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近江錦秋編(6):近江鉄道(08.11)

 公園のすぐ目の前が近江鉄道八日市駅ですが、この時点で午後四時半、近江八幡を見物するのは無理ですね。いさぎよく大津の宿へ向かうことにしましょう。列車に乗り込んで車窓から外を眺めていると、新八日町駅の改札口は木製の柵でした。そして車内を見渡し、この車輌も広告がほとんどないなあ、不景気のせいかなあ、と溜息をついていると、するするする… 蛍光灯のあたりから蜘蛛がおりてきて巣をつくりはじめました。唖然… いやはや、車両の中で閑古鳥が餌をつついているところは見たことがありますが(嘘)、蜘蛛が巣をはっているところははじめて見ました。頑張れ、近江鉄道!
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 近江八幡で東海道本線新快速に乗り換えて、約20分で大津に到着。塒の琵琶湖ホテルまでは歩いて十数分ほどですが、荷物があるのでタクシーで行くことにしました。駅前の通りを琵琶湖方面へすこし走ると、京阪石山坂本線の踏切が閉まっておりました。ところがなかなか列車がやってきません。やっと通過するとまた逆方向の列車が来るらしく遮断機はあがりません。すると運転手さん、吐き捨てるように鋭く小さな声で「このくされ電車!」。思わずびくっとしたわれわれに対して、彼は(筆者注:正確な近江弁が再現できず申し訳ありません。京都弁に近かったようです)「この路線は廃線にしてもいいのだけれど、大津市役所の連中が利用するために残してあるんです」 やっと遮断機があがった国道161号線を横断すると、氏曰く「この先には競艇場や競輪場があって行政が阿漕に稼いでおり、この道は"ばくち街道""おけら街道"と呼ばれています」 コメントのしようがないので、へえーとうなずくだけでしたが、行政に対する不信感はひしひしと伝わってきました。そしてすぐ目の前が琵琶湖ホテル、チェックインをしてさっそく部屋に入ると、おおっ素晴らしい。広々とした部屋にゆったりとしたソファ、そしてベランダに出ると満々と水を湛えた琵琶湖が街の灯を映しています。夜の闇のなか、左手に浮かびあがる山は比叡山でしょう、頂上のあたりにいくつかの灯火が光っています。遊覧船「ミシガン」で奏でられているディキシーランド・ジャズが思いっきり場違いな雰囲気を醸し出しているのはご愛嬌ということにしておきましょう。デッキチェアに坐ってしばし眺望を堪能、やはり宿代を奮発すれば良いホテルに泊まれるのですね、当たり前ですが。

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2009-09-30 06:10 | 近畿 | Comments(0)

近江錦秋編(5):西明寺~延命公園(08.11)

 湖東三山紅葉狩りの掉尾を飾る西明寺へは、金剛輪寺から十分もかかりません。こちらは天台宗のお寺さんで、834(承和1)年に仁明天皇の勅願によって開創されたそうです。盛時には三百あまりもの僧坊がありましたが、織田信長が比叡山を焼打ちした直後に、こちらも焼打ちにしてしまいました。てことは、信長は比叡山に加えて湖東三山すべてを焼打ちしたわけだ… あらためて、自らの権力を脅かす存在としての寺社勢力に対する警戒心と、それを断固として徹底的に叩き潰す恐るべき意志と実行力には驚かされます。伊藤正敏氏が「寺社勢力の中世」(ちくま新書734)の中で鋭く指摘されているように、国家から大きくはみ出した人々をまるごと受け止めて生産・流通から軍需産業まで含む中世の経済を担い支え牛耳った中世寺社勢力は、宗教で説明するよりも経済体として捉えるべきなのでしょう。そう考えると、信長にとって不倶戴天の敵であったことがよく理解できます。この湖東三山もかつては、殷賑を極めた無縁所=寺社=都市だったのでしょう。
 さてそれでは西明寺境内に入りますか。苔むす所で「この苔は西明寺が大好きです 大事にしましょう」という立て札を発見。半畳を入れると、私が苔だったら金剛輪寺に根付きたいな。
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 二天門、本堂、三重塔は戦火を免れて往時のまま現存、いずれも国宝に指定されています。塔を優しく包み込むような紅葉がピクチャレスクですね。なおこの三重塔は鎌倉時代後期建立、飛騨の匠が釘を一本も使用しないで建てた総桧の塔で、一層には一面に巨勢派の極彩色による絵が画いてあるとのことです。
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 名勝庭園は、江戸時代初期の池泉観賞式の庭園で、「蓬莱庭」と名付けられています。山の傾斜などを巧みに生かした庭園で、このあたりの紅葉が一番見事でした。
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 そしてタクシーに戻り、八日市駅の裏手にある延命公園へと向かってもらいました。車窓から近江盆地の冬景色と、その向うに連なる鈴鹿山脈の景色を楽しんでいると、三十分弱で公園の入口に到着です。
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 タクシーの運転手さんに丁重にお礼を言い料金を支払って、ここでお別れです。お代は約二万円、かなり高くつきましたが、渋滞の中レンタカーで右往左往するよりは適切な選択だったと思います。さて小高い山を利用して山裾につくられているのがこの延命公園、残念ながら紅葉の見頃は過ぎていましたが、それでも綺麗に色づいている楓を何本か見ることができました。たくさんの楓が生えている静謐な雰囲気の公園ですね、ここはかなりの穴場かもしれませぬ。八日市の町並みや近江盆地を一望できるビュー・ポイントもありました。「野生の猿 出没注意」という立て看板にはちょいと腰が引けましたが。
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 本日の四枚、上の三枚が西明寺、下の一枚が延命公園です。
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by sabasaba13 | 2009-09-29 06:19 | 近畿 | Comments(0)

