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東北夏祭り編(6):青森(06.8)

 さあ急ぎましょう、15:17三沢発弘前行きつがる17号に何とか間に合うでしょう。六ヶ所村から南下する道は、しばらく沼と森林の中を抜けていきます。山ノ神曰く、「フィンランドみたいなのだから、地元資本で長期滞在型リゾート施設をつくれば原発に頼らず暮らしていけそうなのに…」 全く同感ですが、資金面と決定的なチャーム・ポイントに欠けるという点で難しいかな。下北半島を軍事施設・原発・原燃サイクル施設・高レベル放射性廃棄物貯蔵施設のために骨の髄まで利用したい政府は、徹底的に妨害するでしょうし。とにかく、六ヶ所村のことはつねに頭の中においておきたいと思います。日本の、いや世界の縮図なのですから。
 おっと、道を間違えた! これはナビゲーターである私の責任です、正しい方向に戻るまで少々時間をくってしまいました。おっと、アブが車の中に飛び込んできた! やむをえない、停車してなかなか動じないアブを外へ追い払うのに手間取ってしまいました。結論を言いますと、この二件のトラブルによって列車に乗り損なってしまいました。これは全面的に小生の責任、反省です。時刻表を調べると、幸い一時間ほどの遅れで弘前に到着できそうです。ほっ 以後の旅のキーワードは「の、り、お、く、れ、る、な」に決定。
 というわけで三沢駅から普通列車に乗り込み青森に向かいました。途中、車窓から外を眺めていた山ノ神が、屋根に上るための梯子がついた家を多数見つけました。おそらく雪下ろしのためなのでしょう。それにつけてもフラットな屋根が多いですね、雪が積もらないように三角屋根にするのが雪国の常道かと思っていましたが。しばし二人で考察した結果、二階部分を広く使いたいがためという結論に達しました。つまりそれほどの豪雪地帯ではないということですね。それにしても、山ノ神の観察力と好奇心に一段と磨きがかかってきたようです。さすがは神様。
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 そして青森駅で弘前行き列車に乗り換え、駅のトイレを拝借すると「男子用トイレチップの受け箱が破壊されトイレチップが盗まれるという事件が発生いたしました。この事件に関して目撃情報がございましたら、駅社員までお知らせください」という掲示が貼ってありました。うーん、長閑だなあ、めったに起きない事件なのでしょうね。そういえばテロへの恐怖を煽り立てるような雰囲気も感じませんでした、東京の鉄道会社とは大違いです。それにしてもトイレチップって何だろう? 弘前に向かう途中で「撫牛子」という駅がありました。何て読むと思います? これからも難読駅名・地名と度々でくわすことになります。やはりアイヌ語の名残なのでしょうか。
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 本日の一枚です。六ヶ所村を疾走する車、運転は「バイエルンの黒い風」こと山ノ神です。くれぐれもスピードメーターを写さないようにと釘をさされました。
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 追記。東京都がオリンピック開催候補地に決定したという驚愕すべきニュースがとびこんできました。この件については、以前意見を述べたのでくりかえしません。一言でいえば大反対です。そして肌に粟が生じるような恐ろしいニュースも… 石原慎太郎強制収容所所長が、都知事選挙に立候補するようですね。もし彼が三選を果たしたら、東京都民は極右かつ差別主義者を首長として12年間も支持するわけだ。快挙というか愚挙というか…
by sabasaba13 | 2006-08-31 06:38 | 東北 | Comments(0)

東北夏祭り編(5):六ヶ所村(06.8)

