前置きが長くなりました、さっそく出発しましょう。なお持参した本は「
建築史的モンダイ」(藤森照信 ちくま新書739)です。
まずめざすは鷹番国民学校の奉安殿が移築された清水稲荷神社(東京都目黒区目黒本町1-1)です。東急東横線に乗って渋谷から約8分で学芸大学駅に到着。東口と西口、駅の両サイドにはけっこう賑わう商店街が連なっています。西口には神輿が置かれていたので、今日はお祭りなのでしょうか。
手持ちの地図によると、東口商店街をつっきってぶつかる目黒通りのあたりに当該物件はありそうです。まずはキョロキョロしながら商店街を散策。「鶴岡唐木店」では土間でご主人が熱心に細工仕事をされていました。唐木とは、紫檀・黒檀・白檀など熱帯産の上等な材木の総称で、もともともと中国を経て輸入されたところからこう言われるようになったそうです。てことは、こうした高級材を材料とした指物を作るお店なのかな。こうした職人仕事を間近に見られる街っていいですね。その先では三角破風のところに唐草文様の漆喰細工がある和洋折衷の不思議なお屋敷を発見。
その先に「まさひろ珈琲店」という洒落た瀟洒なお店があったので、こちらでモーニングサービスをいただくことにしました。厚切りチーズトースト、プチサラダ、ゆで卵、珈琲というラインナップ、いずれも美味しゅうございましたが、なかでも香高き珈琲は特筆ものです。芳醇な香に鼻腔をくすぐられながら歯の折れるようなゆで卵を食しこれから歩き回るコースをあれこれ考える、村上春樹氏曰く「小さいけれど確固たる幸せ(小確幸)」ですね。余は満足じゃ、と店を出てしばらく歩くと戦前の古い表札をゲットしました。「区黒目」と右書き、おまけに「区」が旧字体、これは逸品ですね。
そして目黒郵便局のあたりを地図と番地をたよりにうろうろしていると、清水稲荷神社にたどりつきました。切妻屋根+平入りの社殿形式で、稲荷社ということで真っ赤に塗られています。解説板には、「また、この年[筆者注:1952(昭和27)年]、太田喜八郎氏が鷹番小学校へ寄進したご真影奉安殿を、大へん苦労して移築し拝殿としました」とあります。どんな苦労だったのか、気になりますね。
本日の一枚です。