近江錦秋編(4):金剛輪寺(08.11)

 駐車場で運転手さんと落ち合い、金剛輪寺へと向かいます。やはり渋滞にまきこまれましたが、先程よりはひどくなく三十分ほどで辿りつくことができました。こちらは天台宗のお寺さんで、聖武天皇の勅願により行基が開創したと伝えられます。9世紀には慈覚大師円仁が登山して中興、天台宗となり学僧が参集したといいます。蒙古襲来・弘安の役(1281)の際に近江守護佐々木頼綱が戦勝を祈願し、役後に現在の本堂大悲閣を建立しました。盛時は大寺院でしたが、百済寺と同様、1571(元亀2)年に織田信長の兵火でほとんどの寺塔を焼失してしまいます。さてタクシーは長い坂道の参道をショートカットし、寺の脇にある車道を上って本堂・三重塔のすぐ隣まで行ってくれました。ここまで来られるのはタクシーとハンディキャップのある方の車だけだそうです。中に入ると、眩く色づいた紅葉が境内を埋めつくしています。何でも「血染めのもみじ」と呼ばれているそうで、その名に違わない鮮烈な色でした。三重塔や本堂を背景に見ると、風情も格段です。三重塔のある小高い場所から境内を見下すと、一面の赤い世界… 放心状態で彷徨しながらここを先途と写真を撮りまくりました。
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 タクシーに戻ると、運転手さんが「下にある名勝庭園もなかなかいいですよ」と薦めてくれたので、参道の登り口あたりで待っていてもらい寄ってみました。桃山・江戸初期・中期の三庭からなる、作者不詳の池泉回遊式庭園ですが、こちらの紅葉の色づきも鮮やかでした。中でも鏡のような池の水面に映る紅葉の幻想的な光景には、言葉を失いました。なお、以前にここを訪れた時に大変面白いテープ解説があったことを記憶していますが、見当たりませんでした。見過ごしたかな。未発表の「散歩の変人 京都・近江・若狭編」から引用します。
 しかし何といっても傑作なのが、テープ解説! 例えば庭に夫婦松があるのですが、柔らかな京都弁で「高さは数十m、職人はんは枝打ちする時にいっぱいひっかけますわ」とか「こうして夫婦でよりそって百数十年、わてらはせいぜい五十年がまんすればええのやから」とか… ううむ、日本三大テープ解説にノミネートしましょう。(あと一つは知覧の武家屋敷、もう一つは現在物色中)
 余談ですが、もう一つはいまだ見つかっておりません。タクシーに戻る途中にあったお休み処には「僧兵うどん・そば」という貼紙あり。どんな味なんだろうどんな具がのっているんだろう、思いっきり後ろ髪を引かれましたが、先を急ぎましょう。
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 本日の七枚です。
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by sabasaba13 | 2009-09-28 06:09 | 近畿 | Comments(0)

近江錦秋編(3):百済寺(08.11)

 そして百済寺(ひゃくさいじ)へ向かうこと約二十分、運転手さんは裏道を行ってくれたのですが渋滞にはまってしまいました。「最近はインターネットでみんな調べて来るようです」とぼやく運転手さん。仕方がない、駐車場の手前300mほどのところで降ろしてもらい、見物後に駐車場で落ち合うことにしました。歩いている途中で「飛び出しお嬢」を発見。亀の煮凝状態の渋滞を尻目にすたこらさっさと歩いて表門に到着。
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 こちらは天台宗のお寺さんで、推古朝の時代に百済からの移住者が山麓に住み、厩戸皇子(聖徳太子)が百済僧や高句麗僧のために建立したと伝えられます。中世には僧兵を擁し、多くの塔頭を構え、勢威を振るったが、1573 (天正1)年に近江守護大名六角氏を後援したため、織田信長に焼き尽くされたとのこと。またこちらも紅葉の名所としてその名を知られています。今、お寺さんのHPを見たところ「日本の紅葉百選」「近畿の五大紅葉名所」に選ばれていると誇らしげに書かれていました。参考のために後者を紹介しますと、百済寺(滋賀)、大原三千院(京都)、高雄神護寺(京都)、談山神社(奈良)、長岳寺(奈良)でした。最後の二ヶ所は未踏の地ですので全体としての適否は判断できませんが、この手のコピーには振り回されずに自分の眼を信じることにしましょう。余談ですが、このHPは商売っ気と俗気に満ち満ちたなかなかのものです。本尊がNHK「心の仏像百選」第6番に選定されたとか、五木寛之氏の「百寺巡礼第35番」に選ばれたとか、本坊庭園の紅葉風景が「日本の名庭百選」(ユーキャン社、2007年3月発行)に選ばれたとか、よほどランキングが好きなのか、あるいは参拝客を掻き集める誘蛾灯としてランキングを目一杯利用したいのか。「JTB様の紅葉の名所を巡るツアーからも百済寺にお越しいただけます」とあり、JTBツァーにリンクしているところを見ると、どうやら後者のようです。
 ま、それはさておき、さっそく入山することにしましょう。表門から入り、長い石段と苔むす石垣が続く幽玄な雰囲気の表参道を上っていくと仁王門、そして本堂です。しかし肝心の紅葉は…あまり色づいておらずまだ見頃には早いようです。鐘楼には「自由に打ち鳴らして余韻の響きをお楽しみ下さい」という貼り紙、鳴り物がめっぽう好きな山ノ神はさっそく入魂の一撞き、その神韻は満山に轟きました…かどうかはわかりません。
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 そして参道を下り、池泉廻遊式庭園のある本坊の喜見院へ。こちらの紅葉はまあまあの色づきでした。ちょっと小高い「遠望台」からは琵琶湖や対岸の比叡山を眺めることができます。
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 本日の三枚です。
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by sabasaba13 | 2009-09-27 08:43 | 近畿 | Comments(0)

