それでは気を取り直して赤塚不二夫会館へと入りますか。キャラクターの像、原画、原著、氏の写真や来歴などが展示してありますが、正直に言って氏の熱烈なファンとは言えないので、ざっと見ただけでした。ただ、氏の漫画に登場するキャラクターの中で一番好き、というよりは興味深い、残像が残るくらい足をばたつかせながら拳銃を乱射する目玉のつながったおまわりさんの像があったのは嬉しい限りです。服わぬ者、気に食わない者、楯突く者を容赦なく威嚇・恫喝する警察権力のカリカチュアとして秀逸な人物だと思います。最近、この手のおまわりさんが増えたような気がしませんか。
そして伝説のアパート、トキワ荘の一室を再現した展示もあり。四畳半、破れた障子窓、本と板でつくった机、裸電球、卓袱台、今にして思えば何と貧しい暮らしであることか。私もこんな部屋で生活したことがありますが、当時はみんな同じような状況だったので、別に苦にも気にもなりませんでした。衣食住がそこそこ充足され、ある程度みんなが平等であること、人類・生物・地球を破滅させつつある諸問題を解決する糸口はこのへんにありそうな気がします。衣食住の欠落と、おぞましいまでの不平等といった事態が蔓延する今を思いつつ、時間が止まってしまったような部屋の卓袱台の長い影をしばらく見つめてしまいました。
そのすぐ近くにあるのが昭和レトロ商品博物館、ま、古い懐かしい商品をごたごたと並べてあるだけでとりたてて付言すべき言葉はありません。
さて出るか、とふと階段を見ると「雪女の部屋」。ゆきおんなのへや? なんだそりゃ。さっそく靴を脱いで二階の和室に行くと、雪女に関するさまざまな資料・新聞記事が展示されていました。それらによると、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)作の「怪談」に収められている短編「雪女」の舞台が青梅であったということでした。英文の序文に「雪女というこの奇妙な物語は、武蔵の国、西多摩郡、調布の百姓が自分の生まれた村の伝説として物語ってくれたものである…」とあり、また八雲の長男がつづった文献などから、調布村出身の父娘が八雲宅で使用人として働いており、この二人から雪女の伝説を聞いていたこともわかったそうです。へえー、
松江、
ダブリンと八雲と関わりの深い地を経巡ってきただけに、異な縁を感じました。
なおこの博物館で掲示されていた「周辺マップ おうめまるごと博物館」というイラスト入りの地図は、ディープな物件満載の優れ物、デジタル・カメラで撮影し以後の行程で活用させていただきました。ぜひ観光案内所に置いといてほしいな。この大通りはその名の通り、名作映画の手描き看板が街角のそこかしこに飾られています。「荒野の決闘」「ヘッドライト」「用心棒」「自転車泥棒」「ローマの休日」などなど、見かけるたびにその一シーンが瞼の裏に浮かんできて嬉しくなってきます。
本日の三枚です。