 まずは寺山修司記念館へ。展示を見た後、裏手にある遊歩道に山ノ神を案内しました。ここは小川原湖と小田内沼を一望できる、木立にかこまれた大変気持ちのよい遊歩道です。清涼な空気とフィトンチッドを胸いっぱいに吸い込み、美しい湖沼と醜悪な「象のオリ」を眺めながらしばし散策。紫陽花も満開、すると山ノ神はあちらこちらにわさわさと生えるタラに気づきました。芽の部分がほとんどなくなっているので、誰かに食べられてしまったのでしょう。それにしても、彼女の植物に関する知識は小生をはるかに凌駕し、一緒に歩いていると教わること大です、多謝。
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 そして受付の方に教えてもらった三沢野外趣味活動施設「やすらぎ」で昼食をとりました。私は鳥唐揚げ定食、山ノ神は親子丼。大変美味しゅうございまして、量も十二分、値段も安い。おまけにつけ合わせの漬物や野菜がふんだんに盛られています。青森県における野菜へのこだわりは、その後の食事においても感じました。さて、小川原湖岸の道路を北上しようとすると、通行止めでした。ここで米軍のプライベート・ビーチを発見。一番眺めのよい場所を市民に開放するのではなく、在日米軍に提供する(させられる)。これが“国益”とやらの実態ですね。「満州国」における関東軍も同じようなことをしていたのでしょう。
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 そしてほとんど自動車の通っていない道を、ひたすら北上します。道路に寄り添うように続く電信柱の列を見ていると、私も彼女も宮沢賢治の「月夜のでんしんばしら」を思わず口ずさんでしまいました。「ドッテテドッテテドッテテド/でんしんばしらのぐんたいは/はやさせかいにたぐひなし」 一時間弱で六ヶ所村に到着、詳細については以前報告しましたのでそれにゆずりますが、「内部被曝の脅威」という本を読んで原発に関する認識を新たにしました。核兵器の爆発や実験、原子力発電所からの排出により、広範な地域に飛散した微量の放射線を出す放射性物質が体内にとりこまれ、どこかの組織に沈着し、アルファ線、ベータ線などを長時間、体内で放射しつづける。そのため、体細胞が傷つけられて慢性の疾病をゆっくりと進行させ、また生殖細胞が傷つけられて子孫に遺伝障害を残す。流産、小児白血病、癌、障害児出産などの増加ですね。事故が起こる以前に、日常的に人体に非道な影響を与え続ける原子力発電所… 原燃PRセンターで、子供向け放射能遮断実験教材に「アルファちゃん・ベータちゃん」というネーミングがほどこされているのを見て、肌に粟が生じました。アルファちゃんが君の体にどんな影響を与えるか知っているかい?
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 本日の一枚は、寺山修司記念館から望む小田内沼です。
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by sabasaba13 | 2006-08-30 06:18 | 東北 | Comments(0)

東北夏祭り編(4):三沢(06.8)

 山ノ神との待ち合わせ時間まで40分ほどあるので、駅周辺を散策することにしました。駅前の坂をのぼっていくと、三沢商業があるようです。高校野球選手権、松山商業との決勝戦で延長18回を投げぬいた太田幸治投手を思い出しますね。別段高校野球には興味がないので、表敬訪問はせず駅の裏側にまわりましょう。商店街を歩くと、シャッターを閉めている店も多くうら寂しい印象を受けます。これはおそらく1990年代三度にわたって緩和された大規模小売店舗法の影響でしょう。少し離れたところに、マックス・バリューの大きな看板が屹立しているのが見えました。地域の人々を結びつける地元の小売業者がかたっぱしからつぶされるようでは、この国に未来はありませんね。いいかげんに規制緩和という悪夢から、目を覚ますべきだと思います。「俺は負けんぞ」とばかりに手焼きの煎餅を黙々とつくっているおやじさんの姿が心に残りました。また塩・煙草を販売するという看板も、随所で見かけました。往時の名残なのでしょう。今では忌み嫌われている塩分ですが、体には欠かせないものですよね。そうそう、「学生割引50円」という文言を掲げる飲食店を何軒かありました。“苦学生”という死語を思い出します。
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 駅前には「全国唯一の駅前広場にある神社」と誇らしげに胸を張る若宮八幡宮があり、その前にベンチにはとても毛並みのよい黒猫がまどろんでいました。玉代・勝世姫をあしらった大きなこけしも鎮座しております。飛鳥時代に、世をはかなみ流浪の旅に出た橘道忠を捜しにきた姉妹ですが、すでに父は亡く、その霊に誘われて沼に入水したそうです。姉が入水したのが姉沼、妹が入水したのが小川原湖だそうな。それにしてもひでえ父親ですね。さて列車は時刻どおり到着、山ノ神と合流し、タクシーで再び空港に向かいレンタカーを借りました。
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 本日の一枚を全国730万人の野良猫ファンに贈ります。
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by sabasaba13 | 2006-08-29 08:39 | 東北 | Comments(0)

東北夏祭り編(3):三沢(06.8)