祝島報告会

c0051620_5371125.jpg 先日、「DAYS JAPAN」主催による緊急報告会「祝島住民はなぜ、原発建設に反対し、20年以上も闘い続けるのか」に行ってきました。場所は御茶ノ水、明治大学リバティタワー内にある講義室です。送られてきたメールの指示どおり予約をしておきましたが、はたしてどれくらいの人が集まるのだろうかと少し不安でした。二階にある中規模な講義室に入ると、熱気ムンムンとはいきませんが、百人を超えるぐらいの方がおり一安心。まずはDAYSフォトジャーナリスト学校の生徒約30人が撮った写真で、祝島の紹介です。周防灘に浮かぶ周囲12kmほどのハート型をした小島で、豊後水道を北上する黒潮に洗われ一年を通じて温暖で、びわやみかんの産地、そしてタイなど高級魚の宝庫でもあります。そして石を多く産出し、それを積み上げて漆喰で固めた練塀(ねりべい)が素晴らしい景観をつくっています。写真を見ているうちに、ここを訪れたのが昨日のことのように脳裡によみがえってきました、ああ懐かしい。練塀の連なる迷宮のような集落、小さな漁船と港、斜面に植えられたびわの木々、そして島の人々。あっ、放牧養豚をされている氏本さんだ! 民宿のおやじさんの紹介で連れていってもらったのですが、電流を通した柵の中で食用豚を放し飼いにし、できるだけ自然に近い状態で育てるのだそうです。飼料は輸入ものではなく、芋・ふすまなど自給できるものを利用。そして豚が草を食べたり地中の虫を食べるため土を掘り起こしたりするので、耕作放棄地の再生にもつながるという一石二鳥の試みですね。

 そして広河隆一編集長による、写真をまじえながらの現地報告です。中国電力が山口県上関町四代田ノ浦に出力135万キロワット級の沸騰水型軽水炉2基の建設計画を発表したのは1982年、原発建設予定地は祝島の対岸、海を隔ててわずか4キロ先です。その後、二十年以上にわたって島の人々は、1000回を超える月曜定例デモなど、粘り強い反対を続けてきたのですが、今年の9月10日から中国電力は敷地造成のための海面埋め立てに着手しようとしました。反対派の地主から土地を入手できないため、建設予定地のほぼ半分を埋め立てにより造成せざるをえないのですね、これが。10月までに工事に着手しないと埋め立て許可が取り消されるので中国電力は焦っているそうです。(なお二井山口県知事は許可の延長をほのめかしていますが) そして着手できれば一気に建設申請まで突っ走るという思惑です。これに対して祝島の人々は、漁船を舫(もやい)で連ねて工事海域を示すブイ積み出しを阻止、八日間の工事中断に追い込んでいます。その様子やこれまでの経過を、広河氏は静かな怒りをにじませながら訥々とした口調で語ってくれました。原発建設計画がもちあがった時に、中国電力は説得と懐柔のため、祝島漁協婦人部のおかみさんたちを、美味しい料理に温泉つきの伊方原発(愛媛県)見学ツァーに招待したそうです。態度を決めかねていた女性たちは、原発を見学した際にあることに気がつきました。「立入禁止」の場所が多すぎる… 海産物の加工をしている彼女たちは、きれいな見栄えのする商品として消費者に届くまでの過程で、いろいろと汚い作業があることを十二分に知悉しています。ということはこの「立入禁止」とは見られたくない部分、そしてそれがあまりにも多すぎることに気づき、原発は危険なものだと瞬時に悟ったそうです。そしてすぐにみんなで相談して、帰りの社中で中電社員に反対の意思表示をしました。あるご婦人は、「車を降りてから反対すればよかった、おかげでお土産がもらえなかった」と今でもぼやいているそうです。(会場爆笑) さらに原発で働いたことのある島民からの警告や、イギリスのある原発(ウィンズゲール?)の近くで「甲板に出るな」と注意された船員の経験談などから、島として対することが固まりました。その理由を、『上関原発を建てさせない祝島島民の会』は以下のようにまとめています。
a. 予定地が海を隔てて家の正面約4キロのところであり、自然そのものの景観に囲まれている生活が、夜も昼もなく巨大な構築物=原発を見ざるを得なくなる生活を強要されることへの憤り (住環境)
b. 島民の中に、出稼ぎで原発の下請け労働を経験し実情のわかる人が約20名もおり、広島原爆の被爆者、その家族も住んでいることから原発=放射能という見方をすでに持っていた (放射能への拒否感)
c. 予定地周辺が、祝島の漁民にとって重要な漁場であり、遊漁船業のお客は広島方面からが中心、取った魚も広島方面の市場に出しており、顧客から核施設=原発への嫌悪の意向が強く伝えられた (主力産業への危機感)
d. 離島に住む住民として、いざというときの避難方法がないことへの不安を持たざるを得なかった (日常的緊張の強制)
e. 以上を踏まえる中で、計画の段階から中国電力の「金で人を買い上げる」やり方、推進派の「金に心を奪われる」様子を見せられ、原発は自然を破壊し、建設以前より人の心を破壊し、地域を破壊するものであることを心底実感させられた (人としての生き方、心の腐敗)
 そして今行なわれている反対運動の様子について。先述したように、漁船を連ねて工事海域を示すブイ設置を阻止するとともに、現地で抗議の声をあげていますが、女性の逞しさと力強さには氏も驚嘆されていました。中国電力側が一言いうと、女性たちから百の鬨の声が返ってくるそうです。しかしこうした行動は当然日々の仕事をなげうって行なわれています。なにせ相手のバックには国がついているので、長期戦になった場合には活計を断たれてしまうと氏は憂慮されていました。そしてチェルノブイリ原発事故の被害地域の地図と、祝島を中心とした地図を重ね合わせたスライドがうつしだされました。慄然… ほぼ中国地方すべてが汚染されてしまいます。最後に、政権を握った民主党は原発政策を原則的に推進する方針であると批判、さらに民主党は官僚が行ってきた不正に関する情報をすぐにすべて開示させるべきだと言及して終わりました。

