阿佐ヶ谷・高円寺・西荻窪編(7):東京女子大学(08.5)

 そのすぐ近くにあるのが善福寺公園、二つの善福寺池からなる小さいけれど気持ちの良い公園です。ボートで遊ぶ親子連れや、その上ではためく鯉のぼりを眺めながら、しばし畔にそって散策。広場で遊んだりお弁当を食べたりしているみなさんの顔は、目にも鮮やかな新緑に染まっているようです。柄にもなく「万緑の中や吾子の歯生え初むる」という中村草田男の句を思い出してしまいました。
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 そして、みなさまお待たせしました、いよいよ東京女子大学への突入です。「入れるわけがねえだろ」という声がどこかから聞こえてきますが、何をおっしゃるうさぎさん、実は…入れませんでした。九牛の一毛とも言うべき可能性に賭けて正門に近づき、「決して怪しい者ではありません、建築好きの善良な一市民です」という感じの笑みを満面にうかべて、スペンサー・トレイシーにくりそつの警備員の方に入場許可をもらおうとしましたが、氏は穏やかかつ毅然とした態度で「電話で許可を得れば平日のみ見学できます」とおっしゃられました。「ご無体な、そこをなんとか」とくらいついたら一騒動になりそうなので、ここは鞘を収めましょう。撤退! 悔しいので門の外から、シンボルとも言うべき白亜の図書館を撮影しようとすると、二台の大型バスが邪魔して全体像が見えません。Everything happens to me…
 このままだと、女子大生の芳香を嗅ぐのが目的かと誤解されそうなので、なぜ東女にこだわるのか弁明をしておきます。わが敬愛する建築史家・藤森照信氏曰く、もっとも美しい東京の女子大。(「建築探偵 神出鬼没」 朝日新聞社) アントニン・レーモンド設計による個々の建物もさることながら、計画的に配置された建築群の整った美しさが見事だそうです。氏は、こうした基本的プランを立案したのは創立者のカール・ライシャワー(エドウィン・ライシャワーの父上)ではないかと推測されています。そして氏が絶賛するのが、1922年につくられた鉄筋コンクリート製・コンクリート打ち放しの学生寮です。鉄筋コンクリートが普及するのは関東大震災(1923)以降、それ以前ではきわめて珍しいとのこと。学外や学内の片隅ではなく、なかなか良い場所に、最も早くしかも最新の技術でつくられたのがこの学生寮なのですね。学生の暮らしの場を重視する、これは大した見識だと思います。以上、弁明になっているでしょうか。
 遠望しただけですが、この図書館(現本館)はいいですねえ。全体像を写した写真を見ると水平線の強調がフランク・ロイド・ライトを彷彿とさせますが、それもそのはず、レーモンドは帝国ホテルの設計スタッフとしてライトに連れられて来日したのですが、工事途中でケンカ別れをして独立、その後すぐに手がけた仕事だからですね。印象的な形の屋根は、武蔵野の民家を模したのではないか、と門前の解説板に書いてありました。前面に刻まれている"QUAECUNQUE SUNT VERA"というラテン語は、「すべて真実なこと」という意味だそうです。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2009-01-23 06:10 | 東京 | Comments(0)
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