも放射性廃棄物の最終処分場が密かに作られているかもしれません、再度歩いてみましたが…やはり何もありません。秘すれば花ということにしておきましょう。
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 本日の四枚、上二枚が大石桜、下二枚が勧修寺です。
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by sabasaba13 | 2018-02-06 06:36 | 京都 | Comments(0)

京都観桜編(2):醍醐寺(15.3)

 そして午前十時半ころ、京都駅に到着。1598(慶長3)年、豊臣秀吉がその最晩年に醍醐寺三宝院裏の山麓において催した花見の宴にあやかり、まずは醍醐の花見と洒落込みますか。琵琶湖線に乗り換えて山科駅へ、駅前からバスに乗って醍醐寺に着きました。花見客で混みあっていましたがこれは想定内。満開の桜と青空があれば、多少の混雑は耐え忍べます。
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 まずは寺宝を収蔵する秘宝…ではなく霊宝館へ、こちらには樹齢約200年と言われる枝垂桜の古木があります。おっとその前に入場料、もとい拝観料を払わねばなりません。三宝院・霊宝館・伽藍の共通拝観料ですが、通常は800円、桜の春期と紅葉の秋期には1500円となります。うーむ、需要と供給の法則ですね、いたしかたない。大枚1500円を支払って中に入ると、霊宝館の敷地内には数多の枝垂桜が咲き誇っていました。その中で見事な枝振りで周囲を圧していたのが、樹齢約200年の古木です。以前にも見たのですが、今回はほぼ満開、これは素晴らしい。
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 そして三宝院へ。玄関脇には見事な大紅枝垂桜が、ここを先途と咲き誇っていました。表書院は、寝殿造の様式を伝える桃山期の建築、その前面には「醍醐の花見」に際して秀吉が設計したといわれる池泉庭園がひろがっています。しかし写真撮影は禁止。なぜ庭園の写真を撮れないのか、納得できませんね。奥宸殿には、修学院離宮の「霞棚」、桂離宮の「桂棚」とともに「天下の三大名棚」と称される「醍醐棚」があるのですが、残念ながら非公開です。
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 桃山時代の雰囲気を今に伝える唐門(勅使門)を撮影して、伽藍を散策。それでは随心院へと歩いて参りましょう。
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 本日の六枚です。
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by sabasaba13 | 2018-02-04 07:36 | 京都 | Comments(0)

京都観桜編(1):前口上(15.3)

 あーさぶい。連日の心が折れそうな寒さに呻吟していますが、冬来たりなば春遠からじ、もうすこし我慢すれば桜の季節がやってきます。実は三年前の2015年3月に、京都の桜を見に一人でふらりと出かけたのですが、その時の桜が殊の外見事でした。そこで近江編は小休止にして、穴場情報も含めて前倒しで紹介したいと思います。春になったら京都で桜を愛でようと考えている方のお役に立てれば幸甚です。

 旅程は三泊四日、ガイドブックやインターネットを駆使して、観桜の穴場をできうる限り調べました。問題は塒ですね。桜の満開時期は年によってかなり違うので、桜の満開情報を待ってぎりぎりまで宿の予約はしませんでした。個人的に信頼している京都新聞の情報で、三月末日が満開とのこと、さっそくインターネットで宿をおさえようとしたら…京都は全滅。大阪に宿泊するという手ももちろんありますが、人いきれで気疲れしそうなので却下。大津も満室、思い切って草津にまで捜索の範囲を広げたらようやくおさえることができました。JR琵琶湖線新快速で21分、これは許容範囲です。というわけで草津第一ホテルに三泊することにしました。京都サイクリングツアープロジェクト(KCTP)で一日だけ自転車を借りられるよう、インターネットで予約をして準備は万端調いました。
 持参した本は『沖縄の〈怒〉 日米への抵抗』(ガバン・マコーマック+乗松聡子 法律文化社)です。

 三月三十日に出立、天気予報は四日とも晴れ、京の桜は満開、いやが上にも気持ちは昂揚します。浮かれ気分で魔がさしたのか、駅弁はリラックマの「オムライス」を買ってしまいました。東京駅午前八時ごろ発の新幹線に乗って、いざ上洛。「オムライス」をたいらげて、車窓を流れる風景をしばし楽しみました。
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 おおっ富嶽も、私の前途を祝福するかのように微笑んでおられます。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2018-02-03 06:32 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(32):平野屋(14.11)