 さらに祝島出身の柳井優子氏(はっぴーあいらんど祝島)のアピール、澤井正子氏(原子力資料情報室)による上関原発の危険性についての分析がありました。原発完成予想図を描き入れた実写の風景写真がうつしだされ、その禍々しさに思わず息を呑みました。この間、署名用紙とカンパ箱がまわってきたのでさっそく協力。と、ここで嬉しいサプライズ、「ヒバクシャ」「六ヶ所村ラプソディー」の監督、「内部被曝の脅威」の著者、鎌仲ひとみ氏の乱入です。「ミツバチの羽音と地球の回転(仮題)」という持続可能な未来を思い描いた映画を撮影中で、その題材の一つとして祝島をたびたび訪れているとのことです。ああそういえば、民宿のおやじさんも、よく監督が来るよと言っていたっけ。聡明にしてフットワークの軽やかな氏の軽妙にして真摯な語り口はあいかわらず、聞き惚れてしまいました。今行なわれている反対運動を撮影中のいろいろなエピソードを話してくれました。抗議のために集まった島民に対する、中国電力側の妄言には思わず苦笑してしまいます。曰く「あなたがたは一次産業では食べていけないでしょう」、曰く「あなたがたは騙されている、島には独裁者がいる」。さらにある島民が「なぜ私たちが反対しているか考えなさい、これは宿題です」と呼びかけたところ、担当者は翌日漁船の船長さんたち一人ひとりに「なぜなんですか?」と訊ねてまわったそうです。いやはや… 少なくとも現場の担当者諸氏は、原発の危険性や問題点を認識しておらず、金をばらまいて貧しい島を救ってあげるという善意をもっているようですね。もちろん上層部はそれらをすべて承知の上で、建設を強行しようとしているのでしょうが。またジャーナリストたちを撮影して「記録します」と威嚇する中国電力には、真実を知らせまいとする姿勢が見え隠れします。そして反対署名への協力の呼びかけ。しかし、六ヶ所村再処理工場建設反対の署名は100万筆を超えたのに結局阻止することができなかったそうです。やはりマス・メディアが取り上げてくれないと状況を変える力にならない、これからはメディアに取り上げさせるための方策・戦略を真剣に考えなければならない、という言葉でしめくくられました。最後に、参議院議員川田龍平氏らのメッセージが読み上げられてお開きとなりました。

 「日本で最後の新規原発立地点」とよばれる上関原発。その根拠は不明ですが、推進派の官僚・政治家・財界も、安全性やコストの面で限界を感じているのかもしれませんね。言うまでもなく、地震や故障、人為的ミスによる事故、放射性廃棄物の処理問題、使用年限を過ぎた後の施設処理やテロ対策などにかかる莫大なコスト、大量の温排水が自然に与える影響、そして日常的に排出される微量の放射能を出す放射性物質が人体や自然に与える影響など、あまりにも多くの問題点を核(原子力)発電所はかかえています。今、日本に対して最も深甚な脅威を与えている存在は、北朝鮮でも中国でも酒井法子でもなく、核(原子力)発電所ではないでしょうか。8月11日に東海地方で震度6の地震が起きたときも、すぐに浜岡原発のことが頭をよぎりました。上関原発の建設を断念させるだけでなく、今稼動している原発を段階的に撤廃していかなければ、われわれは未来永劫、このダモクレスの剣に怯えつづけることになります。そういえばここ明治大学博物館刑事部には、「鉄の処女」という処刑具が展示されているはずです。人型をした鉄製の容器の蓋の裏に、肉体を貫く鋭い針がとりつけられているものです。われわれは今、この「鉄の処女」の中に横たわってうたた寝をしているのかもしれません、「大丈夫、絶対に蓋は閉まらないよ」という誰かさんの声を信じて… 最後ですが、いろいろとお世話をしてくれたボランティアのスタッフに感謝したいと思います。ありがとうございました。若い方々がたくさん混じっているのをみて、大いなる希望を感じました。

