伊予・讃岐編(9):イサム・ノグチ庭園美術館(04.2)

 まず前半の30分は展示されている作品とアトリエを見学。私はまっさきに、古い民家を利用した展示館へ。係りの方が大きな引戸をごろごろと開けると、差し込む陽光とともに荘厳に浮かび上がったのが彼の代表作「Energy Void」です。忘れられない一瞬。黒色花崗岩による高さ3.6mの大きな彫刻で、微妙に捩じれていて見る角度でいろいろと表情を変えてくれます。そして人間の手で磨き上げた温もりに溢れた黒褐色の表面。現代彫刻に感銘を受けたのは初めての経験です。そして今にも彼がふらっと戻ってきそうな、当時のまま保存された作業場を見学。柱の穴や隙間に、定規や東海道五十三次マッチが無造作につっこんであります。そして庭に展示された作品の数々。作品名・制作日時等の表示は一切なし。作品そのものから何かを感じ取って欲しいという彼の要望だそうです。30分は短いと思いましたが、集中して作品に対峙するには程よい時間であることがわかりました。後半は、彼が住んでいた、古い民家を移築した「イサム家(や)」の外観と彼が設計した庭園の見学。巨大な土饅頭のような丘にのぼると、屋島が一望できる見事な眺望、背後をふりかえると五剣山。彼が世界で最も好きだった場所だと言ったそうです。そして天辺に高さ2mほどの卵形の巨石(岡山産安成石)が置かれ、屋島の方を沈黙しながら凝視しています。見た瞬間にわかりました、この石はイサム・ノグチだと。石となって、地球と一つになりたかったのだと。後で係りの方に尋ねたら、彼はこの石が大好きで、死ぬ直前に「二つに割って中に入りたい」と言ったそうです。本当に濃密な、凝縮された一時間でした。いろいろ美術館には行きましたが、ここが世界で一番好きです。
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 那須与一の駒立岩、景清の錣引きなど源平合戦ゆかりの史跡を見ながら、歩いて八栗駅まで行き再び琴平電鉄で志度へ。昼食はこちごの唐揚げ。昨日乗ったタクシーの運転手さんが「瀬戸内は小魚が一番旨い」と言っていましたが、ほんとですね。イサム・ノグチがよく散歩に来た四国八十八ヵ所第86番札所の志度寺へ。彼が好きだったという「海女の墓」が印象的でした。トイレの前に「遍路を真似た詐欺師に注意」というポスターがありました。なるほどこの手があったか。振込詐欺よりは人間的な犯罪のような気がしないでもないですね。「こわい鬼は自分がつくっている」というポスターに納得し、平賀源内の墓参りをして、源内遺品館を見物。そうそう「うだつがあがらぬ」の語源となった、うだつのある町屋をよく見かけました。キュートな琴平電鉄で高松へもどり、迷ったすえに高速船で未踏の地、小豆島へ向かいました。いやはや貧乏根性丸出しですな。
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 一天にわかにかき曇り小雨がぱらつく中、「二十四の瞳」の舞台となった岬の分教場をタクシーで訪問。木下恵介のファンなもので… ほんとは日本棚田百選に選ばれた池田町の千枚田も見たかったのですが、これは時間の関係で断念。尾崎放哉(ほうさい)記念館も泣く泣くカット。以前山ノ神に「屁をしても一人」という素晴らしい自由律俳句があると冗談で言ったら、それを信じて職場で吹聴し、さる方から「咳をしても一人」だと諭されて、「赤っ恥をかいたじゃないの!」と激しく叱責された美しい思い出が走馬灯のようによみがえってきました。へえー黒島伝治も小豆島出身だったんだ。寒霞渓の紅葉もいつか見てみたい。世界で一番狭い海峡を見せてもらい、池田港からふたたび高松へ高速船で戻り、今夜の宿鳴門へ。明日はまず鳴門の渦潮見物です。
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 本日の一枚は、やはり屋島遠望です。「イサム・ノグチの石」になったつもりでご覧ください。
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 ●イサム・ノグチ庭園美術館  http://www.isamunoguchi.or.jp/gamen/home.htm
by sabasaba13 | 2005-03-17 07:26 | 四国 | Comments(10)
Commented by azucarina at 2005-03-17 21:47
sabasabaさん 耳寄りな情報をありがとうございました。
予約制というのは聞いてましたが、1時間2000円なんですね~!
写真撮影禁止というのも厳しいですね。でもその分目に焼き付けて
帰りたいです・・・。
ここへ行くと、イサムの息吹が感じられそうですねぇ。
sabasabaさんが世界一好き!とおっしゃるこの美術館
ぜひ私も行ってみねばいけません~!
お遍路詐欺・・・こんなのがあるんですね~!ビックリ!しかもポスターまであるなんて!
Commented by sabasaba13 at 2005-03-18 21:45
 こんばんは。たしかに制約が多いのですが、それを補って余りある濃密な凝縮された時間を体験できました。まるで一個の巨大な眼球になったような気分でした。と思い出すと、ああまた牟礼に行きたくなってしまいました。ほんとに彼の息吹を感じることができます。
 お遍路詐欺、どんな手口なのでしょうね。弘法大師のブロマイドを高く売りつけるのでしょうか?
Commented by azumi_art at 2006-01-29 03:48
はじめまして。
イサムノグチ庭園美術館について書いてあったので
TBさせていただきました。。ご迷惑でしたら、外してください。。

