「余白の美 酒井田柿右衛門」

 「余白の美 酒井田柿右衛門」(十四代酒井田柿右衛門 集英社新書0267F)読了。いつ頃からか突然やきものが好きになりました。以前は見向きもしなかったのに… 火という自然の力と人為とがあいまってつくりだす色や造形が、心ときめかせてくれます。旅行に行く時も、近くに窯元があると立ち寄るようにしています。信楽、唐津、萩、伊賀、瀬戸、有田、備前、九谷、やちむんの里… お土産に安い湯飲みを買い集めては、悦に入っています。やはり見るだけではなく、さわって、口縁に口をつけて茶を飲みたい。愛用していた絵唐津の湯飲みを落として割ってしまった時は、本当に悲しかったです。今は萩焼を使っていますが、君の代わりにはなれないなどと呟いています。
 さて十四代柿右衛門が語る、半生記、芸談、窯元の暮らしなどなど、興味深いですね。やきものをつくるということは、オーケストラで交響曲を演奏するようなものだという喩えに得心しました。柿右衛門という存在は、職人たちを協同させる指揮者なのですね。「ロスは多いですよ。しかしロスからしか学べないことがある」「むかしのものは下手ではないけれど、おおらかです。楽しそうに仕事をしていたんじゃないかって想像仕事がします」「腕はあるけれど美意識がない、それが職人の最大の悩みかも分かりませんね」「いろんな人、技術をひとつに集約していく仕事が日本の工藝作家の仕事であったのかなと思います」といった奥行きのある言葉が泉のように溢れています。一番心に残ったのは「このままだと本当に職人がいなくなってしまいますし、そういう職人の技術、腕を活かすシステムも消えてしまうんじゃないでしょうか。いちど消えてしまいますとそういうものはなかなか復活はしません。これはものではなくて関係、目には見えにくい人間と人間の関係なんですから」という言葉です。人間と人間の関係を分断することによって、市場社会は繁栄してきたという気がします。これについては本気で考えていきたいですね。
 注文を一つ。インタビュー形式なので(笑)という註がよくついているのですが、いろいろな笑いがあるのですから、努力してオノマトペとして表現して欲しっかたな。ウフフ、アハッ、ゲヒヒ、カーッカッカッカッとかね。笑い方で、人となりがけっこうわかります。(フヒョッ)
by sabasaba13 | 2005-03-29 20:02 | | Comments(0)
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