反対のメッセージを届けるための連絡先が下記のリンク先に記載されています。
http://daysjapanblog.seesaa.net/article/128136096.html

 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2009-09-21 05:38 | 鶏肋 | Comments(2)

近江錦秋編(2):永源寺(08.11)

 さてそれでは列車に乗り込みますか。一目見た山ノ神、「あっ西武鉄道のお古!」 かつて西武鉄道池袋線で使われていた車体だそうです。西武資本による鉄道なのかもしれませんね、そういえば堤一族は近江商人の末裔でした。中に入ると、何か雰囲気がおかしい… 車内に広告がほとんどなく、幼稚園児の絵が飾ってあります。地方の窮状を顕著に物語っているのでしょうか。
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 列車は田園風景や小さな町・村の間をのんびりのこのこと走っていきます。そして二十分ほどで八日市駅に到着。トイレに入るとまたまた「不審者注意!!」という貼り紙。「女子トイレ 5/10 PM9:00 トイレの扉の下のすき間から手」 それって幽霊ではないの? 駅前には馬に乗った古代豪族の服装の男性と、それを見つめる女性を描いた大きなレリーフがありました。なんじゃらほいと近づいてみると、「蒲生野遊猟の図」、額田王が「あかねさす紫野逝き標野行き野守は見ずや君が袖振る」と、大海人皇子が「紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑに我恋めやも」と詠み合った場所・蒲生野はこの近くなのですね。
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 湖東三山(百済寺・金剛輪寺・西明寺)+永源寺を路線バスでまわるのは無理があることは承知ノ介、いさぎよくタクシーを利用しましょう。幸い客待ちをしている車が一台停まっていたので、運転手さんに湖東三山+永源寺という行程でお願いしました。「大変な混雑だから時間がかかりますよ」と言われましたが、もう後には引けません。まず向かったのは永源寺、長閑な田園風景の中を走っていると、途中で手づくりの「飛び出し小僧」「飛び出しお嬢」をたくさん見かけました。車窓をすぐ流れ去っていくので詳細については視認できませんでしたが、同じ意匠はまったくないようです。理由はよくわかりませんが、このあたりは「飛び出し人形」のサンクチュアリかもしれません。即刻ラムサール条約で保護すべきでは。そして全国35万人のとんちゃん(筆者注:飛び出し人形ファン)、集え、八日市へ! などとお馬鹿なことを考えていたら永源寺に到着、八日市駅からは二十分ほどかかりました。愛知(えち)川右岸にある臨済宗永源寺派の総本山で、鎌倉時代に開山、後に近江守護佐々木氏の庇護のもと盛時には2000人もの学僧が集まっておおいに栄えたそうです。渓谷の両岸をはじめ、参道一帯にはモミジ・カエデが多く、紅葉の名所としても知られています。よって駐車場は満車札止め、どうするのかと思いきや、ちゃんとタクシー専用の停車場所が用意されているのですね。(後で運転手さんに聞いた話では、地元の特定タクシー会社のみの恩典のようです、このへんは要確認) うーむ、レンタカーにしなくて正解でした。さっそく車から降り、羅漢坂という石段をのぼり山門に着くと、見事に色づいた紅葉が出迎えてくれました。愛知川ぞいに細長く配置されている伽藍をめぐりながら、紅葉狩りを満喫。京都ほどの人間性を否定されるような混雑ではないので、まあまあゆるりと散策することができました。
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 本日の五枚です。
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by sabasaba13 | 2009-09-20 06:10 | 近畿 | Comments(0)

近江錦秋編(1):近江八幡(08.11)

