大勢の人が行き来するオコンネル橋を右手に見て、ウエストモアランド通り東側の歩道を南下していると、道にガイドブックで見た覚えのあるプレートを発見しました。おおっ、Mr.レオポルド・ブルームではありませんか。そう、ジェイムズ・ジョイスの小説「
ユリシーズ」の主人公です。「釈迦に説法」ですが、この小説に関するスーパーニッポニカの解説を引用しておきます。
アイルランドの小説家ジェームズ・ジョイスの長編小説。ダブリンに住む中年のユダヤ人広告業者レオポルド・ブルームの、1904年6月16日の24時間を『オデュッセイア』の枠組みに当てはめて描いたもの。神話の壮大な英雄とは逆の、卑小で滑稽で悲しい寝取られ男ブルームが精神上の子を求める彷徨と、テレマコスにあたるスティーブンの精神上の父を求める散策とが交錯し、女の豊饒そのものを象徴するブルーム夫人モリーの夢の独白のなかに吸収される。
…文体の実験は壮絶なもので、婦人雑誌、教義問答、使徒信経、叙事詩、あるいは英語文体史のパロディーというぐあいに英語のあらゆる次元に挑んでおり、言語技術面での名人芸とともに構想の雄大さにおいて、小説ジャンルに衝撃的な革命をもたらした。とりわけ最後のモリーの独白の切れ目のない文体は、次作『フィネガンズ・ウェーク』を示唆するものといえよう。小説のみならず文学全般の領域を著しくひろげ得た、目覚ましい業績である。
その業績を十全に理解したとはとてもとても口が裂けても言えませんが、とりあえず出発二週間ほど前に「ユリシーズ」を読み終えました。よって今回の旅では、ユリシーズやジョイス物件の探訪も楽しみにしています。この小説のもう一つの特徴は、ブルームや(もう一人の主人公)スティーヴン・
ディーダラスがたどったダブリンの道筋や店・施設をきわめて忠実に描写してとりいれていることです。ジョイスも「たとえダブリンが滅んでも、この小説をもとに完全に復元できるだろう(One could recreate the city of Dublin, piece by piece, from Ulysses)」と豪語しております。その中から15の場所を選び、ブルームの姿と該当する「ユリシーズ」の一節を刻んだプレートを設置してあるとガイドブックに書いてあり、一つでも見つけられたらいいなと期待していたのですが、いきなりゲットしました。こう刻んであります。なお以降の日本語訳は「ユリシーズ(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)」(丸谷才一・氷川玲二・高松雄一訳 集英社)から引用します。
"Hot mockturfle vapour and steam of newbaked jampuffs rolypoly poured out from Harrison's"
「まがいすっぽんスープの湯気と焼きたてジャム入りパフプディングの蒸気が、ハリソンの店から漂って来た」(Ⅰ8「ライストリュゴネス族」 p.382)
ブルームが新聞社から国立図書館に向う途中の足取りと意識の描写ですね。なお次の一文では、この匂いを裸足の浮浪児が飢えを癒すために吸い込んでいる、またナイフとフォークが鎖でテーブルにとりつけてあると書かれています。当時のダブリンの様子を彷彿とさせますね。
本日の二枚です。