言葉の花綵10

 私の鼻先30インチに
 私の人格の前哨戦がある
 その間の未耕の空間は
 それは私の内庭であり、直轄領である。
 枕を共にする人と交わす
 親しい眼差しで迎えない限り、
 異邦人よ、
 無断でそこを横切れば
 銃はなくとも唾を吐きかけることはできるのだ (オ-デン)

 金を失うことは小さく失うことである。名誉を失うことは大きく失うことである。しかし勇気を失うことは全てを失うことである。(チャ-チル)

 那覇の市場というものは全部女性だけで店を保っている。小さな店で、同じものを売っている店がたくさん並んでいる。例えば客の好みの反物がなかった場合、隣りの店にその柄があるとすると、その店に行って買って下さい、とは言わない。その店の人がこれを売りなさいと品物を貸す。つまり競争原理が働かずに、共同原理が働く。(大城立裕)

  All work and no play makes Jack a dull boy. (『シャイニング』より)

 だれひとり、なに一つたよりになるものはなかった。妻だけが味方であった。こうして もう五十年あまりもいっしょに海の上でくらしてきた。
 東風がつよくなって波が大きくふくれあがった。波のはなが船の中へうちこんでくる。 老爺は立って年老いた妻にかわって櫓をにぎった。老媼は船の中にうずくまって梁につかまりながら、
  「大丈夫だろうか」とたずねた。
  「大丈夫だ」
  老爺はそういって櫓をおした。この老媼は今日までその信頼しきった目で、何度も今日のように「大丈夫だろうか」ときいたにちがいない。そしてそれはいつもこの人々のまわりにはげしい嵐がふきまくっていたときであろう。そのときこの漁夫は嵐と必死になってたたかいながら、「大丈夫だ」といったことだろう。(宮本常一)

 国際化とは、異質な人々と接することによって自分が変わってゆくきっかけをつかむことでもある。自分を変えようという意志がないところには真の国際化はない。(阿部謹也)

 東洋ではともかく、西洋での身の詰まりかたは、さすがに個人主義国だけに凄まじいものがあった。破産者は遠慮なく自殺した。敗者が生き残れる公算がないからである。(金子光晴)

 もう一回言っておけばよかったと後悔しないように、何千回も言われ尽くしたようなことでももう一度言わねばならない。(ベルトルト・ブレヒト)

 Safety,Fun,and Rearning. (アメリカのあるスキー・コーチ)

 一般大衆は声をたてがらない。だからいつも見すごされ、見おとされる。しかし見おとしてはいけないのである。記録をもっていないから、また事件がないからといって、平穏無事だったのではない。孜々営々として働き、その爪跡は文字にのこさなくても、集落に、耕地に、港に、樹木に、道に、そのほかあらゆるものにきざみつけられている。
 人手の加わらない自然は、それがどれほど雄大であってもさびしいものである。しかし人手の加わった自然には、どこかあたたかさがありなつかしさがある。わたしは自然に加えた人間の愛情の中から、庶民の歴史をかぎわけたいと思っている。(宮本常一)

 先をいそぐことはない、あとからゆっくりついていけ、それでも人の見のこしたことは多く、やらねばならぬ仕事が一番多い。(宮本善十郎)
by sabasaba13 | 2009-08-23 07:37 | 言葉の花綵 | Comments(0)
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