とても印象的な美術館だったので、また行きたいなぁと思っています。
Commented by sabasaba13 at 2006-01-29 10:13
 こんばんは。とんでもありません、ようこそいらっしゃいました。貴ブログを拝見いたしましたが、素晴らしい美術行脚ですね。きわめて視野の狭い一美術愛好家として後塵を拝したいと思います。
 イサム・ノグチ庭園美術館は、(たぶん)一過的ブームが去って落ち着きを取り戻したら、是非また行って見るつもりです。
Commented by azumi_art at 2006-01-29 12:45
こんにちは。
最近のイサム・ブーム、すごいですよね~
彼の作品は素晴らしいけど・・・MOTでの加熱ぶりにビックリしました

行脚と言うか、気の向くままの行動なのです~
ワタシの場合、知らないアーティストが多くて、いつも新鮮といえば新鮮だけど、どうかなぁと思うし、
不勉強なので、このアーティストはどういう流れの人なのかとか、あまり理解できてないし・・・
行き当たりばったりで、自分の感想を垂れ流してるようなブログなのですよ。。

でもアートはホントに楽しいですよね♪
よぼよぼのオバァちゃんになっても、美術館やギャラリーで、
アートを純粋に楽しめる人間でありたいなぁと思ってます。。
Commented by sabasaba13 at 2006-01-29 17:28
 こんばんは。優れた音楽や美術に出会うと、生きていることはそれほど悪いものではないな、と思います。私も小言幸兵衛のようなじさまになっても、ブツブツ言いながら美術館やコンサートに赴くつもりです。なお「20世紀絵画」(宮下誠 光文社新書234)という本を最近読んで感銘を受けました。「好き嫌い」という判断基準で選んだ作品とはやがて別れがやってくる、作品をよりよく理解しようとするプロセスが必要というのが著者の意見です。少し本気で美術についての勉強をしようかな、などと根拠のない向学心が少しわいている今日この頃です。
Commented by azumi_art at 2006-02-04 22:33
ワタシも美術の勉強したいです・・
感じる心が出発点だろうと思うのですが、美術史や哲学も知っておきたいし、
海外の作家さんの場合は、ギリシャ神話や聖書の知識も欠かせないし・・
どっから手をつければいいのか~(X_X)

作品を理解するって難しいけど、それが出来たら、きっと楽しいでしょうね!
Commented by sabasaba13 at 2006-02-05 17:35
 こんばんは。知らないことが沢山あるのは、考えようによっては、「知る喜び」をこれから無尽蔵に味わえることを意味します(そう信じます)。誰だか失念しましたが、バッハを聴いたことがないという人に、「貴方は幸せだ!」と言った方がいます。美術史の本に関してはどんぐりの背比べですが、岩波書店の「西洋美術の流れ」「日本美術の流れ」あたりが無難かな。哲学史では竹田青嗣の「現代思想の冒険」(ちくま学芸文庫)がお薦め。目から鱗が落ちてコンタクトレンズを入れたような気分です。
 どこから手をつけてもいいのではないでしょうか、時間って結構あるものです。×目はやめて笑いましょう。\(⌒○⌒)/
Commented by azumi_art at 2006-02-11 21:36
sabasaba13さん、ありがとうございます♪
教えていただいた本、探してみます。
x目はやめますね(^ ^)
Commented by sabasaba13 at 2006-02-11 21:51
 こんばんは。お役に立てれば幸甚です。ま、お互い、のんびり楽しく学んでいきましょう。そのうち何かつかめると思います。
When you're smilin'
When you're smilin'
The whole world smiles with you.
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