蝶々夫人

c0051620_9383090.jpg 先日、プッチーニのオペラ「蝶々夫人」を見て聴いてきました。カルロ・モンタナーロ指揮の東京交響楽団、演出は栗山民也、場所は新国立劇場オペラパレスです。「蝶々夫人」と聞くと、どうしても三木のり平が♪行~かないで行かないで、お願いピンカートン♪と唄う桃屋の「いかの塩辛」のアニメCMを思い出してしまう方、♪君も今日からはぼくらの仲間♪です。昔のCMって知的レベルが高かったなあと思いつつ、人口に膾炙する超有名な名作オペラ、これまで実演を聴いたことがなかったので楽しみにしていました。20世紀初頭の長崎、アメリカ海軍将校の現地妻とされた若い元芸者が捨てられ二人の間に生まれた子供も奪われ、絶望して自害するというストーリーです。シンプルな筋立てであるだけに、蝶々さんの揺れ動く気持ち、喜び、怒り、不安、悲しみにどっぷりと感情移入できます。そしてなんと美しいメロディに満ち溢れたオペラであることよ、多彩な管弦楽の音色とも相俟って、聴き惚れてしまいました。「ある晴れた日に」「可愛がってくださいね」「さよなら坊や」など、素晴らしいアリアの数々に時を忘れてしまいました。蝶々夫人を演ずるカリーネ・ババジャニアンもいいですね、別名"ソプラノ殺し"と呼ばれる出ずっぱりの難曲ですが、その美しい声で歓喜と悲哀と絶望を見事に歌いきりました。ブラーバ! 舞台は、抽象的に表現された日本家屋と、長崎の坂を象徴する大きな階段のみというシンプルなものですが、照明を上手に使っていたのが印象的。港町の明るい空、障子を閉め切った室内の陰翳、それと蝶々さんの心象をうまく組み合わせていたように思います。階段の最上部にはピンカートンを象徴する星条旗がはためいていますが、利得や権益を求めて世界各地を荒らしまわる現在のアメリカを象徴させた演出と見るのは穿ちすぎかな。オーケストラも、歌心に充ち、ダイナミクスの変化にも富んだ演奏を聴かせてくれました。おまけに、席は二階最前列ど真ん中、ここは初体験ですがいいですね。舞台全体を一望でき、電光の字幕を見るために首を横に振る必要もなく、歌手の歌声がストレートに響いてきます。というわけで名作と名演と名席を堪能できた、ある素晴らしい土曜日の午後でした。やはりオペラはいいものですね、さあ次は何を聴こうかなとパンフレットでこれからのラインナップをチェックすると、「ヴォツェック」と「カルメン」がありました。うん、これは唾をつけておこう。

 余談です。桃屋のホームページで過去のCMを見ることができました。さっそく蝶々夫人編(1971)を拝見、山ノ神と二人で懐かしさのあまり感涙にむせぶとともに、「行かないで~。イカあった、いかった。桃屋のいかの塩辛」と、いかの塩辛をつまみに、やけ酒を飲む三木のり平=蝶々夫人に大笑い。なお解説によると、彼は"ピンカートン"ではなく"ビンカートン"と歌っており、これは桃屋の瓶詰めにかけて洒落、瓶・カートンだそうです。恐れ入谷の鬼子母神。
by sabasaba13 | 2009-01-26 06:13 | 音楽 | Comments(2)
Commented by 1974年生まれのレトロCMマニア at 2009-11-19 01:53 x
イカあった!イカったー!
桃屋のイカの塩辛!

ってやつですね!
Commented by sabasaba13 at 2009-11-19 17:42
 こんばんは、1974年生まれのレトロCMマニアさん。ビンゴ!です。
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