アイルランド編(32):キラーニーへ(08.8)

 そして次にめざすは『ユリシーズ』の主人公レオポルド・ブルームの家があった付近です。オコンネル通りをさらに北上し、バークリー通りを経ると右手に慈悲の聖母病院があり、ここを右に曲がるとエクルズ通り、小説ではブルームの家はこのあたりに設定されています。通りにそって少し歩くと左手に新しい病院があり、ジョイスのプレートが入口にありました。
"At the housesteps of the 4th of the equidifferent uneven numbers, number 7 Eccles street, he inserted his hand mechanically into the back pocket of his trousers to obtain his latchkey."
「エクルズ通り七番地の等差奇数の四番目の入口上り段で彼は機械的にズボンの尻ポケットに片手を入れてドアの鍵を出そうとした」(Ⅲ17「イタケ」 p.317)
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 通りをはさんだ向かい側には集合住宅が並んでいますが、おそらくそのどれかがブルームとモリーの家として設定されたのでしょう。
 さてそろそろヒューストン駅に行かなければ。税関の方角へ何となく歩いていくと、二十分強でホテルに到着。フロントで荷物を引き取り、ルアス(路面電車)に乗ってヒューストン駅に到着。列車の発車時刻までまだ四十分ほどあるので、余裕の吉山君ですね。めざすはアイルランド南部のマンスター地方、その観光の中心となる内陸の町キラーニーです。普通ヨーロッパの鉄道ですと、改札もなく列車に乗り込み車内で車掌が検札をするというやり方です。ところが切符を購入して急行列車(IC=Inter City)に乗り込もうとすると、ホームが金属の柵で囲まれており中に入れません。どうやらここで改札をするようです。でも十数番目なので自由席に座れるのは確実でしょう。行列に並んでいると、すぐ右側に車道があることに気づきました。なるほどこれは便利ですね、大きな荷物などをすぐに積み込むことができます。十分ほどすると改札がはじまり、車内に入れました。荷物置場にスーツケースとテニスバッグを置き、さあ自由席をさがしましょう。経験則では窓のところに指定席を示すカードがさしこんでなければ自由席のはず、この列車では電光掲示になっていたので名前が入っていない席に座りました。ヨーロッパでは定番の「脱出用窓ガラス破壊ハンマー」もちゃんと設置されています。
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 発車時刻が近づくにつれ、続々と乗客が乗り込んできます。いやあ早めに来てよかったねえ、と安堵の溜息をもらしていると、老婦人二人がにこやかに近づいてきました。そして指定席券を見せて、「ここは私たちの席なのですが」とおっしゃいます。えっ… あわてて席をゆずり、車内を駆けめぐってやっと空いている席を見つけました。やれやれ。単なる表示のミスなのか、それとも指定席車輌と自由席車輌が画然と分けられているのか、不明です。ま、結果オーライということですね。
 そして出発、雲が増えてきましたがいまだ晴天です。車窓から緑の牧草地や街並みや丘陵を眺めて楽しみ、あるいは微睡んでいると、二時間強で乗り換えのマーロウ駅に到着。キラーニーへ向うちょっと薄汚れた列車が待っていたので、さっそく乗り換えです。幸い席も確保できました。
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 さあ出発、車窓から外を見ていると西の方からどんどんと黒雲が流れてきます。一時間ほどでキラーニーに到着した時には、もうざんざん降りの本格的な雨。どうやら傘をささずにすむ日というのはなさそうですね。とにかく早くホテルに行って旅装を解きたい、地図によると駅からそう遠くないはずです。駅の入口からふと見ると、すぐそこにまるで貴族の邸宅のようなホテルがあります。「あんなホテルに泊まってみたいわあ」と潤んだ眼で訴えかける山ノ神。すみませんねえ、甲斐性なしで。でも何というホテルなのだろう、えーと、Maltonかあ… Malton? Malton! ここだあ! 手を組んで小槍の上でアルペン踊りをする二人、さっそく土砂降りの中、ホテルへと駆け込みました。ロビーに入ると内装、調度品、もう申し分なし。暖炉に火が入っています、いやほんと寒いぐらいの気温なのですね、これが。フロントでチェックインをして部屋に行きましたが、天井が高く広々としており、内装も豪華ではありませんが落ち着いた上質の雰囲気をかもしだしています。なおホテルの裏側には庭園があったので、そちらを見える部屋を期待したのですが、残念ながら正面側の部屋、眺望の半分ほどがホテルの建物に遮られています。でも十二分に満足、雨が降っても槍が降ってもこの部屋でのんびりと本を読んでギネスを飲んで昼寝をすれば、この世は天国さ。
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 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2009-04-18 08:05 | 海外 | Comments(0)
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