「禅僧とめぐる京の名庭」

 「禅僧とめぐる京の名庭」(枡野俊明 アスキー新書083)読了。京都は幾度ともなく訪れていますが、その楽しみの一つは素敵なお庭を拝見することですね。より深くその素晴らしさを味わいたいとつねづね思っており、鑑賞の勘所をとうしろうにも分かりやすく説明してくれる本はないかと捜しているのですがなかなかめぐり合えません。本書の著者は禅僧にして庭園デザイナー、またぱらぱらと立ち読みをすると庭園+建物(方丈)の正確な平面図も載せられています。おっこれはやるな、とさっそく購入して読んでみたのですが… 満足のいくものではありませんでした。京都の二十一の名庭の来歴や由緒や特徴が詳しく紹介され、また、方丈南面に面した南庭は、住持が接客に用いる東の間(礼の間)から眺めるようにつくられているので、ここの広縁あたりがベスト・ビュー・ポジション(p.65)といったためになる鑑賞法もいくつか教示されているのですが、肝心要の「なぜ素敵なのか」というところになると「緊張感に満ちた究極の美」「精神性を込める」「心に訴えかけてくるもの」「庭を通して心の奥底に眠っている何かを見つけ出す」といった漠然とした言葉が並べられ腰砕けとなる印象があります。もちろん"美"を言葉で解き明かせ、などという無茶にして野暮なことを言うつもりは毛頭ありませんが、著者の力量と経験だったらそのとば口くらいは指し示すことができるのでは、と思います。例えば、石にはそれぞれ「気勢(きぜい)」とよばれる勢い・動きがあり、互いに引き合ってバランスを取っている(p.100)という重要な指摘をされているのですから、庭全体の石に気勢を示す矢印をふって、その絶妙なバランスを図示するとか。あるいは、ある石を他所へ移動させた合成写真をつくって、それによってどうバランスが崩れるかを試してみるとかね。

 ぶちぶちと失礼なことを書き連ねてしまいましたが、「ビュー・ポイント」と「気勢」という重要な勘所を教えていただけたことには深く感謝します。お庭の素敵さを味わうには、誰かに教えてもらおうなどという安易な気持ちは捨てて、真摯にお庭と向き合うしかないのかもしれませんね。
by sabasaba13 | 2009-04-22 06:03 | | Comments(0)
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