 というわけで8月某日、羽田空港から三沢に向けて出発です。出発まですこし時間があるので、しばし羽田空港の中を散策しました。食堂では「まぐろのメンチカツサンド」を発見。まぐろもメンチカツも大好物なのですが、これをいっしょくたにするとどげな味になるのか興味はありますが、小心者の私は購入せず。トイレに入ると、水を流す音が出る装置がついておりました。ずいぶん普及してきたのですね。いっそのことバージョン・アップして、唸り声とか鼻歌とか(On the sunny side of the streetがいいな)選べるようにしてくれると嬉しいのに。個室の前には、フォーク型に並ぶ時の先頭あたりに足型がマークされています。余計なお世話という気もしないでもありませんが、それほど良識が欠落している方が増えているのも事実なのでしょう。
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 飛行機に乗ること約一時間で三沢空港に着陸です。滑走路に群集するジェット戦闘機を脇目にターミナルに到着。さっそく手荷物受け取り所のトイレに駆け込むと、和式便器しかありません。米軍に対する密かなレジスタンスかな、などと思いながら用をたし、外に出ると薄日のさす曇りの天気です。気象情報によると、やっとこちらでも梅雨が明けたようです。三沢駅に行くバスの発車時刻をチェックしていると、ロシア語表示がないことに気づきました。青森空港ではけっこう見かけたのに、米軍による密かな圧力があるのかな。
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 これから山ノ神と合流して、レンタカーで六ヶ所村をまわる予定なので、さっそく空港内のニッポンレンタカーの営業所に行きました。三沢駅前の営業所で借りられるとのことで一安心、バスに乗り込むと係の方があわててやってきて、申し訳ないが出払ってしまったと教えてくれました。時々痛い目に会うのですが、レンタカーを借りるときはあらかじめ予約しておくべきなのですね。免許証をもっていないので、ついつい甘く考えてしまうのが悪い癖、銘肝しましょう。しょうがないので、三沢駅前の営業所で相談すると、空港近くのトヨタレンタカーだったら保有台数が多いということです。電話番号を教えてもらい、予約することができました。ついでに今夜の宿泊先、大鰐温泉の後藤旅館に到着が遅くなると電話で一報を入れておきましょう。こちらの名を伝えその旨を告げると、女将らしき相手は一言、「えっ?」














 一瞬体が硬直し、時間が止まってしまいました。どうやら予約が成立していないらしい、今夜の宿をどうしよう、弘前ねぷた見物は中止か、などと様々な思いが走馬灯のように頭の中でぐるんぐるん走り回ります。しばらくして、「二名様ですね、お待ちしております」という返事があったので、安堵の溜め息をもらしました。後藤旅館に行くのがますます楽しみになってきたぞ。
by sabasaba13 | 2006-08-28 07:34 | 東北 | Comments(0)

東北夏祭り編(2):前口上(06.8)

