アイルランド編(1b):前口上(08.8)

 先日、「海からの贈物」(A.M.リンドバーグ 吉田健一訳)を読んでいたら、ジョン・ダンの「人間は島ではない」という言葉に出会いました。ジョン・ダン? たしか詩人・故田村隆一氏の絶筆「死よ驕るなかれ」も、彼の詩の一節だったと記憶しています。気になって調べてみたところ、16~17世紀に生きたイングランドの詩人で、「重病の床の祈祷」の冒頭部分でした。以下、引用します。

だれもひとつの島ではない
だれもそれ自体で完全なものではない
すべての人間は大陸のひとかけら
全体の一部分
もし海によって土が洗い流されれば
欧州は小さくなる
あるいは岬も
あるいは汝の友人たちや汝自身の土地も同じこと
あらゆる人の死は私を削り落とす
なぜなら
私は人類の一部なのだから
ゆえに
決して誰がために鐘はなると問うなかれ
それは汝のために鳴っているのだから

 なるほど、ヘミングウェイは小説の題をここから拝借したのか。なかなかよい詩ですね。思うに、旅の醍醐味もここにあるのではないでしょうか。異文化の中を漂流しながら、そのうちに自分につながるものを見出し、己を人類の一部であると看取する。そういう視点を忘れないよう銘肝したいものです。
 さて今回は、夏休みを利用して二週間ほど山ノ神とアイルランドを旅行してきました。縛りの少ない個人旅行を選択、すこし時間をかけて旅程をねりました。旅荷が多い山ノ神の要望(命令)に応えて、ばたばたとホテルを移動するのではなく、できるだけじっくりと一箇所にとどまるようにしましょう。ダブリンに三泊、キラーニーに五泊、ゴールウェイに四泊という骨格が決定。いろいろと見どころを調べてみると、どうやら公共輸送機関では行けそうもありません。サンチョ・パンサ風に言えば、「お前様もよくご存知のように《石橋を叩いて渡る》とか《鐘を叩くのは叩き方を知ってるやつにまかせろ》とか《釘のあるところに、いつでも吊るす塩豚があるとは限らねえ》とか《みかんきんかんさけのかんよめをもたなきゃはたらかん》とかいった諺もあるさね」、どうしても外せないポイント(ex.グレンダー・ロッホ、ケリー周遊路、ディングル半島、モハーの断崖)は現地でのツァーに参加することにしました。滞在地間の移動は列車かバス、爆発的に人気のある観光地ではないので(たぶん)、これは現地で何とかなるでしょう。馴染の旅行会社に依頼して、往復の航空機とホテル、および現地ツァーの予約をお願いしました。そして出発二日前から旅装の準備を開始。とは言っても、いつもの如く最小限必要なものをテニスバッグに詰め込んでフィニート。どうしても必要だったら現地で買えばいいや、という基本方針を貫いております。ただ今回は、"シャワー"というにわか雨が多いという情報を得ましたので、思い切って新しいこうもり傘を購入して持っていくことにしました。もう一つはサロンパス。その理由は…後ほど明らかになります。
 なお下調べに関して、ダブリン在住の公認ガイドによるブログ「ナオコガイドのアイルランド日記」が大変参考になりました。画面を借りて謝意を表したいと思います。どうもありがとうございました。
 ●http://naokoguide.blog33.fc2.com/
 持参した本は「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(マックス・ヴェーバー 大塚久雄訳 岩波文庫)と、「嵐が丘」(E.ブロンテ 鴻巣友季子訳 新潮文庫)。別に深い意味はなく、机上に積んである本の中から、二週間の旅行に見合った分量のものを無作為に抽出しただけです。でも結果としてなかなか鋭い選択であったと自画自賛しております。
by sabasaba13 | 2009-02-27 06:14 | 海外 | Comments(0)
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