「THIS IS IT」

c0051620_18251280.jpg 山ノ神と「THIS IS IT」を見てきました。先日他界したマイケル・ジャクソンによる幻となったロンドン公演のリハーサル光景を編集した作品ですね。特段、彼のファンというわけではないのですが、あの切れの鋭いダンスには心惹かれます。50歳以上の夫婦割引により1000円で見られるのなら、ま、いいかなと思い足を運んだ次第です。まず何といっても、その外連みに満ち満ち、しかも高いレベルの芸をともなった演出には、批評する以前に驚いてしまいます。大掛かりな仕掛け、一糸乱れぬバック・ダンサーたち、凝りに凝ったミュージック・クリップ、「お客さんを満足させてなんぼや!」という彼の恐るべき芸人根性を垣間見た思いです。ネバーランドに行けるかどうかは別として、これならば公演を見ている間、しばし浮世の憂さを完全に忘れてしまうでしょう。そして企図するものをスタッフに伝え実現させていくMJの手腕も、大変興味深いものでした。優しくクールに、時には微かな苛立ちをまじえながら、巨大なエンターテイメント・マシーンを機動させていく手際はお見事の一言です。彼の一挙一動にスタッフが敏感に反応していく様子がよくわかります。印象的だったのは、走りがちなキーボード奏者に対して、「ベッドからはい出るように」と指示した場面です。これはうまい! 遅めのテンポ、気だるさ、しかし動き出そうとする意思、そうした微妙なニュアンスを見事に表現しています。彼の音楽に対する真摯な姿勢を感じさせてくれた一こまでした。ある指揮者がオーケストラに対して、「ご婦人と握手するとき産毛に触れた瞬間のような音」を要求したという話をどこかで聞いたことがありますが、一流の音楽家は、音のニュアンスを言葉で表わすことが上手いですね。
 しかし、歌と踊りに関しては、しょうしょう期待はずれ。私の大好きな「I'll be there」が流れはじめた時は、一瞬胸がキュンと締め付けられましたが、その張りがなくフレーズを十分に歌いきれていない声で現実に引き戻されてしまいました。リハーサルだから力を温存したということを割り引いても、衰えは隠せないような気がします。また相変わらず切れ味鋭い踊りなのですが、以前から全く進化していないように思えます。ずーっと見ているうちにしょうしょう飽きてきたのも否めません。素人考えですが、体の動きがいつも同じようなテンポで動くからでしょうか。パブロ・カザルス曰く「音楽の最大の敵は単調さである」、スローなダンスにも挑戦してくれたらなあ、と思いました。歌と踊りにおいてもう進化できないことを彼自身痛感していて、それを覆い隠すために大掛かりな仕掛けを施し、「地球環境」「愛」といった俗受けしやすいコンセプトを持ち出したのかもしれません。
 いやいやこんな固い話をしても野暮というものでしょう。世界最高のグラン・ギニョールの舞台裏を堪能できただけでも、十二分に満足できた二時間でした。それにしても、なぜ彼は整形手術をしたのでしょうか、重い疑問として心に残ります。ジャクソン5の時の彼は、あんなに輝いていたのに。
by sabasaba13 | 2009-11-15 06:52 | 映画 | Comments(4)
Commented by おせっかい at 2009-11-15 07:15 x
彼の肌が白くなったのは尋常性白斑という病気の影響です。
沢山の証拠品 本人が告白したにも関わらず、マスコミはゴシップとして垂れ流すだけでした。
あと、もう一つ、体中に炎症がおきる難病も抱えていました。
彼が24歳の時に発病。

鼻の整形は二回したと本人も認めています。
ただし、一回は舞台での事故処置のため。

この事実は、今となって、日本で広まりつつありますが、
私はお一人でも多くの方が、この事実を覚えてくださったら、嬉しいです。

いきなりのコメント失礼しました。
Commented by sabasaba13 at 2009-11-15 18:42
 こんばんは、“おせっかい”さん。詳細な情報をどうもありがとうございました。しかと記憶に留めます。ただやはりそれだけではないような一抹の思いもあります。機会があったら自分なりに調べ考えてみたいと思います。
Commented by mihira-ryosei at 2009-11-16 00:01
久しぶりです。僕も夫婦割引で、この映画観てきたので、微笑みつつ、あいかわらずsabasabaさんらしい批評眼に感心させられました。僕はといえばただただ、感嘆感動していただけです。同い年のMichael・Jacksonですが、いままで一度としてまじめに聞いたことがなかった。We
are the world 以外は。でもいい映画でした。機会があれば、Rolling stonesの映画、Shine a light もお勧めです。老骨に鞭打つ姿に感動です。
Commented by sabasaba13 at 2009-11-16 21:05
 こんばんは、mihara-ryoseiさん。ほんとうにこの割引制度のおかげで、三下り半を叩きつける(られる)危機を何度も回避できました。無理矢理しょーもない映画への同伴を強要されるという欠点はあるものの、おおむね感謝しています。
 Rollng stones、いいですね。「でかい音をガンガンだしゃいいんじゃよ」と入れ歯をフガフガさせながらいつまでも騒ぎまくってほしいものですね。「Shine a light」、ぜひ見てみたいです。
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