 次は交通手段です。山ノ神が花巻で研究会に参加しているので、三沢で合流することにしました。小生の乗る三沢行きの飛行機は問題なくとれました。花巻→三沢、三沢→弘前、大鰐温泉→秋田の指定席も念のため押さえておくべきでしょう。JR指定席券の発売は一ヶ月前なので、これはJTBに依頼しました。ここで少し色気が出て、海の眺めが素晴らしいという五能線を走る「リゾートしらかみ」という列車に乗ってみたくなりました。最近駅のポスターでよく見かける美しい青池のある十二湖にも行ってみたいし、帰りに五所川原で下りれば立佞武多(たちねぶた)を見ることもできます。大変人気がある列車のようなので、駄目でもともと、弘前→十二湖、十二湖→五所川原間の海側指定席もJTBに依頼しましょう。問題は最終日、大曲からの帰路です。酒田にある土門拳記念館とイサム・ノグチ設計の庭園を見たいのですが、ちょいと遠すぎますね。大曲には見るべきところはなさそうだし、さてどうしたものか。もしやと思い、農村環境整備センターのHPで「棚田百選」をチェックすると、ありましたありました。大曲から列車で二時間弱南下した新庄の近くに四ヶ村の棚田がありました。さらにインターネットで調べると、新庄の近くに女性旅行家イザベラ・バードが明治初期に訪れ褒め称えた金山(かねやま)がありました。(『日本奥地紀行』) 盲亀の浮木優曇華の花、ここで会ったが百年目、ようがす行きましょう。というわけで夕刻の新庄発山形新幹線の指定席も頼みましょう。
 山ノ神のリクエストによる六ヶ所村と三内丸山遺跡を組み入れて、これでほぼ旅程が固まりました。初日は六ヶ所村と弘前または黒石のねぷた、二日目は三内丸山遺跡と青森ねぶた、三日目は十二湖と五所川原立佞武多、四日目は秋田に移動して市内見物と竿灯、最終日は四ヶ村の棚田と金山。さらに石橋を叩きます。二ヶ月前に発売される秋田竿灯の有料桟敷席と、一ヶ月前に発売される青森ねぶたの有料桟敷席もしっかりと押さえました。五所川原・弘前・黒石については、まさか桟敷席なぞないだろうと高をくくっていましたが、出発直前に当該HPで有料指定席があることを発見。しかも五所川原はすでに完売、弘前についてはあわてて「チケットぴあ」に申し込み入手できました。人形ねぶたと扇ねぷたが共にあり、おそらく地元民中心の和やかな雰囲気の祭りであろう黒石ねぷたにもおもいっきり後ろ髪をひかれましたが、やむをえず断念。なお、東北三大祭と巷間で言われる仙台七夕ははなから眼中にありません。無視。一時期仙台に住んでいたので何回も見たことがあり、何よりもつまらない。企業が学生アルバイトを雇って飾りをつくらせ、それをこれ見よがしにぶらさげるだけの陳腐なものです。桃太郎侍だったら、「てめえら祭りじゃねえ!」と叫んで叩き斬るでしょう。いいかげんに三大祭にノミネートすることをやめていただきたい。
 列車の指定席をすべてとることができ、これで準備万端。いざ東北へ。それにしても「東北」という呼称は何とかなりませんかね。東京から見た方位でその土地を呼ぶなんて、きわめて失礼かつ傲岸不遜な行為ですよね。携行する本はザミャーチンの「われら」(岩波文庫)ですが、読む時間はあまりないだろうなあ。
by sabasaba13 | 2006-08-27 07:20 | 東北 | Comments(0)

東北夏祭り編(1):前口上(06.8)

 八月初旬、かねてから念願の東北夏祭りをめぐる徘徊に、山ノ神と二人でらっせらあらっせらあらっせらっせらっせらあと行ってきました。きっかけというほどのものではないのですが、若い頃に読んだ星野之宣の「ヤマタイカ」という漫画にでてくる青森ねぶたの熱狂的な場面が忘れられず、いつか見てやるという想いを抱き続けてきました。四年前の青森旅行で訪れた「ねぶたの里」で実物を見てその想いはさらに強まり、昨年の青森旅行でお世話になったタクシーの運転手さんから青森市内で宿がおさえられなくとも三沢に泊まれば大丈夫だよと唆され、そして何よりも大事な山ノ神の「よかろう」という御託宣も得られ、決行を決意するにいたった次第です。パックツァーで行くのも一つの選択肢かと思い、パンフレットをいくつか吟味しましたが、没! あまりにも自由な時間と自由な食事が少なすぎだし、土産屋をひきずりまわされるのも真っ平御免。やはりいつものように個人旅行で行くことにしました。大変な混雑が見込まれるので、今回は小生にしては異例なのですが三ヶ月前から綿密にして緻密、悪魔の如く細心かつ天使の如く大胆な計画をねりました。何はなくとも江戸紫、まずは宿をおさえなくてはなりません。秋田竿灯も見たいので、青森市周辺で三泊、秋田市周辺で一泊と計画し、日頃愛顧している「楽天トラベル」で調べたところ、当然の如く両市の宿は満杯。秋田については、大曲でどうにかビジネスホテルをおさえることができました。問題は青森です。三沢の宿はとれましたが、五所川原・弘前・黒石のいずれかのねぶた(ねぷた)を見ることを計算に入れると、いかんせん遠すぎます。とりあえず仮押さえしておいて、他の物件を物色しました。位置的には弘前がベストなのですがここも満杯、五所川原も駄目。チェック・メイト、と諦めかかっていたときに、漫画「スラムダンク」に登場する安西監督の名台詞、小生の座右の銘が脳中で鳴り響きました。「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」 うしっ、もう一頑張り。その結果、捜査線上に浮かんできたのが、弘前から列車に乗って南に十数分ほどのところにある大鰐温泉です。お風呂が大好きな山ノ神のご機嫌も取れるし、位置的にもベター。乾坤一擲、一縷の望みをかけて後藤旅館という宿に電話をしてみました。以下、津軽弁で話すご主人とのやりとりです。「ええ空いてますよ」「(やったあ、安西監督ありがとおっ)それではお願いします」「でもほんとにいいんですか?」「えっ」「うちは古いですよ」「はあ」「部屋にトイレもありませんし」「…」「座敷童子も出ますし」「……」 最後のは冗談ですが、ちょっと腰が引けてしまいました。しかし贅沢は言っていられない、夕食なしで朝食付きという好条件にも惹かれて宿はこちらに決定。
by sabasaba13 | 2006-08-26 22:26 | 東北 | Comments(0)

