アイルランド編(11):ダブリン(08.8)

 さて大学の南側を走るナッソー通りを東に向かって歩き、ウエストランド・ロウという通りとぶつかるあたりにスウィニー薬局がありました。ブルームがレモン石鹸を買った店で、現存する貴重な「ユリシーズ」登場店舗だそうです。外装修復のためか工事用シートに覆われ、残念ながら全体像は見えませんでしたが。ご参考までに該当部分を紹介します。「いま何時ごろだろう? 十五分過ぎ。時間はまだたっぷりある。あの化粧水をつくらせとくほうがいい。どこの店で? ああそうだ、この前のときは。リンカン・プレイスのスウィニー薬局」(Ⅰ5「食蓮人たち」 p.209)
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 さらに東へと進むと、突き当たりにあるのが国立産婦人科病院、「太陽神の牛」という章に登場する病院です。西側の壁面上部に丸い記念プレートがあり、こう記されていました。"JAMES JOYCE SET "THE OXEN OF THE SUN" EPISODE OF ULYSSES IN THE ORIGINAL NATIONAL MATERNITY HOSPITAL WHICH STOOD ON THIS SITE 16 JUNE 1904" てことは、この建物は当時のものではないのですね。妻モリーの友人であるミセス・ピュアフォイの難産を気にかけたブルームが立ち寄った病院です。
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 余談ですがこの挿話は、古代英語からマロリー「アーサー王の死」、デフォー、マコーレイ、ペイターなどを経て現代の話し言葉に至る英語散文文体史の壮絶なパロディとパスティーシュで書かれています。前掲書の訳者三人はこれを訳すに際し、なんと日本語文体史のパロディとパスティーシュにおきかえるという離れ業・力業をされています。古代英語は祝詞・「古事記」、マロリーは「源氏」ほかの王朝物語、エリザベス朝散文は「平家物語」、デフォーは井原西鶴、マコーレイは夏目漱石、ディケンズは菊池寛、ペイターは谷崎潤一郎! これは圧巻でした。
 それではナショナル・ギャラリーへと向かいましょう。なおこの一帯はジョージアン・スタイルの建築が妍を競っています。ジョージ1世から4世までの時代(1714~1830)に発展した建築スタイルで、この時代にダブリンの街並みが整えられ、外国人建築家によって多くの私邸や公共の建物が建てられました。ドアの色、ドア・ノッカー、バルコニー、入り口の扇型の窓などの細部が各家によって異なっているので、その意匠や配色を見ているだけでも飽きません。いろいろなドアの写真を並べた絵葉書をよく見かけましたが、頷けます。ふと向こう側の歩道を見ると、青いジョージアン・ドアの前に青いシャツを着たバスの運転手らしき風体の男性二人が屯していました。フォトジェニックな光景ですね、さっそくパチリと撮影。
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 本日の一枚です。
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by sabasaba13 | 2009-03-14 07:40 | 海外 | Comments(0)
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