 林光のピアノ曲を弾いていた山ノ神が突然「あーっ音が多い」と咆哮しました。「二、三個抜いちゃえば」と半畳を入れると「あっそうか」 おいおい。数日後、「シナプスがつながらない…」としょげる山ノ神。ごめんね、あなたのシナプスまで面倒は見切れません。数日後、「やっとしどろもどろに弾けた」と呟く山ノ神。えっ… 耳が・になりましたが、よく咀嚼して考えたところ「どうにかこうにか弾き通せるようになった」という意味のようです。やれやれ。我が家の日常風景でした。
 閑話休題。高齢、じゃない恒例の京都錦秋めぐり、今年もやや空いていて紅葉の盛りが続く十二月初旬に設定しました。一年前から満を持して定宿アランヴェールホテル京都を予約し、♪もういくつ寝ると♪と待ち焦がれていましたが、突然山ノ神に急な仕事ができ当該日に行けなくなってしまいました。その一週間前の十一月下旬の三連休だったら大丈夫だということなので、さっそくJTBに相談をしに行ってきました。予想通り、すでに部屋は満杯、やむをえずアランヴェールホテル京都はキャンセルしてもらい、他のホテルをあたってもらいましたがもう部屋は見つかりません。しょうがない、京都からほど近い滋賀県大津に泊まり、日参することにしますか。いろいろと探してもらったところによると、いくつかの宿が見つかりました。ちょっと料金は高いのですが、琵琶湖ホテルに決定、琵琶湖を一望できるロケーションと温泉大浴場が決め手でした。するとご用達のレンタサイクル「京都見聞録」からのデリバリーがちょっと難しくなります。まさか大津まで持ってきてもらうわけにもいかないし、京都駅前あたりで落ち合うしかないのかな。すると山ノ神曰く「近江の紅葉を見れば」。おお、そうですね、せっかく大津に泊まるのですから今回は近江の紅葉狩りとしゃれこみましょう。あらためて計画をねりなおし、いろいろと調べてみると、紅葉の名所がいくつか浮上してきました。湖東三山(百済寺・金剛輪寺・西明寺)、永源寺、延命公園、三井寺、石山寺、玄宮園(彦根城)、近江孤篷庵、鶏足寺、興聖寺(朽木)、日吉大社、西教寺(坂本)、長寿寺、石の寺教林坊などなど。そして風情や情緒のある小さい町もたくさんあるようです。彦根、近江八幡、長浜、木之本、菅浦、梅津、朽木、堅田、坂本などなど。二泊三日でこれら全部をまわるわけにもいかず、この中からピックアップすることにしましょう。とりあえず初日は湖東三山・永源寺・延命公園で時間があれば近江八幡を逍遥。二日目・三日目は迷いますね、なにせ北陸本線と湖西線の(特に後者の)列車本数が少なく移動に苦労しそうです。これは保留にして現地で再考することにしましょう。そして歴史学徒の末席を汚す者としては、賤ヶ岳古戦場も外せません。これで大まかな旅程は決まりました。移動手段についてはレンタカーを"鯖街道の黒い風"こと山ノ神にころがしてもらうという選択肢もありますが(私は免許証をもっておりません)、最近運転していないので自信がないと固辞。土地勘もないし、紅葉狩りの観光客で混雑しているかもしれないし、タクシーを利用することにしましょう。もちろん、できうる限り公共輸送機関を使うことにはしますが。よしっ、これで巨大な連関がつながった。がしゃん 持参した本は「若者のための政治マニュアル」(山口二郎 講談社現代新書1969)です。

 8:00東京駅発の新幹線のぞみに乗っていざ出発。東京は雲ひとつだにない快晴でしたが、西行するにしたがって雲が空を覆うようになってきました。でも雨の心配はなさそう。10時21分に京都駅に到着、駅の売店でポケット時刻表を購入し、東海道本線に乗り換えて近江八幡まで約20分。ここで「猪木ピンチ」(古いギャグだ…)あわててトイレにかけこみ、用をたして出ようとすると壁面に「差別落書きは犯罪です!」というポスターが貼ってありました。同様の貼紙が構内にもあり、この問題が関西ではいまだ深刻な状況であることがうかがわれます。ここで近江鉄道八日市線というローカル鉄道に乗り換えたかったのですが、寸前に列車が行ってしまいました。次の列車は三十分後、しゃあない、駅前にあるスーパーマーケット「サティ」に入って軽い食事をとることにしましょう。
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 歩道橋には「打ち勝とう! 心にひそむ悪魔から」という哲学的な立て看板がありました。すぐ近くには「不審者に注意! 見たら聞いたら110番!」というプレートが貼ってあり、「ダメ、ゼッタイ 薬物乱用」というビラとティッシュを配っている方もおられます。こうした一連の事象から判断するに、薬物によって悪魔に魂を乗っ取られた人物が「悪い子はいねが」と叫びながら出刃包丁を振り回すというような事態がこのあたりでは頻発しているのかな、などと思ったりしてしまいます。まさかそんなことはないよね。セキュリティへの過剰な不安を煽って、監視体制やシステムを強化しようとしている官僚・政治家諸氏の目論見をふと感じてしまいます。チェーン店の珈琲屋でサンドウィッチをいただき、近江八幡駅へ戻ろうとすると、「くさいキタナイかっこ悪い やめて下さい迷惑タバコ」というステッカーを発見。迷惑な喫煙行為を弁護する気は毛頭さらさらありませんが、ここまで悪し様に言うのはあまりにも不寛容ではないかなと思います。「キタナイ―キレイ」「かっこ悪い―かっこいい」という単純な二分法をふりまわすのも怖いし、何よりももっと多くの害をもたらす物質にもっと注意の目を向けてほしいものです。核(原子力)発電所の放射能、自動車の排気ガス、食品添加物などなど。小悪にこだわり巨悪に気づかない昨今の風潮には危惧を覚えます。
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by sabasaba13 | 2009-09-19 06:07 | 近畿 | Comments(0)