 「田中鶏卵」で卵焼きを購入し、四条大橋を渡って円山公園の中にある「平野屋」へ。
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 山ノ神が大好きな「いもぼう」をいただきました。箸袋にはこう記されています。
元禄から享保の昔、当家の主人が御所勤めの傍ら宮様のお伴で訪れた九州から持ち帰り、京の地で育てた海老芋と献上品であった北海道産の棒鱈とを、工夫を凝らして炊き合わせたのが京名物いもぼうでございます。
十四代続いた一子相伝の技とほんまもんの味を頑なに守り今日に至っております。
 "ほんまもんの味"、堪能いたしました。なお店先には「祝 和食 伝統的な食文化 ユネスコ無形文化遺産登録」という提灯がさがっていました。御慶。
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 ふたたび四条大橋を渡り、河原町駅から阪急京都線に乗って烏丸駅へ、四条駅で地下鉄烏丸線に乗り換えて京都駅へ。志津屋のビーフサンドを買って、コインロッカーから荷物を取り出して新幹線に乗り込みました。
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 車中のトイレに行こうと通路を歩いていくと、向こうから中年男性と中年女性が来たので、先に通してあげようと脇にどきました。ところがこのお二人、お礼も言わずに私を無視して通り過ぎていきました。知的劣化に加えて倫理的劣化か… 気のせいか、最近よくこういう場面に出くわします。ま、いいや、"徳不孤 必有隣"という言葉を信じて、これからもできるだけ親切に振る舞うようにしましょう。カート・ヴォネガット曰く、「親切は世界を救う」。午後10時過ぎに東京駅に到着、東京駅の顔はめ看板を撮影して、今回の旅は終わりです。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2016-10-18 06:29 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(31):錦市場(14.11)

 売店で「瓢鮎図」Tシャツを売っていたので即購入。見るべきほどの庭は見つ、自害はしないで錦市場へ行って卵焼きを買いましょう。妙心寺三門に、さらば」と別れを告げました。
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 そうそう、何気なく今妙心寺のHPを見たら、トップ・ページに"節電 節水 節油 知足 たるをしる 原子力に頼らない わたしたちにできる小さくて大きな支援"という法語(?)があり、「吾唯足知」と刻まれた竜安寺の蹲の写真が掲載されていました。その意気やよし。奈落の底に落ちる穴の徳俵に足をかけている世界と日本。とてつもない格差社会と、それを弥縫するための狂熱的ナショナリズム。相も変わらない資源と市場の暴力的な奪い合い。その結果生じる、大量の難民。またその際に行なわれる一般市民への国家テロと、それに対するカウンター・テロ。大量生産・大量消費・大量廃棄による資源の枯渇と環境破壊、地球温暖化。必要な電力を賄うための核(原子力)発電所の乱立。それもこれも、もう不可能な状況であるにもかかわらず、各国が経済成長を強行していることに起因していると考えます。充足することを知らず、ひたすら金と物を追い求める世界と日本… 「吾唯足知」という四文字こそが、人々に平和と安楽をもたらすという先哲の智恵を大切にしたいものですね。
 JR花園駅まで歩き、山陰本線に乗って京都駅へ。地下鉄烏丸線に乗り換えて四条駅で下車。錦市場の入口には「伊藤若冲生家跡」という看板がありました。そう、伊藤若冲は1716(正徳6)年、ここ錦小路にあった青物問屋「枡屋」の長男として生を受けたのですね。アーケードにも彼の絵がたくさん掲げられていましたが、わが敬愛する画家の一人です。
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 とにかく、彼の絵が好き、ただそれだけです。中野雄氏が『モーツァルト 天才の秘密』(文春新書487)の中で、こう書かれていました。
 …群百の音楽家に比して、百倍も千倍も努力した人であった。ただ、彼はその"努力"を「つらい」とか、「もういやだ」と思わなかっただけの話である。
 そう、天才とは、"努力"を"努力"だと思わない人のことなのですね。そういう意味で若冲も天才だと思います。大好きな絵を描ける喜悦が、びしびしと伝わってきて幸せになります。以前より、石峰寺伊藤若冲展プライス・コレクションなど彼の足跡と展覧会を追いかけてきたのですが、今年は生誕300年、とてつもない規模の充実した回顧展が東京都美術館で開かれました。もちろん行く気満々だったのですが…なんと平日で五時間待ち! やれやれ、これでは入場できたとしてもまともな鑑賞はできないな、と来館を断念しました。それにしてもなぜ、突然、若冲の人気がこれほど沸騰したのでしょう? その経緯は知りませんが、来館者の多くは若冲が好きで訪れたのではなく、話題になったから来たのでしょう。JR東海キャンペーン「そうだ京都、行こう」で取り上げられた紅葉を見に行く方々と同じ行動パターンですね。メディアに踊らされるのではなく、己の研鑽と感性で好きな絵師やお庭を選んでほしいものです。このブームが一過性のものではないことを望みます。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2016-10-16 07:30 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(30):妙心寺退蔵院(14.11)