残暑見舞


 残暑お見舞い申し上げます。

 日頃「散歩の変人」を御愛読していただき、ありがとうございます。これから十日間ほどテニアン・サイパンに行き、原爆搭載機が離陸した飛行場や戦跡を見て、海で泳いで、ぼおおおおっとして、読書三昧の日々を送る予定です。炎熱地を焼く日々がまだ続くかと思いますが、ご自愛を。

 暑気払いに、手持ちの写真の中で涼しそうな一枚をどうぞ。数年前に行ったフィンランドのアウランコ公園です。
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by sabasaba13 | 2006-08-17 05:30 | 鶏肋 | Comments(0)

ふしぎな王冠


ふしぎな王冠

~ナパジャ村の物語~

 むかしむかしあるところに、ナパジャという小さな村がありました。近くにはナイチャというたいへん栄えた大きな強い村あり、いろいろなことを教えてもらったり、いろいろなものをもらったりしていました。
 ところがある時、ナイチャと戦争になってしまったのです。さあ大変。村の金持ちはヒソヒソと相談をはじめました。

金持A『ほんに困ったことよのう。』
金持B『そうじゃそうじゃ、何とかせにゃ。ふう。』
金持C『村人たちを兵隊にして、戦わせにゃならん。』
金持D『武器も必要だから、みんなからお金を集めにゃいかん。』
金持B『みんなおとなしくいうこときくじゃろか?』
金持D『みんないやがるじゃろうな。』
金持C『どうしよう、ふう。』
金持A『村一番の知恵者、じさまに相談しよう。』
金持BCD『それしかあんめえ。』

じさま『魔法の王冠をつくるんじゃ。』
金持ABCD『えっ! 魔法の王冠?』
金持C『わしら魔法なんか使えんが…』
じさま『いいんじゃよ。宝石をいっぱいつけた立派な王冠をつくるんじゃ。そして村のみんなに「これが魔法の王冠だ。これをかぶった者のいうことを、おまえらはきかなくちゃいかん。」というんじゃ』
金持A『うまくいくのかなあ…』
じさま『だいじょうぶ!ナパジャの連中はいいやつらじゃが、めんどくさがりやが多い。立派な王冠をかぶった、立派そうに見える人に村のことをぜんぶ決めてもらうのを、喜ぶじゃろう。そのほうがラクチンだ、とな。』
金持B『なるほど、なるほど。』
金持D『じゃ、さっそくつくってみよう。』

 うまくいくのでしょうか? うまくいったのです! 結局ナイチャとの戦争はさけられましたが、ナパジャの金持ちにとって、魔法の王冠はてばなせないものになりました。なぜって? だってこれをかぶっているだけで、みんないうことをきいてくれるんですよ。だれも「なんであいつのいうことをきかなくちゃいけないんだ!」と、考えることさえしません。
 こんな便利な道具はないですよね。
 魔法の王冠をつくってもう一ついいことがありました。おとなりのナイチャでは、村長の地位をめぐって殺し合いやケンカがたえませんでした。でもナパジャでは、この魔法の王冠さえかぶってしまえば、誰でも村長になれるのです。村長一族を皆殺しにするために、大きな戦いをおこすようなことは、ナパジャではなくなりました。

 金持ちたちは、この王冠を、いつか自分がかぶって村長になるための「便利な道具」として大事にしました。(金持ちたちは魔法でもなんでもない普通の王冠だってことを知っていたのです) でも村人たちは、やがてこれは本当の魔法の王冠だと信じるようになったのでした。そして、かれらは、こんなに不思議で立派な王冠をもっているのはナパジャだけだ、と自慢するようになったのです。「ナパジャは、魔法の王冠のないナイチャやアリコよりもえらいんだ!」とね。