祝島と上関原発建設

 愛読誌「DAYS JAPAN」からメールが届きました。以前にも紹介した美しく懐かしい島、祝島の眼前で、中国電力はいよいよ上関原発建設のための埋め立てに着手したという衝撃的な知らせです。そして編集長の広河隆一氏が現地を訪れて取材し、その報告会が行なわれるとのこと。これは居ても立ってもいられない、さっそく参加するつもりです。浅学のためわかりませんが、民主党は核(原子力)発電に対してどういう立場を取るのでしょうか? 注視していきたいと思います。なお内容を下に転載しました。一人でも多くの方が行かれるよう切望します。
【緊急報告】9月19日(土)18:30~「祝島住民はなぜ、原発建設に反対し、20年以上も闘い続けるのか」

9/13(日)本誌編集長広河が山口県、祝島を訪れ、
そこで今起こっている大変な事態を
実際に目で見てまいりました。
何が起こっているのか、私たちにできることとはなにか、
緊急報告会を開催致します。
祝島から離れた地にいてもできることはあります。
是非ご参加ください。

http://daysjapanblog.seesaa.net/article/128023290.html

緊急報告!!
祝島住民はなぜ、原発建設に反対し、20年以上も闘い続けるのか
スライド報告 広河隆一
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中国電力はいよいよ上関原発建設のための埋め立てに着手し、
島民は今、体を張って抵抗している。
人々は何を守ろうとして闘っているのだろうか。
祝島を孤立させないために、私たちにできることとは。
主催 DAYS JAPAN・現代史研究会

【日時・場所】
2009年9月19日(土)18:30~20:30(18:00開場)
場所:明治大学 駿河台キャンパス リバティータワー 1021号室(270名)

【行き方】
■JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車徒歩3分
■東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車徒歩5分
■都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車徒歩5分

【お申し込み方法】
席確保のため、事前に予約くださいますよう、お願いいたします。
Email: kikaku@daysjapan.net (デイズジャパン 企画室)
FAX: 03-3322-0353 

【お問い合わせ】
同上

また全国からの声を届ける為、各連絡先を下記リンク先に記載しております。
ファクスやメールをお願いします。
何度でも、粘り強く、メッセージを下記へ届けてください。
簡単なものでOKです。どうぞよろしくお願いします。

http://daysjapanblog.seesaa.net/article/128136096.html

by sabasaba13 | 2009-09-18 06:14 | 鶏肋 | Comments(0)

「レクサスとオリーブの木」

 「レクサスとオリーブの木 グローバリゼーションの正体 (上・下)」(トーマス・フリードマン 東江一紀・服部清美訳 草思社)読了。常日頃、グローバリゼーションには関心をもつようにしており、これまでも関連の書物を何冊か読んできました。ただ世界の悲惨な状況を知るにつけ、その原因の一端はグローバリゼーションにあると考えているので、どうしても批判的・否定的な内容のものが中心でした。しかしその功罪を考えるためには、"闇"の部分だけではなく"光"の当たるところにも刮目すべきだと思い本書を手にしました。著者はニューヨーク・タイムズ記者であるトーマス・フリードマン氏、グローバリゼーションを前向き・肯定的に捉えた上でさまざまな問題点を論じるというスタンスをとられています。

 氏は、冷戦システムの跡を継いで、グローバル化時代が二十世紀を支配する国際システムになったと述べられます。よって冷戦後の世界を把握するためには、グローバル化が根付いた経緯を説明し、それが今、ほとんどすべての国の内政と外交を方向づけているその仕組みを検証することが重要であるということです。さすがはジャーナリストと唸らされたのは、冷戦システムとグローバル化を比較する際の卓抜な説明です。
 冷戦は"敵"か"味方"かに二分される世界だった。これに対して、グローバル化の世界では、敵も味方もすべて"競争相手"に変わる。(上p.33)
 その比喩として、冷戦を相撲、グローバル化をくり返し行われる百メートル競走に喩えられています。私としては、冷戦は綱引きに喩えたほうがよいと思います。アメリカとソ連という二つの超大国が戦略的優位、資源、名誉をかけたグローバルな戦いをくり広げたのが冷戦システムで、その戦いにおいては、一方の陣営の利益が他方の陣営の損失となりました。相手のメンバーをこっちのチームにたくさん引き込めば綱引きに勝てますよね。そのために両国とも、発展途上国を自分のチームに引き入れようとし、資金提供や経済援助を気前よくばらまきました。しかし、共産主義は自由市場資本主義に敗れ去ります。氏曰く、所得の分配という点では公平だったかもしれませんが、その所得を最も効率よく生み出し生活水準を向上させるという点では歯が立たなかったということです。それとほぼ同時進行で、さまざまなシステムや体制を守ってきた壁が三つの根本的変化によって吹き飛ばされます。通信方法の変化、投資方法の変化、世界の動きを知る方法の変化です。そして登場したのがグローバリゼーション。敵も味方も壁もないオープン・スペースで、無数の競走相手と毎日開催される百メートル競走です。ある意味ではとてつもなく大きなビジネス・チャンス。全世界の顔の見えないライバルたちとの熾烈な競争に勝てば、個人でも富裕になれますが、敗れれば貧困のどん底に突き落とされます。またグローバル化は、世界中で一時に同じ事業を行なうか同じ製品を販売すれば得になるような大規模経済によって、単一の市場を作り出しているので、世界中の消費さらには文化をいっせいに均質化しかねません。著者は繁栄や進歩を求めてこうした魅力的な商品を作り出そうとする動きを、トヨタの高級車「レクサス」に喩えます。それに対して、自らが帰属する文化・共同体・故郷を守ろうとする動きを「オリーブの木」に喩えます。