 方丈の隣りにあるのが「元信の庭」、室町時代の絵師・狩野元信の手による枯山水庭園です。元信が画家としてもっとも円熟した70歳頃の築庭と推測され、自分の描いた絵をもう一度立体的に表現しなおしたもので、しかも彼の最後の作品だそうです。『一度は行ってみたい京都「絶景庭園」』(烏賀谷百合 光文社知恵の森文庫)によると、中根金作はこう評しています。
 …その雄渾なるうちに優雅豊麗さのある手法で石組し、作庭された構成の見事さには驚くべきものがある。そしてそれはあくまでも絵画的である。庭全体の構成や石組の一つ一つにも、画家でなくしてはなし得ない感覚がみられ、この庭の作庭者がただ者でないことを容易にうなずかしめるのである。(p.232)
 それでは余香苑へと向かいましょう。途中にあった瓦には、瓢箪と鯰が刻まれていました。
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 「陰陽の庭」を過ぎると、眼前に紅枝垂れ桜が現れました。平安神宮にある紅枝垂れ桜の孫桜で樹齢約50年。2013年春の「そうだ、京都いこう」キャンペーンに使用されたそうです。これはぜひ満開の頃に見てみたいものです。
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 楓の数はそれほど多くはないのですが、見事に色づいた紅葉をいくつか見られたのは僥倖でした。これは経験則なのですが、便所の近くの楓が特に綺麗なようです。"桜の樹の下には屍体が埋まっている"と書いたのは梶井基次郎ですが、"モミジの樹の下には…" 尾籠な話で御免なさい。お茶席「大休庵」の窓も瓢箪でした。
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 そして余香苑(よこうえん)へ。小さな塔頭かと思いきや、これほど宏大なお庭が広がっていることに驚かされます。サツキの大刈り込みの間から三段落の滝が、大きな池へと流れ落ちてきます。石組、石橋、灯籠、東屋などがバランスよく配置され、まるで一幅の絵を見るよう。観光客も少ないので、閑寂とした雰囲気の中で堪能することができました。視線の快楽… 心がどんどん広がって石や木々や水と一体になっていくような見事なお庭です。最上部に先ほどの紅枝垂れ桜が見えますが、満開の頃は絶景でしょうね。
 作庭したのは"昭和の小堀遠州"こと中根金作(1917~95)。静岡県磐田郡に生まれ、浜松工業学校図案科を卒業後、日本形染株式会社に入社。捺染図案の作成を行ないますが、二年後に退社し、現在の東京農業大学造園学科に入学しました。その後京都に移り、文化財保護課で働いた後、1966年に中根庭園研究所を開設し、作庭と庭園研究に専念します。代表作は、足立美術館、昭南宮などです。これからも追いかけ続けていきたい庭師です。
 なおこのお庭は、米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」(JOJG)が発表する2015年の「日本庭園ランキング」の第31位に選定されています。"So what"と(以下略)

 本日の五枚、一番上が「元信の庭」、真ん中三枚が余香苑、一番下が「陰陽の庭」です。
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by sabasaba13 | 2016-10-15 06:29 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(29):妙心寺退蔵院(14.11)

 そして退蔵院へ。以前に訪れた時にマイケル・ムーア監督に出会えたお寺さんです。お目当ては、"昭和の小堀遠州"中根金作作庭の傑作、「余香苑」です。まずは方丈の縁側に置いてある如拙作の「瓢鮎図」のレプリカを表敬訪問。
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 このお寺さんのシンボルですね。瓢箪で鯰をつかまえようとする男を描いた摩訶不思議な絵、どういう意味があるのかいろいろな説がありますが、『瓢鮎図 ひょうたんなまずのイコノロジー』(平凡社)で述べられていた島尾新氏の所説を紹介しておきましょう。
 しかし、私たちが分析するような「構造」によって、絵を作った人々の営為を理解できたと思うのは早計である。目の前にあるのは「出来上がった」ものにすぎない。「瓢鮎図」の作られた場で、どんな会話がなされたのか知るよしもない。ひとつ想像を逞しくしてみよう。

 「このあいだ、上様(※足利義持)と話をしていたら、瓢箪で鯰を捕まえる、ということを言ったやつがいて、それを新邸の屏風に、という話になった」「ひょうたんでなまずおさえる? 誰が考えたんだ、そんなこと」「でも面白いじゃないか」「そんな諺があったような気もする」「しかし、何といっても将軍の屋敷の屏風だ。そう妙竹林なものも出来ないだろう」「上様は、なにか新しいものをお作りになりたいようだ」「新しいお屋敷だからな」「先代の義満公のときには無かったようなもの?」「どんな風に描けばよいのでしょう」「とにかく上様のお屋敷に置くのだから、立派なものじゃなきゃいけないな」「ひょうたんなまずを?」「大丈夫。清涼殿にも『手長足長』なんていう妙なものがある。これだって、もともとは『山海経』だ。中国の古典だよ。それに対抗して、ちがったのを作ればいいじゃないか」「しかし公家風はまずい」「もちろん唐絵だよ」「義満公の集められた中国絵画があるな」「瓢箪で鯰は捕らえられるものでしょうか?」「そんなことできるわけがない。だからこそ面白いんだ」「瓢箪を持って鯰と格闘するところでも描けばよいのでしょうか?」「それでは何の趣もない」「鯰が竹に上るっていうはあったよな」「そうだ、竹を入れよう」「鯰はこの大地を支えているって話もある。ついでだから男は鯰の上に乗せてしまえ」「瓢箪が手につかないっていうのはどうだ」… (p.104~6)