 ある時、ジングン=ウヨリンカという男が魔法の王冠をかぶり、村長になってこんなことをいいだしました…
ジングン『みんな、魔法の王冠をもつナパジャ村は、ナイチャ村よりもアリコ村よりもえらいんだ! アジアジアで一番えらいんだ!』
村人A 『ほんとなんじゃろうか?』
村人B『ちょっと信じられんのお…』
ジングン『わしは正しい。なぜならわしは魔法の王冠をかぶっている!』
村人C 『そのとおりじゃ。魔法の王冠をかぶっているものがまちがったことをするはずがない。』
村人B『うん、そうだな。なんてったって魔法の王冠だ。』
村人A『他の村にはないもんだしのお。』
ジングン『みんな、戦いにいこう。魔法の王冠をもつナパジャがアジアジアを支配するのだ。さあみんな、戦うんだ!』
村人ABC(興奮して)『そうだ!戦おう!』

 こうして戦いがおきました。多くのナパジャの村人が死にました。それよりもっともっともっともっと多くのアジアジアの人々を殺しました。
 カリメア村に負けたあと、ナパジャの村人はこうつぶやきました。
村人ABCD『ぼくたちはジングンにだまされていたんだ。ぼくたちは被害者だ。ぼくたちは悪くないんだ…』

 いま、この村はどうなっているか知っていますか? 魔法の王冠はまだありますし、その王冠をたたえる歌を、こどもたちにむりやり歌わせようとしています。
 さてもんだいです。この村に“魔法の王冠”は必要でしょうか、必要ではないでしょうか。(決めるのはその村の人たちですよね)
by sabasaba13 | 2006-08-16 08:26 | 鶏肋 | Comments(4)

「佐賀のがばいばあちゃん」

 「佐賀のがばいばあちゃん」(島田洋七 徳間文庫)読了。漫才師の島田氏が、幼少の頃、預けられて世話になった祖母の思い出を綴った、たいへん面白い本です。「がばい」とは、佐賀弁で「凄い」という意味です。まさしくその通り! 貧しさを屁とも思わず、徹底した倹約・節約によって日々を明るく逞しく生きるその姿には感銘を受けます。筆者が学校で一生懸命走ったと嬉しそうに報告すると、「一生懸命走るな、腹が減る」と諭すところなぞ、ねずみ男の名科白「喧嘩はよせ、腹が減るぞ」を思い出します。さらに「裸足で走れ、靴が減る」ととどめをさすなど、抱腹絶倒。たしか古今亭志ん生が言っていましたが、「貧乏に染まっちゃいけねえ、貧乏は味わうもんだ」という生き方ですね。叡智と工夫を楽しく駆使しての貧乏暮らしは、環境破壊を少しでも食い止めるために全地球規模で求められていることではないのかな。
 その際に重要なのは、生命を脅かすような貧困の廃絶と、不公正な不平等の緩和だと思います。命を全うでき、かつ極端な富者がいなければ、けっこう貧乏暮らしも堪えられるのではないかな。他者を蹴落として競争すれば、自分だけ豊かになれるという幻想がはびこる昨今、これからの生き方の指針になるような本でもあります。本当の富者は、競争なんかしませんよね。面白い言行が満載なのですが、一つだけ紹介します。
 ケチは最低! 節約は天才!
 ケチと節約の違いがわかった時、がばいばあちゃんに少し近づけるかもしれません。

 この本の存在を教えてくれた山ノ神に感謝します。

 追記。今日はポツダム宣言受諾を昭和天皇がラジオ放送で臣民に発表した日ですね。(以前も書きましたが、「終戦記念日」などという事実を糖衣でくるむような表現はやめて「敗戦の日」と変えるべきだし、ポツダム宣言を受諾した8月14日か、降伏文書に調印した9月2日を当該の日にすべきだと考えます) 小泉軍曹が靖国神社に参拝したとのニュースを耳にしました。靖国神社についてのレポートは以前書きましたし、この問題についても意見も「靖国問題」「国家と犠牲」の書評でふれたので、くりかえしません。
 一つだけ付言します。ある国の軍隊が突然侵略をしてきて、私の財産を奪い家を焼き、妻を強姦したうえで殺害したとしたら、その国を許すことはできません。ましてその軍人たちを神として崇め続け、国家代表がその宗教施設を参拝しているとしたらなおさらです。そしてその国家代表を選んだ人々をも、許すことはできないでしょう。(もちろん一般市民に対して焼夷弾や核兵器による無差別爆撃した国に対しても同様の気持ちをもちますが) それにしても靖国神社参拝にこだわる軍曹の想いが理解できません。遺族会の票欲しさなのか、はたまた戦争による死を美しいものだと単純に信じているのか。本当に平和を祈念するのであれば、行動と政策で示して欲しいものです。
by sabasaba13 | 2006-08-15 09:50 | | Comments(0)