 結論としては、このグローバル化という動きは不可逆のもので避けることはできない。しかしシステムの暴走・崩壊の危険性と、文化の画一化・均質化という問題も放置できない。よって、競走を阻害しない範囲で、このシステムのあらゆる側面をできるだけ改善して、崩壊を食い止め衝撃をやわらげること。「レクサス」と「オリーブの木」の間に健全なバランスを保つよう不断の努力をすること。そしてこの両者を実現するための中核となれるのはアメリカしかないということ。要約の拙劣さは小生の責任です、ご海容あれ。

 凡庸な結論と言っては失礼ですが、リアリティはありますね。ただいくつかの疑問が脳裡に浮かびます。例えば、著者は自由市場資本主義によって、金持ちと貧乏人の格差が広がっていったが、一方で、世界各地で貧困層の底辺は確実に上昇してきたと主張されています。(下p.138) 「DAYS JAPAN」や「貧困の世界化」(ミシェル・チョスドフスキー 郭洋春訳 つげ書房新社)などを読むかぎり、とてもそんな牧歌的なことは言えないのではないかというのが実感です。またグローバル化にともなう環境破壊についてもそれほど紙幅があてられていません。グローバル化を全否定することは無理だとしても、この悍馬によほど強力な轡をはめないと取り返しがつかないことになるのではと懸念します。そして根本的な疑問。人間というものは、繁栄を求めて見ず知らずの他者と激しい競争をくりひろげなければならない存在なのでしょうか。それに耐えられるものなのでしょうか。写真家の藤原新也氏が「日本浄土」(東京書籍)の中で、「消費行動が少なくしたがって生産性も低い過去の時代においては、衣食住足りれば人は遊んでいるかのような悠長な時間の中に身を置くことができた」と語られています。人間ってそういうのんびりとした「なまけものの世界」の中でこそ幸せに暮らせるのだと思いたいですね。「レクサス」と「オリーブの木」と「なまけものの世界」、何とかしてこれらを鼎立させることはできないものでしょうか。
by sabasaba13 | 2009-09-18 06:09 | | Comments(0)

言葉の花綵12

 魂の凡庸さを自己に委ねない人にとって、生活は日毎の苦痛である。(ロマン・ロラン)

 金融屋が余裕を失ったらおしまいやで。

 この日本という国は枝の人間が禁止事項に触れただけで組織全体が違法と見られる国や。だからもし下の者がヘタうったら上のアンタまで責任とらされるゆうわけやろ。(『ナニワ金融道』)

 一般にすぐれた教師は生徒の欠点には目をつぶり、長所だけをのばすという。しかし、コルトーはその上をいく。欠点に目をつぶればそのまま残る。名教師コルトーは欠点を長所に変えてしまうのだそうな。(宇野功芳)

 商売というのは、刑務所の門まで行く。行くけれども中には入らない。そういうやり方なんだ。中に入ってしまっては、元も子もなくなってしまう。しかし、刑務所に近づかないようでもダメなんだ。(堤康次郎)

 あきらめたら、そこで試合終了ですよ。(『スラムダンク』 安西監督)

 オ-ウェルがわれわれに遺したものは「真の人間らしさ」(DECENCY)とは何かという問いである。ナショナリズムと全体主義を憎み、インチキを排して、誠実を重んじ、普通の人の普通の言葉で、明澄に書くことを願い、一杯のおいしい紅茶の悦びを讃えた。全世界的な規模で政治的道義の低下が進みつつあるとき、何にもまして歪められるのは、われわれの歴史と言葉であると叫びつづけたこの「暖かい心をもって怒っている」オ-ウェルこそは、以前にもまして今日われわれのもっとも必要とする作家である。(オ-ウェル小説コレクション[晶文社]解説より)

 自由とは、人の聞きたがらないことを言う権利である。(G.オーウェル)

陽気に笑いさざめきながら老いさらぼうて皴をつけ、
酒びたしで肝臓をほてらせるがいい。
そのほうが苦しい溜息ついて、
その一息ごとに心臓を凍らせるより、よほどましだ。
熱い血のかよった人間が、石膏細工の爺様よろしく、
どうしてじっとしていなければならないのだ? (W.シェークスピア)

 より少なく働いて、よりよく生きよう。(ヨ-ロッパでの労働者の合言葉)

 おもしろきこともなき世をおもしろく (高杉晋作)
 住みなすものは心なりけり (野村望東尼)
 
 誰彼もあらず一天自尊の秋 (飯田蛇笏)

 Bid me discourse,I will enchant thine ear. (シェークスピア)

 心頭を滅却すれば火もおのずから涼し (快川紹喜)

 高品質の製品が、《過剰品質》として嫌われる時代なのである。人間の生活に確かさをもたらす《物》を作れない社会、使えない社会は、やはりそのありようが問われねばなるまい。(森清)
by sabasaba13 | 2009-09-17 06:08 | 言葉の花綵 | Comments(0)