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2016-10-13 06:23 | 京都 | Comments(0)

京都錦秋編(28):妙心寺大法院(14.11)

 それでは本日最後の訪問先、妙心寺へ参りましょう。ふたたび地下鉄東西線に乗り、太秦天神川駅へ、ここで嵐電天神川駅から京福電車に乗り換え、帷子ノ辻駅で嵐電北野線に乗り換えて妙心寺駅に到着です。駅構内に「特別公開 木島櫻谷旧邸」というポスターが掲示してありました。このしまおうこく? 不学にして知りませんでしたが、どのような方なのでしょう。いまインターネットで調べてみました。木島櫻谷(1877~1938)は京都で活躍をした円山四条派の日本画家です。大正元年頃、室町御池から衣笠等持院の地に転居、それを契機に、土田麦僊、村上華岳、堂本印象ら京都画壇の画家たちが衣笠周辺の地に移り住むようになりました。その時に建てられた母屋(和館)と収蔵庫および展示室(洋館)、それにアトリエ(画室)が登録有形文化財に指定されているそうです。はい、勉強になりました。今度、訪問してみたいと思います。
 妙心寺北門に向かう途中に、入口脇の電気メーターボックスに福助が鎮座している「ワンダアカフェ」というけったいなお店がありました。色物系なのでしょうか、おそらく店内にはレトロなグッズが充満しているのでしょうが、味の方はいかがなのでしょう。
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 そして妙心寺に着きました。口さがない京雀は「建仁寺の学問面、大徳寺の茶面、妙心寺の算盤面」と言ったそうですが、拝観料が高いのかな、少し心配です。たくさんの塔頭があるのですが、公開されているのはその一部です。天球院も非公開ですが、門からは見事に色付いた楓の古木が見えました。眼福、眼福。同じく非公開の大通院にも真っ赤な紅葉がありました。
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 今回のお目当ては、特別公開されている大法院です。以前に訪れたことがあり、きれいなお庭がありながらも観光客が少なく、心静かに鑑賞できた記憶があります。ぜひ山ノ神にも見せてあげたいと思って寄ったのですが…けっこう参拝客がつめかけています。インターネットで情報が拡散したのでしょうか。抹茶をいただいたのですが、庭を眺められる場所はすべて人でうまっていました。
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 それでも、草木が生い茂る侘びた雰囲気、美しい紅葉、よいアクセントとして景観をひきしめる茅葺の待合、蔀戸、石灯籠、蹲踞、飛石、延段など、素敵な景観に山ノ神も喜んでくれました。よかった。♪When you're smilin' When you're smilin' The whole world smiles with you♪ レスター・ヤングのそれはそれは素晴らしいソロが脳裡を流れました。客殿をとりかこむこのお庭は、茶室「有隣軒」の露地庭となっています。"有隣"とは、『論語』の「徳不孤 必有隣」に拠るという解説がありました。「徳は孤ならず、必ず隣有り」か、いいお言葉ですね。最近読んだ『論語』(ちくま文庫)の中で、桑原武夫氏はこう述べられています。
 「徳」とは、道徳であり、また同時に道徳を信じ行なう人の意味を不可分にもつものと考えられる。道徳とは特定の社会の風習をふまえて、その法則的理念化として生れるものである。したがって道徳が個人的特殊性の中に限界づけられるということは、矛盾であり、ありえないはずである。しかし、現実社会では道徳は個人を媒介にしてしか発現されることはなく、そのさい個人のもつ内外の諸条件によって、変容を生じることもまた明らかである。
 孔子は乱れた世の中で道徳の理想を貫くことは、一見孤立無援のたたかいのようだが、もともと普遍的なものである道徳には必ず同行者、理解者つまり友があるという確信を表明したのである。儒教に独特な健康なオプチミズムがここにはっきりあらわれている。「隣」という具体的な人間関係を示す言葉が用いられていることも、この章を力強くしている。(p.88~9)
 これは個人の人間関係だけではなく、国際関係にも敷衍できる言葉だと思います。不徳な外交を続けると、孤立し近隣に友邦がいなくなることを身に沁みて感じているだけに、よけい心に響きます。

 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2016-10-12 08:08 | 京都 | Comments(0)