アイルランド編(52):モハーの断崖へ(08.8)

 本日はモハーの断崖へのバス・ツァーですが、空はどんよりと鉛色。いや、虚心坦懐、明鏡止水、天候に関しては達観の域に達しておりますのでまったく気になりません。晴れでも曇でも雨でも雪でも嵐でも矢でも鉄砲でもスティンガー・ミサイルでももってこいという気持ち。朝食をとって部屋に戻り、スカイ・ニュースの天気予報を見るとヨーロッパ全域は晴れ、雲に隠れて見えないのはアイルランドだけでした。ざけんじゃ…いやいかんいかん平常心平常心。臨兵闘者皆陣列在前と九字を切り、ニンドスハッカッカ マ ヒジリキホッキョッキョと唱えて心を落ち着けましょう。昨日と同じ集合場所に行き、バスに乗り込んでいざ出発。まずは17世紀につくられた小さなお城、デューングラ城(Dunguaire Castle)へ。
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 1924年に外科医で文学者でもあるオリバー・セント・ジョン・ゴガーティによって買い取られ修復され、文学面におけるケルト文化の復興を進めていたJ.M.シングやW.B.イェーツ、ジョージ・バーナード・ショーたちのミーティングの場として利用されたそうです。満潮だったらゴールウェイ湾に映る姿はさぞや美しいかと思いますが、残念ながら引き潮でした。なおこのあたりは牡蠣の名産地でもあるそうです。バスは海沿いの道を快調に走り抜けていき、ある海岸で写真撮影タイムとなりました。みわたせば花ももみじも…どころではありません、生きとし生けるものの気配が感じられない岩場、荒涼とした光景が眼前一面に広漠とひろがっています。でもどういうわけか心が吸い込まれてしまうような不思議な感覚も覚えてしまいました。
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 なおこのあたりはバレン高原と呼ばれ、石炭紀(3億2000~3億6000万年前)のむき出しの石灰岩と泥板岩で覆われています。そもそも「バレン」という地名が「岩でごつごつした場」を意味するアイルランド語boireann(ブエレン)に由来するそうな。このあたりに進撃してきたクロムウェルが、拷問の方法を考えるのに「バレンには、人をつるす木もなく、溺れさせる水もなく、生き埋めにする土もない…」と途方に暮れて漏らしたと伝えられています。ピューリタン革命の立役者・優れた軍事指揮者としてのクロムウェルは有名ですが、意外と知られていない(私も知らなかった)のがアイルランドを征服しカトリックへの容赦ない弾圧を行ったことです。その蛮行は「クロムウェルの呪い」と呼ばれ、アイルランドにおいて歴史上最も嫌われ憎まれている人物です。ここからは余談、ではクロムウェルの軍隊はなぜ強かったのか。不思議なもので、旅のお供として持ってきた本の中で、偶然その土地に関係した記述にでくわすことがよくあります。今回持参して読んでいたマックス・ヴェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」の中に次のような一節がありました。"彼らが王党派の「騎士軍団」を圧倒しえたのは、イスラムの修道士にみるような熱情によってではなく、むしろ冷静な自己統制によって常に指揮者の指揮に従ったためであった"(p204) なるほどねえ、資本主義の精神の萌芽である「冷静な自己統制」が、王党派やアイルランド軍を蹴散らしたわけだ。

 本日の二枚です。
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by sabasaba13 | 2009-05-27 06:12 | 海外 | Comments(0)
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