「プライス・コレクション 若冲と江戸絵画展」

 上野の東京国立博物館で「プライス・コレクション 若冲と江戸絵画展」を見てきました。伊藤若冲、長澤芦雪と聞くと血沸き肉踊ります。彼らの存在を見出したジョー・プライス氏のコレクションが来日するとあっては、行かいでか! 最近TVで若冲がよく紹介されているので、ある程度の混雑は覚悟しましたが、やはり相当なもの。しかし作品の前の行列がなかなか進まないので、逆にじっくり見ることができました。まずは「花鳥人物図屏風」「鶴図屏風」で、自由闊達な筆捌きを堪能。墨の濃淡とシンプルな線だけで、生物を活写する技量には脱帽です。
c0051620_7214961.jpg そして本展示における最大の話題作であろう「鳥獣花木図屏風」が続きます。さすがに混雑はここがピークでした。数分間じっと順番を待ちましたが、その価値は十二分にありました。数多の小さなモザイクによって描かれた、動物と鳥のパラダイス。山ノ神と二人で、気がつかなかった動物を見つけては微笑んでしまいました。仲でも気に入ったのが、島らしきものにつかまる二匹のかわうそ(?)と、二匹のねずみを優しく見つめる虎。若冲が小動物に注ぐ愛情を感じます。ウェザー・リポートの「バードランド」か、C・ミンガスの「クンビア&ジャズ・フュージョン」をBGMに、銘酒「獺祭」片手に少し離れたところから鑑賞したいのですが、それは叶わぬ夢。「旭日雄鶏図」の精緻にして雄渾なタッチと色彩に見惚れ、とどめはラブリーな「伏見人形図」。彼の表現の幅の広さに舌を巻くと同時に、彼は絵を描くのが好きで好きでたまらなかったんだろうなあと思いを馳せます。
 長澤芦雪も負けてはいません。「神仙亀図」のデフォルメされた大胆な表現に圧倒され(ほぐれた毛糸のような波!)、「白象黒牛図屏風」の遊び心にはほくそ笑んでしまいます。河鍋暁斎の力強い「達磨図」も、江戸琳派のコーナーも良かったですね。酒井抱一の絵をこれほどまとめて見たのは初めてです。十二種類の植物と小動物を描いた「十二か月花鳥図」の清楚にして上品な表現には唸ってしまいました。そうそう、一階で展示されている「あなたならどう見る? ジャパニーズ・アート」も忘れずに。プライス・コレクションの絵を素材に、子供たちに美術への興味をもってもらおうとする好企画です。吉村孝敬描くどんぐり眼のほのぼのとした唐獅子一家に吹きだしをつけたり、実物の金箔に触れられるなど、学芸員諸氏の工夫のあとがしのばれます。
 となりの考古遺物のコーナーでは、亀ヶ岡遺跡から連行されてきた遮光器型土偶にお目にかかれました。五能線木造駅前面にこれを模した巨大なレプリカがあるそうですが、ぜひ見てみたい。本館では酒井抱一の「夏秋草図屏風」(~9/18)と、私の大好きな久隅守景の「納涼図屏風」(~8/20)が特別展示されています。
 というわけでまっこと至福のひと時を過ごせました。プライス氏の眼力に敬意を表するとともに、こうした個性的な画家を育み援助した江戸時代のパトロネージュたちにも感謝したいと思います。稼いだ金で美術品を買い漁るだけではなく、同時代のアーティストを育てるという重要な行為が行われていた江戸という時代にますます興味がわいてきました。

●東京国立博物館 http://www.tnm.go.jp/

 精養軒が満席だったので池袋に戻り、鼎泰豊の小籠包をたいらげ、家に帰って昼寝をし、そしてナイターのテニスを楽しみ、今エビスビールを飲んでいるところです。小さいけれども確固たる幸せ…

 本日の一枚は、伊藤若冲の「伏見人形図」です。うーん、ラブリー。
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by sabasaba13 | 2006-08-14 07:22 | 美術 | Comments(0)